上 下
1 / 56

1話:幼馴染みと騎士団へ

しおりを挟む
「おい!お前らまたテオをいじめただろう」
「げっ。シモン!ほらもう行くぞ」

いじめっ子達が逃げていくと地べたに座り込み泣いている幼なじみのテオの姿が見える。
体の小さなテオは可愛らしい見た目と、すぐに泣くので「女みたいだ」と、いじめられることが多かった。

「ぐすっ……。シモンくん……助けてくれてありがとう」

綺麗な金髪に碧眼の瞳、肌の色も透き通るような白さ。傍から見れば女の子と間違えてしまっても仕方ない位にテオは可愛い。
俺はそんな幼馴染みを物心ついた頃からずっと面倒みていた。

「またあいつらが来たら俺のところに来いよ。守ってやるから」

座り込んでいるテオへと手を差し伸ばせば、涙を拭い俺の手を取る。

「うん。ありがとうシモンくん。僕……シモンくんから絶対に離れない」

涙で赤く潤んだ瞳で微笑まれれば男だと分かっていても胸がドキっとした。
それから俺とテオは、いじめてくる奴らに負けないようにと、2人で体を鍛えたり特訓しながら友情を深めていった。







それから10年後。
俺達は無事に16才になり成人の義も終え大人の仲間入りをする。

小さな頃から伝説の勇者に憧れ、いつか自分も勇者のように強くなりたい。
強くなって大切な人を護りたいと思っていた俺は、成人したら王都で騎士団に入る事を決意していた。


一週間後に王都行きの馬車に乗り俺は育った村から離れる予定だ。
騎士団に入れれば自分の夢へと近づく……。
俺は王都行きを今か今かと心待ちにしていた。


「ねぇシモン! 王都に行くって本当? この村から離れちゃうの? 僕の事……守ってくれるんじゃないの!?」

どこからか俺の王都行きの情報を聞きつけた幼なじみが泣きそうな顔をして駆け寄ってくる。

「あぁそうだよ。お前も……もう俺から守られるって感じでもないしな」

小さな頃は可憐で可愛かったテオは、すくすくと育ち……いや育ちすぎて今では立派な金髪イケメンへと成長した。

俺はというと、身長はあまり伸びず癖の強い赤髪と童顔というコンプレックスを抱えたまま16歳を迎えた。
テオに身長を追い越されてからは見下ろされるのがいつも悔しくて悔しくて……今も精一杯背を伸ばしテオを見上げている。

「……じゃあ僕も騎士団に入る」
「はぁ?」
「騎士団は試験さえ受かればいいんでしょ! 僕も行く!」
「お前なぁ……」
「シモンが行くなら僕も絶対騎士団に入る!」

テオはこう言い出したら絶対に諦めない。
俺はため息をつきながら「好きにしろ」と、言うとテオは顔をパァァァっと明るくし笑顔で俺に抱きついてきた。



それから一週間後。
俺達は王都へ向かい騎士団の入団試験を受けるのだが、めでたい事に2人とも無事に合格した。

だが、晴れて騎士団見習いになった俺達に待っていたのは過酷な訓練だった。くる日もくる日も力尽きるまで剣をふるい身体も精神面も鍛えていった。

同期の奴らは俺よりも強い奴ばかりだったが負けてはいられない。体格の小さな俺は力よりも技術やスピードを磨いていった。
しかし、魔法の使い方が下手な俺はそこでつまづいてしまう。

一方でテオは恵まれた体格に力も強く魔法のセンスもあり同期の中では一番強かった。
すでに色々な部隊から声がかかってきているらしい……。


俺はいつしかテオの隣にいる事に劣等感を感じるようになっていた。

しおりを挟む
感想 30

あなたにおすすめの小説

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

すべてを奪われた英雄は、

さいはて旅行社
BL
アスア王国の英雄ザット・ノーレンは仲間たちにすべてを奪われた。 隣国の神聖国グルシアの魔物大量発生でダンジョンに潜りラスボスの魔物も討伐できたが、そこで仲間に裏切られ黒い短剣で刺されてしまう。 それでも生き延びてダンジョンから生還したザット・ノーレンは神聖国グルシアで、王子と呼ばれる少年とその世話役のヴィンセントに出会う。 すべてを奪われた英雄が、自分や仲間だった者、これから出会う人々に向き合っていく物語。

学園と夜の街での鬼ごっこ――標的は白の皇帝――

天海みつき
BL
 族の総長と副総長の恋の話。  アルビノの主人公――聖月はかつて黒いキャップを被って目元を隠しつつ、夜の街を駆け喧嘩に明け暮れ、いつしか"皇帝"と呼ばれるように。しかし、ある日突然、姿を晦ました。  その後、街では聖月は死んだという噂が蔓延していた。しかし、彼の族――Nukesは実際に遺体を見ていないと、その捜索を止めていなかった。 「どうしようかなぁ。……そぉだ。俺を見つけて御覧。そしたら捕まってあげる。これはゲームだよ。俺と君たちとの、ね」  学園と夜の街を巻き込んだ、追いかけっこが始まった。  族、学園、などと言っていますが全く知識がないため完全に想像です。何でも許せる方のみご覧下さい。  何とか完結までこぎつけました……!番外編を投稿完了しました。楽しんでいただけたら幸いです。

ハイスペックストーカーに追われています

たかつきよしき
BL
祐樹は美少女顔負けの美貌で、朝の通勤ラッシュアワーを、女性専用車両に乗ることで回避していた。しかし、そんなことをしたバチなのか、ハイスペック男子の昌磨に一目惚れされて求愛をうける。男に告白されるなんて、冗談じゃねぇ!!と思ったが、この昌磨という男なかなかのハイスペック。利用できる!と、判断して、近づいたのが失敗の始まり。とある切っ掛けで、男だとバラしても昌磨の愛は諦めることを知らず、ハイスペックぶりをフルに活用して迫ってくる!! と言うタイトル通りの内容。前半は笑ってもらえたらなぁと言う気持ちで、後半はシリアスにBLらしく萌えると感じて頂けるように書きました。 完結しました。

平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。

しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。 基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。 一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。 それでも宜しければどうぞ。

小悪魔系世界征服計画 ~ちょっと美少年に生まれただけだと思っていたら、異世界の救世主でした~

朱童章絵
BL
「僕はリスでもウサギでもないし、ましてやプリンセスなんかじゃ絶対にない!」 普通よりちょっと可愛くて、人に好かれやすいという以外、まったく普通の男子高校生・瑠佳(ルカ)には、秘密がある。小さな頃からずっと、別な世界で日々を送り、成長していく夢を見続けているのだ。 史上最強の呼び声も高い、大魔法使いである祖母・ベリンダ。 その弟子であり、物腰柔らか、ルカのトラウマを刺激しまくる、超絶美形・ユージーン。 外見も内面も、強くて男らしくて頼りになる、寡黙で優しい、薬屋の跡取り・ジェイク。 いつも笑顔で温厚だけど、ルカ以外にまったく価値を見出さない、ヤンデレ系神父・ネイト。 領主の息子なのに気さくで誠実、親友のイケメン貴公子・フィンレー。 彼らの過剰なスキンシップに狼狽えながらも、ルカは日々を楽しく過ごしていたが、ある時を境に、現実世界での急激な体力の衰えを感じ始める。夢から覚めるたびに強まる倦怠感に加えて、祖母や仲間達の言動にも不可解な点が。更には魔王の復活も重なって、瑠佳は次第に世界全体に疑問を感じるようになっていく。 やがて現実の自分の不調の原因が夢にあるのではないかと考えた瑠佳は、「夢の世界」そのものを否定するようになるが――。 無自覚小悪魔ちゃん、総受系愛され主人公による、保護者同伴RPG(?)。 (この作品は、小説家になろう、カクヨムにも掲載しています)

俺の体に無数の噛み跡。何度も言うが俺はαだからな?!いくら噛んでも、番にはなれないんだぜ?!

BL
背も小さくて、オメガのようにフェロモンを振りまいてしまうアルファの睟。そんな特異体質のせいで、馬鹿なアルファに体を噛まれまくるある日、クラス委員の落合が………!!

悩める文官のひとりごと

きりか
BL
幼い頃から憧れていた騎士団に入りたくても、小柄でひ弱なリュカ・アルマンは、学校を卒業と同時に、文官として騎士団に入団する。方向音痴なリュカは、マルーン副団長の部屋と間違え、イザーク団長の部屋に入り込む。 そこでは、惚れ薬を口にした団長がいて…。 エチシーンが書けなくて、朝チュンとなりました。 ムーンライト様にも掲載しております。 

処理中です...