異世界で幸せに~運命?そんなものはありません~

存在証明

文字の大きさ
上 下
137 / 184
繋がれた未来~不安定な魂~

夢幻世界~不審な男~

しおりを挟む
「なに、、これ…でっかい鉄?が動いてる…馬もおらんのに…」

コウは目の前を走る車に唖然とする。じーっと見ていると運転者が睨み付けてきたのでコウはフイッと眼を逸らした。

「いや、、ええわ…考えんのやめよ...」

当てもなく見たこともないビルの群集が建ち並ぶ道を急ぎ歩きで進んでいく。深夜のためもともと人が少なかったこともあってか、コウが裸足であることに誰も気にすることなく通りすぎていった。

「無関心な町やな…」

そう呟くも誰からの反応もない。

「さっきから視界が変やな…人の顔がぼやけて見える。」

コウが他の人を真似てスクランブル交差点を渡っていた時に、他の人よりもはっきりと見える男とすれ違った。
帽子を目深く被っていたが確かにカイと同じ顔だった。

「っ!!」

咄嗟に反転し見失うまいと後を追いかける。

それに気づいたのかカイは早歩きで歩道まで行き、急に走り出した。

「ちよっ…!!どこいくねーん!」

それをコウは走って追いかける。本気で走っていないのか撒かれることはなかった。数分そんな鬼ごっこを続けているとカイはさっと人がひとりもいなさそうな路地裏に入った。

「はぁっ、はぁ...なんなんこれ…さすが、、こっちで体力バカなんやな」

そう言いながらコウもカイの後に続く。

何度か曲がった所でコウは眼を見開き足を止めた。

カイが壁に腕を組ながらもたれていたのだ。まるで初めからここに誘導していたかのように余裕をもって。

「…君がコウだな?」

そう言ってカイは帽子を取った。カイの顔は10代のものではなくもう少し大人びていた。そして瞳の色が血のように真っ赤だった。

「…そうやけど…アンタ、誰や?」


「俺はライ。詳細を話すと混乱するだろうから言わないが目的は同じだ。といっても最悪な結末を迎えることはもうないがな。」


「なんでそう言いきれんねん」


「俺がいるからだ。お前が失敗しても俺がカバーするから問題ない。だが、俺にも制約がある。俺はカイには接触できないし言葉を交わすこともできない。ヒントをやる。結末を変えるだけじゃダメなんだ。世界を壊さなければならない。そうするためにはカイを言葉によって揺さぶる必要がある。」


「そんなこと言ってもカイがどこにおるかもわからへんねやで?」


「犬を見つけろ。そしたら自ずとわかってくる。んじゃ後は頑張れ~」

そう言ってライが手を振る。

「…アンタは俺の味方なん?」


「…愚問だな。俺はお前に借りがあるカイに借りがある。つまりだ、お前は俺の恩人だということだ。」


「複雑すぎひん?よくわからへんねんけど。」


「ふっ…それでいい、お前はそのままがいい。」

そう言ってライは意味深に笑った。

「あと、視界がおかしいねん。何でかわかる?」


「ここはカイが創った世界だ。アイツの興味のないものなんかは全部、視力0.1の人と同じぐらいにしか見えない。」


「そうなんや…なあライ、この街おかしないか?みんな無関心過ぎる。」


「おかしいさ。だが、そのおかしさがこの街にとってのなんだ。自分がよければそれでいい、そう思っている人間ばかりなんだよ。まあ人間とは本質的にはそういった生き物だとは思うけどな。カイも俺もそんな街、いや、そんな世界で生まれたんだ。この世界の住人は他人の苦しみなんて知ったこっちゃないし、そもそも自己中心的に生きないと生き残れないんだ。おかしいよな?…そろそろ時間切れだ。それじゃ本当にさようならだ。」


「…もう行くん?」


「万物神レイに気づかれないようにしなくちゃいけないからな。ああ...あとこれはプレゼントだ。」

そうライが告げた瞬間ライの姿は霧のように消えていき、コウの足には靴がはかされていた。

「…犬を探すんか…取りあえずカイの興味のある場所に行けば見つかるんかな?」

コウはそう独り言を行ってよく見える方へと歩いていった。



「クゥン…」

「…なあ君はルーンなん?…はぁぁ…どこにおんねん…」

そうコウがため息をついた時1匹の犬が近寄ってきた。真っ黒なその毛並みはコウにを思い出させた。

「ルーン…?」

「わふっ!!」

「ルーンなんか?!!カイのおる場所知らへん?早く見つけなあかんねん!!」

「わっふん!」

そう言ってルーンはコウのいた路地裏から走って出る。コウはそれを追いかけたのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界に転生したら?(改)

まさ
ファンタジー
事故で死んでしまった主人公のマサムネ(奥田 政宗)は41歳、独身、彼女無し、最近の楽しみと言えば、従兄弟から借りて読んだラノベにハマり、今ではアパートの部屋に数十冊の『転生』系小説、通称『ラノベ』がところ狭しと重なっていた。 そして今日も残業の帰り道、脳内で転生したら、あーしよ、こーしよと現実逃避よろしくで想像しながら歩いていた。 物語はまさに、その時に起きる! 横断歩道を歩き目的他のアパートまで、もうすぐ、、、だったのに居眠り運転のトラックに轢かれ、意識を失った。 そして再び意識を取り戻した時、目の前に女神がいた。 ◇ 5年前の作品の改稿板になります。 少し(?)年数があって文章がおかしい所があるかもですが、素人の作品。 生暖かい目で見て下されば幸いです。

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした

高鉢 健太
ファンタジー
 ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。  ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。  もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。  とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!

異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい

ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。 強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。 ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

明日を信じて生きていきます~異世界に転生した俺はのんびり暮らします~

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生した主人公は、新たな冒険が待っていることを知りながらも、のんびりとした暮らしを選ぶことに決めました。 彼は明日を信じて、異世界での新しい生活を楽しむ決意を固めました。 最初の仲間たちと共に、未知の地での平穏な冒険が繰り広げられます。 一種の童話感覚で物語は語られます。 童話小説を読む感じで一読頂けると幸いです

転生ジーニアス ~最強の天才は歴史を変えられるか~

普門院 ひかる
ファンタジー
 ここ神聖帝国に地球から異世界転生してきた天才チートな男がいた。  彼の名はフリードリヒ・エルデ・フォン・ツェーリンゲン。  その前世からしてケンブリッジ大学博士課程主席卒業の天才量子力学者で、無差別級格闘技をも得意とするチートな男だった彼は、転生後も持ち前のチート能力を生かし、剣術などの武術、超能力や魔法を極めると、人外を含む娘たちとハーレム冒険パーティを作り、はては軍人となり成り上がっていく。  そして歴史にも干渉し得る立場となった彼は世界をどうするのか…

元ゲーマーのオタクが悪役令嬢? ごめん、そのゲーム全然知らない。とりま異世界ライフは普通に楽しめそうなので、設定無視して自分らしく生きます

みなみ抄花
ファンタジー
前世で死んだ自分は、どうやらやったこともないゲームの悪役令嬢に転生させられたようです。 女子力皆無の私が令嬢なんてそもそもが無理だから、設定無視して自分らしく生きますね。 勝手に転生させたどっかの神さま、ヒロインいじめとか勇者とか物語の盛り上げ役とかほんっと心底どうでも良いんで、そんなことよりチート能力もっとよこしてください。

処理中です...