【完結】幼馴染みが勇者になり何故か俺は勇者の番になりました

赤牙

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10話:幼馴染みと聖女様

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馬車に揺られる事数時間…
陽も傾きだし今日の野営の場所を決め準備をしていく。


簡易テントを張り火を起こし夕食の準備をしていった。

俺とテオは騎士団で野営の経験があり手際良く作業していく。アレンさんも慣れた様子で寝床の準備をガルパス様は夕食の準備を行ってくれている。

ベヌエット様は少し離れた場所でアレンに用意された椅子にちょこんと座り俺達の様子を眺めている。


チラリとベヌエット様の方へ目線を向けると、どこか寂しそうな顔をしている…


ベヌエット様は侯爵家の娘で治癒魔法を得意としており、いつしか『聖女』と呼ばれるようになったと聞く。俺よりも2歳年下のベヌエット様は見た目よりも幼く見える。

元々貴族の生活に慣れているベヌエット様がいきなりこんな生活など耐えれるのかな…


敵対心を持たれているが俺はベヌエット様の事を気にかけてしまう。

今の季節は春になったが陽が落ちれば寒さが襲う。ベヌエット様の服は白色の修道服を着ているが生地は薄く少し震えているようにも見える。

「あの…ベヌエット様。寒くなってきたので膝掛けをどうぞ」

俺は勇気を出してベヌエット様へ声をかけると少し驚かれたがやはりキッと睨まれ膝掛けを奪われる。

「ふん!…あ、ありがとう!」

言葉にトゲはあるが感謝の言葉を言われて少し驚く。多分ベヌエット様は根は優しい人なのかもしれない。


「もう少ししたら火を起こすので、それまで寒いですが我慢して下さいね」

「仕方ないわね…早くしなさいよね…」


寒さで頬が赤らんでいたベヌエット様はもらった膝掛けにくるまると少しホッとした表情を見せる。

っっ可愛い!
村にいた少し生意気なちびっ子達を思い出すなぁ…

それから俺はベヌエット様に頻繁に声をかけ進んで世話をするようになった。
最初は睨んできていたベヌエット様も2日も一緒にいると少しずつ普通の対応をしてくれるようになった。

「ベヌエット様。温かい紅茶です」

「ありがとう…シモン…」


名前呼んでくれた…あぁ可愛い…


ベヌエット様との関係も改善しウキウキしているとアレンさんから声をかけられる。

「シモン凄いな。お嬢様に懐かれてるじゃん」

アレンさんは元々ベヌエット様の家で護衛を担当していて今回の討伐が決まった時にベヌエット様の世話役兼護衛として選ばれたようだが世話役としてはあまり機能していない…

「これから旅をしていくなら早めに仲良くなった方がいいでしょう?それにベヌエット様はこんな旅には慣れてないでしょうから俺達が気を配ってやらないと」

「おぉ~。シモンがいなかったらお嬢様すぐに旅なんて辞めるって言ってただろうな~」

アレンさんは「シモンがいて助かるよ」と呑気な事を言って去っていく。俺は次の休憩時間にベヌエット様に出すお茶を選んでいると後ろから誰かに抱きしめられた。


「ちょっとシモン…」

急に抱きしめられ驚いて後ろを振り向くと膨れっ面のテオがいた。

「お前…旅に出たら無闇に抱きつくなって言っただろ!」

「僕の所には全然来ないでベヌエット様ばかり気にかけて…シモン酷いよ…」


テオは後ろからぎゅうっと抱きしめ首筋に顔を埋めてくる。
こうなった時のテオは怒鳴っても離れない。
俺は首筋にある頭をテオが満足するまで撫でてやる。

「ベヌエット様は初めての旅で苦労してるんだから仕方ないだろ?俺達の方が年上なんだか我慢しろよな」

「そうだけど寂しいよ…じゃあベヌエット様が旅に慣れるまでシモンの事我慢するからご褒美くれる?」


なんで俺がお前にご褒美やるんだよ…と思いながらも「何がいいんだ?」とテオを甘やかしてしまう俺…

「考えとく!ご褒美忘れないでね!」

「分かった分かった…」


テオはいつまで経っても子供のままだな…

と、テオを子供扱いして安易に『ご褒美』の約束をしてしまったことを俺は後に後悔するのであった。
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