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繋がれた未来~不安定な魂~

夢幻世界~カイの家~

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「おい、起きろ、、起きろ!!」

金髪の少年がそう言ってコウの肩を掴んで揺らす。

「…うっ、、ここどこ?」

「やっとお目覚めか。初めまして、コウ。俺は万物神レイだ。」

「えっ?何?どういうこと?神様ぁ?あんたが?」

そう言ってコウは幽霊でも見ているかのように目を細めた。

「…なんだその眼は、失礼だぞ。カイの友達だから大目に見てやってんのに。」

「えっ、アンタ、カイとどういう関係なん?」

「俺のことはレイと呼べ。カイとは親友だ。残念だったな、お前はカイの初めての友人じゃない。」

そう言ってレイはにやりと笑う。

「…それホンマ?まあええわ。それで、俺は何をしたらええの?」

「お前にはカイの創った世界に行ってもらう。」

「カイの創った?」

「ああ。初めから説明しよう。カイが転生者だということは知ってるな?」

「うん、知ってるで。」

「それじゃあ死因は?」

レイがそう言うとコウは頭を傾けた。

「死因?知らんで。17歳で死んだってのは聞いたことあるけど…」

「自殺だ。」

レイの銀色の瞳がコウの真っ赤な瞳を貫いた。

「じ、さつ?それって、、」


「自殺した者の魂は天国か地獄に割りふる前に浄化しなければならない。もしそうしなければ自殺した日を何度も何度もくりかえして怨霊になる可能性があるからだ。今、カイの魂は自殺した日を再現した世界にいる。お前がしなければならないことは結末を変えることだけだ。…まあ魔法は使えるから心配するな。言葉が通じるように少し頭をいじっておいた。…もう時間がない。もし失敗すればお前も無事ではすまないだろう。やめるなら今のうちだ。強制はしない。」


「そんなん聞いて止めれるわけないやろ?レイ、早よ送ってくれ。手遅れになる前にな。」

そう言ったコウの瞳には決意の炎が灯っていた。

「…いい友達を見つけたな、カイ。あっ、言い忘れていたがタイムリミットは…」

レイのそんな呟きを聞くか聞かないかの所でコウの意識は完全に消え去った。


「うん?ここどこや?」

コウの周りにはいろいろなゴミが散乱していた。

「なにこれ…めっちゃ汚な…」

コウは立ち上がり辺りを見渡した。近くのテーブルに写真立てが置かれておりなぜだか倒されていた。

その写真立てを起こした後、コウは隠れていた写真に驚きを隠せなかった。

写真の中にはカイと物凄く似ているのに少し雰囲気が違う瞳が黒色の少年と、レイと名乗った金髪の神?に似た少年がいた。

「なにこれ…絵とは違うんか?」

そう言ってコウは写真立てを元に戻し、今度は横に置いてあったテレビのリモコンを手に持った。

「これはなんや?」

そう言ってポチポチと適当にボタンを押していると偶然電源ボタンに触れ、テレビがついた。

『現在台風は近畿圏に接近しており、明日の昼には関東にも到達するでしょう。○○県や××県、△△県には暴風警報がでているため…』

「なにこれ…魔道具かなんかかな?まあええわ。取りあえずカイを探さな…」

コウはそう呟いてカイの部屋を探す。

「ここか…さっきの部屋よりかは片付いてんな…うん?これって…」

コウが覗いたのはカイが書いたと思われる遺書、というよりかはもっとラフな感想文のようなものが書かれた紙だった。
 

拝啓 

僕の命は今日終わる。誰かにそうさせられたわけじゃない。自分の選択だ。“死”が僕の唯一の救いであることを願いたい。それんなことを言ってもまだかすかに生きていたいと思うのは人間の本能なのだろうか?厄介なものだ。これだから人間は嫌いなんだ。

そんなことはさておき、今回の計画に警察の犠牲者を出そうと思ったんだけどすんでの所で止めておいた。なんかもういいやって思ったんだよね。あんなやつらに期待してた僕がバカだっただけだからさ。この家の扉を開ける初めの人に犠牲になってもらうことにした。誰が開けようが関係ない。父親でもいし母親でもいい。もちろん警察だって構わない。この紙やパソコンなんかと一緒に燃やしてあげるから寂しくはないだろう。ガソリンも撒いたし作戦は成功するはずだ。いや、してくれ。

ただ、一つ心残りがあるとすればルーンのことだ。あの子は僕がいなくても生きていけるだろうか?
動物はいい。絶対に裏切らないからね。

こんなことを書くつもりはあまりなかった。ただ、自分がここに生きていたことを証明したかったのだろう。

でも、それでも、どうせ全て燃えるけど書かないわけにはいかなかった。

僕はアイツらを許さない。でも何よりも許せないのは僕自身なんだ。

                    海

「なんやこのメチャクチャな文章。たまに意味わかられへん繋がりがあんねんけど…」

そう言ってコウは紙から目を離しふと窓を見た。

「なにこれ、糸か?窓に繋がれてる…」

コウはその糸の元を辿ってあちこちを探し回った。

すべての窓に、そして玄関のドアに繋がれた紐は複雑に部屋を網羅していた。

「糸の最後はキッチンか…もしかしてこれ...ドア引っ張ったら火がつく仕様とか、やったりして…いや、まさかな…でもどの窓にもついてるしなぁ...はぁぁ」

コウはそうため息をついて糸を切った。

「取りあえず外でるかぁ…」

と言ってコウは裸足のまま外に出たのだった。
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