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繋がれた未来~不安定な魂~
繋がっていく点と点
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「それで?話とはなんだ?お前のことだから重要な案件なんだろう?手短に話してくれ。」
その言葉にクレインは軽く頷く。
「領主が隠していたようなんですが、数ヶ月前にバルセでも穢れた魔石が発見されたそうです。その魔石はバルセではまず見ることがない『毒猫』のもののようで、なぜか凶暴化していたらしくかなりの冒険者が犠牲になったとか。生き残った少年の証言を元に討伐隊を組み討伐に成功したのはいいものの穢れた魔石が出てきた、ということらしいです。」
一般的に毒猫は大人しい魔物として知られていて、知能も相当高いため人間には手を出さないことで有名な魔物である。強さはBランクを上回るため人間も手を出すことはなく、お互い干渉せずに生きていた。
「なるほどな…陛下はなんと言われていた?」
「バルセの領主にはこのようなことが二度ととないよう釘をさしておられました。また、霞の森についてはこれ以上封鎖を続けたら経済的利益の大幅な損失だろうからそろそろ解除しても構わない、と。それから生徒教師問わず例の件に関わっているかもしれない人物をリストアップしておいたから見てほしい、とおっしゃっていました。」
そう言ってクレインは1枚の紙を差し出した。
「…なるほどな。近日中に学院へ行くと陛下に言っておいてくれ。学院長にはこちらから手紙を書いておく。」
「分かりました。それでは私はこれで失礼します。」
そう言ってクレインが出ていった後、公爵は窓から訓練場の方を見てため息をついた。
「…思っていたよりも時間がかかるかもしれないな…」
そう言いながら訓練場で遊んでいるカイを見つめる。
「にしても、どうも似てるんだよな…。遅刻をしても宿題をやっていなくてもなぜだか堂々として一切悪いと思っていない所とかな…」
そんな独り言は誰にも届くことなく消えていった。
♢
「行っちゃったな…どないする?」
「適当に遊んでおけばいいんじゃないの?そういえばユウリって剣術できたんだね。」
まさか剣術の稽古に参加するとは微塵も思っていなかった。
「できないわけではないですが皆さんよりも下手ですよ。僕は弓に適性があったみたいなのでそっちを特に伸ばしているんです。まあ最低限剣術や体術は習っておかないとダメだと言われたので訓練には参加してるんですけどね。」
「弓?!見せてよ!」
「そういやカイは弓、というか矢が好きやったな…」
「なんだそれ」
「昔使わんくせにカッコいいからって買おうとしててん。」
なんでそんな前のこと覚えてるんだろ…
「僕も一度お祖父様に弓を教えてもらったんだけど才能ないって言われたからやめたんだ。ねっ、ユウリ、いいでしょ?見せてよ!」
「いいですよ。」
その言葉に軽くガッツポーズをして弓を取りに行く。
「そこからあの的を狙ってよ」
「分かりました。」
ユウリが矢を放つと同時にヒュンという風を切る音がなった。
「真ん中だ!すごい!!僕は的にすら当たらなかったのに...」
「だろ?俺の弟はすごいんだぜ!まだ習って半年も経っていないのにここまでできるだ。」
「そうだね。祝福の時が楽しみだよ。あっ、そうだ、皆で鬼ごっこしない?」
「鬼ごっこ?急やな…それするんやったらイリアスとユウリが不利になるんちゃう?」
「もちろん分かってるよ。だからイリアスとユウリには妨害役をしてもらいたいんだ。」
「妨害役?」
「うん。ユウリが弓で僕達を無作為に狙って、落ちた矢をイリアスがウィンに回収させれば立派な害悪になると思う。僕らの訓練にもなるでしょ?それに、どうせお祖父様は帰ってこないよ。」
「なんでそんなことが分かるんだ?」
「ほら、あそこ見て。お祖父様の執務室の窓が開いてるでしょ?お祖父様があそこの窓を開ける時は時間のかかる書類仕事をするときだけなんだ。」
「よく知ってるな。」
「まあ学院に行くまでの1ヶ月はお祖父様=敵?だと思っていたからよく見張ってたんだよね。…それはいいとして、17時以降は騎士団の人がこの訓練場を使うから僕らは使えない。お祖父様はあの執務室に入ったら最低でも3時間は出てこないから今日の剣術の稽古は必然的になくなる。つまりこの訓練場で何しても怒られない!!」
「つまりがちょっとおかしいけど…まあええわ。ユウリもイリアスもやる?」
「俺は別に構わない。」
「僕も構いませんけどこの矢は木で作られていて殺傷能力が皆無な割には当たると痛いですよ。」
「…うん?ユウリ、当たったことあるの?」
「まあ…はい。兄さんが誤射ったのが一度。」
は?今なんて…
「…エレン?僕のかわいいユウリになんてことを…」
ユウリは僕にとって初めての年下の仲間で弟みたいに思っていたのに!実の兄がなんてことをしてくれんだ!
「いや、カイのちゃうから!ほっ、ほら早よやろ!!」
コウに背中を押されてこの話は終ったが、僕が横目でエレンを恨めしげに見たのは言うまでもない。
その言葉にクレインは軽く頷く。
「領主が隠していたようなんですが、数ヶ月前にバルセでも穢れた魔石が発見されたそうです。その魔石はバルセではまず見ることがない『毒猫』のもののようで、なぜか凶暴化していたらしくかなりの冒険者が犠牲になったとか。生き残った少年の証言を元に討伐隊を組み討伐に成功したのはいいものの穢れた魔石が出てきた、ということらしいです。」
一般的に毒猫は大人しい魔物として知られていて、知能も相当高いため人間には手を出さないことで有名な魔物である。強さはBランクを上回るため人間も手を出すことはなく、お互い干渉せずに生きていた。
「なるほどな…陛下はなんと言われていた?」
「バルセの領主にはこのようなことが二度ととないよう釘をさしておられました。また、霞の森についてはこれ以上封鎖を続けたら経済的利益の大幅な損失だろうからそろそろ解除しても構わない、と。それから生徒教師問わず例の件に関わっているかもしれない人物をリストアップしておいたから見てほしい、とおっしゃっていました。」
そう言ってクレインは1枚の紙を差し出した。
「…なるほどな。近日中に学院へ行くと陛下に言っておいてくれ。学院長にはこちらから手紙を書いておく。」
「分かりました。それでは私はこれで失礼します。」
そう言ってクレインが出ていった後、公爵は窓から訓練場の方を見てため息をついた。
「…思っていたよりも時間がかかるかもしれないな…」
そう言いながら訓練場で遊んでいるカイを見つめる。
「にしても、どうも似てるんだよな…。遅刻をしても宿題をやっていなくてもなぜだか堂々として一切悪いと思っていない所とかな…」
そんな独り言は誰にも届くことなく消えていった。
♢
「行っちゃったな…どないする?」
「適当に遊んでおけばいいんじゃないの?そういえばユウリって剣術できたんだね。」
まさか剣術の稽古に参加するとは微塵も思っていなかった。
「できないわけではないですが皆さんよりも下手ですよ。僕は弓に適性があったみたいなのでそっちを特に伸ばしているんです。まあ最低限剣術や体術は習っておかないとダメだと言われたので訓練には参加してるんですけどね。」
「弓?!見せてよ!」
「そういやカイは弓、というか矢が好きやったな…」
「なんだそれ」
「昔使わんくせにカッコいいからって買おうとしててん。」
なんでそんな前のこと覚えてるんだろ…
「僕も一度お祖父様に弓を教えてもらったんだけど才能ないって言われたからやめたんだ。ねっ、ユウリ、いいでしょ?見せてよ!」
「いいですよ。」
その言葉に軽くガッツポーズをして弓を取りに行く。
「そこからあの的を狙ってよ」
「分かりました。」
ユウリが矢を放つと同時にヒュンという風を切る音がなった。
「真ん中だ!すごい!!僕は的にすら当たらなかったのに...」
「だろ?俺の弟はすごいんだぜ!まだ習って半年も経っていないのにここまでできるだ。」
「そうだね。祝福の時が楽しみだよ。あっ、そうだ、皆で鬼ごっこしない?」
「鬼ごっこ?急やな…それするんやったらイリアスとユウリが不利になるんちゃう?」
「もちろん分かってるよ。だからイリアスとユウリには妨害役をしてもらいたいんだ。」
「妨害役?」
「うん。ユウリが弓で僕達を無作為に狙って、落ちた矢をイリアスがウィンに回収させれば立派な害悪になると思う。僕らの訓練にもなるでしょ?それに、どうせお祖父様は帰ってこないよ。」
「なんでそんなことが分かるんだ?」
「ほら、あそこ見て。お祖父様の執務室の窓が開いてるでしょ?お祖父様があそこの窓を開ける時は時間のかかる書類仕事をするときだけなんだ。」
「よく知ってるな。」
「まあ学院に行くまでの1ヶ月はお祖父様=敵?だと思っていたからよく見張ってたんだよね。…それはいいとして、17時以降は騎士団の人がこの訓練場を使うから僕らは使えない。お祖父様はあの執務室に入ったら最低でも3時間は出てこないから今日の剣術の稽古は必然的になくなる。つまりこの訓練場で何しても怒られない!!」
「つまりがちょっとおかしいけど…まあええわ。ユウリもイリアスもやる?」
「俺は別に構わない。」
「僕も構いませんけどこの矢は木で作られていて殺傷能力が皆無な割には当たると痛いですよ。」
「…うん?ユウリ、当たったことあるの?」
「まあ…はい。兄さんが誤射ったのが一度。」
は?今なんて…
「…エレン?僕のかわいいユウリになんてことを…」
ユウリは僕にとって初めての年下の仲間で弟みたいに思っていたのに!実の兄がなんてことをしてくれんだ!
「いや、カイのちゃうから!ほっ、ほら早よやろ!!」
コウに背中を押されてこの話は終ったが、僕が横目でエレンを恨めしげに見たのは言うまでもない。
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