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アルバード王立高等学院~迫りくる悪の手~

扉の先に

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「フラージュ、本当にカイは大丈夫なのか?」

ここ数日まともに寝ていないことが祟ったのだろう、そう言うルークスの顔は真っ青だった。

そんなルークスに困った顔をして聖女が答える。

「今の状態が1ヶ月続くのならばかなり問題ですが、カイくんが気を失ってからまだ1週間ですので今すぐ亡くなるということはないかと。過去の事例によると亡くなられた方でも気を失ってから2週間は経っていますし…」

ルークスに迫られて困った顔をしている聖女を捉えた国王は、はぁっとタメ息をはいた。

「心配しすぎですよ、師匠。その会話何回目ですか...。端から見ると美しい女性に孫バカのオジさんが怖い顔で迫っている地獄絵図ですよ。」

そう言って陛下がジトッした眼で見つめても効果はなさそうだった。売り言葉に買い言葉となりそうな二人の様子をみかねた聖女がさっと間に入る。

「まあまあ、陛下。お孫さんが前代未聞の事件に巻き込まれてまだ意識を取り戻してないのですから、ルークス様のお心もお察ししてあげてくださいな。」

そう言って優しく微笑む聖女に国王はぶんぶんと首をふる。

「ロゼリア公爵は優しすぎる。私が同じ状況にいてもあそこまで慌ててくれないぞ。一応は私はこの国の王なのだけれどね。」

陛下にとってルークスは第二の親のような存在である、ということを忘れていた聖女は自分の失言に気づき、はっとするが遅かった。

「ふん。お前はお前だ。お前はもうおっさんだが、あの子はまだ12歳なんだぞ!子どもを心配して何が悪い。ようやく心を開いてくれたのに振りだしに戻ったらどうしてくれるんだ!!」

その言葉で陛下が心なしか肩をふるせていることに気づいた聖女は話を変えようと違う話題をふってみる。

「そういえば陛下、生徒を含めた学院内部を調査されると小耳にはさんだのですが、学院長にはどうご説明を?反対なされたのでは?」

陛下は話題を変えられたことに気づいたが、これ以上ルークスによって火に油をそそがれても面倒なためそれに合わせることにした。

「…ああ、反対されたさ。だが師匠がブチギレていたんで説得にはそこまで苦労はしなかった。」

陛下の少し拗ねているような口調に聖女はまた困ったような顔をした。

「…ルークス様は何をなさったのです?まさかとは思いますが脅迫はなさいませんでしたよね?」

聖女の言葉にルークスは少し眼をそらす。

「…さすがにそこまでの度胸はない。おい、レオン…フラージュに余計なことを吹き込むのはやめろ。俺が事件直後に感じ取った不審な魔力が生徒や教員が集まっている場所から感じ取れた、と証言しただけだ。」

本当はそれだけではないが、という言葉はルークスの心の中に仕舞われる。

「本当ですか?それ。」

そう言ってまさに疑っています、といわんばかりの瞳で陛下はルークスを見た。

「さっきからお前、、やはりしごきが足りなかったようだな。表に出ろ、一から鍛え直してやる。」


「冗談ですよ、やめてください。ただでさえ疲れているんです。」

そう言って肩を揉みほぐす真似をした。

「てゆうかお前、なんでここまで来たんだ?」

そんなルークスの言葉に国王は眼をぱちくりとさせた。

「そろそろかと思いまして。」


「何がだ?」


「彼が起きるの、ですよ。」

まるでなんてこともないふうに言う国王にルークスの頭は???となっていた。

「…どうしてそんなこと分かるんだよ」


「お忘れかもしれませんが私も師匠と同じで瞳持ちですよ。私も神と繋がりがあります。」


「…早く目覚めてはほしいが記憶が混乱していたらなぁ…」


「カイくんはそんなに酷い過去があるんですか?」


「眼を見ただけでわかるだろ。…何度も見てきた。あれは熟練の暗殺者、いやどちらかというと敗残兵の眼だ。何かが憎くて憎くて仕方がないのに復讐する気力もなく生きることすらも諦めた絶望の瞳。…レオン、どんなに才能があっても苦しみに耐えてそれを打破しようともがくくともしなかったらそれは死んでるも同然だ。俺が初めに会ったカイの印象は屍そのものだった。」

そう言ったルークスを見て国王は頭に?を浮かべた。

「…抽象的すぎて何が言いたいのかあまりわかりませんが、取りあえず師匠がカイくんを物凄く大切になさっていることはわかりました。」

国王がそう言ったその時、地下牢に続く扉がギイイッという音と共に開いた。

扉の前に立っていたのは剣を手にしてこちらに殺気を向けていたのはカイだった。そしてその時のカイの瞳はルークスと同じ綺麗な緑色だった。
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