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夏休み~Dランク昇格編~
大恩は報せず
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眼が赤い。この魔物も操られているのか?
「ちっ、ここまでか…。まあいいさ、今日のはただの嫌がらせだから。次は本当に殺してあげる。」
そう言って少年は突然自分の首に剣を添えた。
「ルイゼル、せっかく召喚してやったんだ、できるだけ引っ掻き回しな。」
そう言って少年は自分の首を切り飛ばした。
ゴロンと落ちた少年の頭が全く別の男に変わっていく。
はっとして前を向いた時には時既に遅く、銀狼はもう動き出していた。
避けれないと判断しとっさに受け身の体勢をとる。
あともう少しでぶつかると思った時、いつもとは違って“恐怖”を感じた。
くるだろう痛みに備えて歯を食いしばろうとしたその瞬間、目の前の銀狼が真っ二つに切り裂かれた。
「カイ!大丈夫か?」
真っ二つにされた狼の後ろにはなぜだかお祖父様が立っていた。
「えっ、、お祖父様?なんで、、、ここに?」
「取りあえず屋敷に戻ろうか。その話をここでするわけにはいかないんでな。」
「試験はどうするの?」
「それも後で説明する。ここは危険だから早く移動しよう。」
そう言ってお祖父様が座り込んでいた僕が立てるように手を伸ばした時、僕の視界は暗転したのだった。
♢
はっと目を開けると眩しい光が僕を照らした。
「ここ、、どこ?ああ…部屋か。」
自分の部屋ではなく公爵邸にある医務室のようなところだった。
「あっ、起きたん?気分はどう?」
と尋ねるコウの頭や腕には包帯が数ヶ所巻かれてある。
「まあまあかな。エレンは?」
「エレンはさっき起きたで。まあ、筋肉痛が痛すぎてベッドからはしばらく動かれへんみたいやけど。」
無事だったのならよかった
「それで?なんでお祖父様があそこにいたの?」
「ああそれはな。かくかくしかじかで…」
なるほど、つまりこういうことのようだ。
時は少しさかのぼる。
「試験からちょうど1時間か…カイ達は上手くやっているだろうか?」
「当主様直々に訓練なされたんです。Dランク試験ぐらい余裕にクリアできると思いますよ。」
「…そうか。…うん?あれは確かギルドの…」
そう言って公爵は窓を開ける。
そして、入ってきた鳥の足につけてある紙を取り、逃がしてやる。
「何かあったんですか?」
「…どうやら2次試験が中止になったようだ。霞の森で異変があったらしい。緊急の調査依頼がきたから少し出てくる。」
「かしこまりました。」
ということでお祖父様は騎士団の人達と霞の森へ調査に入った。
試験監督の人に話を聞いて僕らだけがまだ霞の森にいるという情報を手に入れた。
だが、空中から霞の森をいくら探しても僕らは見つけることはできなかったらしい。霧のせいで見えないのでそらそうだと言いたいが。
その時、コウに出させた火力ましましのファイアーボールによって出た煙が霧を突き破って出たおかげでお祖父様が僕らに気づいてくれたようだ。
「異変ってなんだったの?」
「変な魔力が観測されたらしい。呪術を使えば使うほど魔力が何かに侵食されていくんだ。あの男が主悪の根源かは分からないがな。」
「避難指示してたんだね。まったく聞こえなかったけど…」
「おそらく妨害されていたんだろうな。幻影魔法は姿形や声、それに音や環境まで変えることができる万能な魔法だからな。カイ達を真っ直ぐ狙いにこれたのはおそらく術者に“接触”したからだろう。その時に僅かながらでも魔力を取って魔物に追跡させたんだろう。まあそんな芸当は熟練の魔法使いでも難しいがな。」
いったい誰が、なんて考えたって今の情報力じゃ答えはでないだろう。
「…なるほどね。じゃあ試験はどうなるの?」
「ライズのDランクの2次試験は代々霞の森で行われていたんだがしばらく立ち入り禁止になったからな。難しめの筆記試験になるみたいだ。」
「…難しめ?」
「ああ。半分以上落とさないといけないからな。まあカイ達なら合格できると思うからそう気負わなくていいと思うが…。」
「そっか…ねぇ、お祖父様。チェスやらない?今度は本気でやるからさ。」
僕がそう言うとお祖父様少し頬を緩ませて小さく頷いた。
「少し待っていてくれ。チェス盤を取ってこよう。」
そう言ってお祖父様が退出する。
「信用することにしたんやな。」
「命を救ってもらったのにも関わらず疑い続けるなんてみっともないと思っただけだよ。」
そう言って僕は少し微笑んだ。
窓から吹く風はもう痛くなかった。
「ちっ、ここまでか…。まあいいさ、今日のはただの嫌がらせだから。次は本当に殺してあげる。」
そう言って少年は突然自分の首に剣を添えた。
「ルイゼル、せっかく召喚してやったんだ、できるだけ引っ掻き回しな。」
そう言って少年は自分の首を切り飛ばした。
ゴロンと落ちた少年の頭が全く別の男に変わっていく。
はっとして前を向いた時には時既に遅く、銀狼はもう動き出していた。
避けれないと判断しとっさに受け身の体勢をとる。
あともう少しでぶつかると思った時、いつもとは違って“恐怖”を感じた。
くるだろう痛みに備えて歯を食いしばろうとしたその瞬間、目の前の銀狼が真っ二つに切り裂かれた。
「カイ!大丈夫か?」
真っ二つにされた狼の後ろにはなぜだかお祖父様が立っていた。
「えっ、、お祖父様?なんで、、、ここに?」
「取りあえず屋敷に戻ろうか。その話をここでするわけにはいかないんでな。」
「試験はどうするの?」
「それも後で説明する。ここは危険だから早く移動しよう。」
そう言ってお祖父様が座り込んでいた僕が立てるように手を伸ばした時、僕の視界は暗転したのだった。
♢
はっと目を開けると眩しい光が僕を照らした。
「ここ、、どこ?ああ…部屋か。」
自分の部屋ではなく公爵邸にある医務室のようなところだった。
「あっ、起きたん?気分はどう?」
と尋ねるコウの頭や腕には包帯が数ヶ所巻かれてある。
「まあまあかな。エレンは?」
「エレンはさっき起きたで。まあ、筋肉痛が痛すぎてベッドからはしばらく動かれへんみたいやけど。」
無事だったのならよかった
「それで?なんでお祖父様があそこにいたの?」
「ああそれはな。かくかくしかじかで…」
なるほど、つまりこういうことのようだ。
時は少しさかのぼる。
「試験からちょうど1時間か…カイ達は上手くやっているだろうか?」
「当主様直々に訓練なされたんです。Dランク試験ぐらい余裕にクリアできると思いますよ。」
「…そうか。…うん?あれは確かギルドの…」
そう言って公爵は窓を開ける。
そして、入ってきた鳥の足につけてある紙を取り、逃がしてやる。
「何かあったんですか?」
「…どうやら2次試験が中止になったようだ。霞の森で異変があったらしい。緊急の調査依頼がきたから少し出てくる。」
「かしこまりました。」
ということでお祖父様は騎士団の人達と霞の森へ調査に入った。
試験監督の人に話を聞いて僕らだけがまだ霞の森にいるという情報を手に入れた。
だが、空中から霞の森をいくら探しても僕らは見つけることはできなかったらしい。霧のせいで見えないのでそらそうだと言いたいが。
その時、コウに出させた火力ましましのファイアーボールによって出た煙が霧を突き破って出たおかげでお祖父様が僕らに気づいてくれたようだ。
「異変ってなんだったの?」
「変な魔力が観測されたらしい。呪術を使えば使うほど魔力が何かに侵食されていくんだ。あの男が主悪の根源かは分からないがな。」
「避難指示してたんだね。まったく聞こえなかったけど…」
「おそらく妨害されていたんだろうな。幻影魔法は姿形や声、それに音や環境まで変えることができる万能な魔法だからな。カイ達を真っ直ぐ狙いにこれたのはおそらく術者に“接触”したからだろう。その時に僅かながらでも魔力を取って魔物に追跡させたんだろう。まあそんな芸当は熟練の魔法使いでも難しいがな。」
いったい誰が、なんて考えたって今の情報力じゃ答えはでないだろう。
「…なるほどね。じゃあ試験はどうなるの?」
「ライズのDランクの2次試験は代々霞の森で行われていたんだがしばらく立ち入り禁止になったからな。難しめの筆記試験になるみたいだ。」
「…難しめ?」
「ああ。半分以上落とさないといけないからな。まあカイ達なら合格できると思うからそう気負わなくていいと思うが…。」
「そっか…ねぇ、お祖父様。チェスやらない?今度は本気でやるからさ。」
僕がそう言うとお祖父様少し頬を緩ませて小さく頷いた。
「少し待っていてくれ。チェス盤を取ってこよう。」
そう言ってお祖父様が退出する。
「信用することにしたんやな。」
「命を救ってもらったのにも関わらず疑い続けるなんてみっともないと思っただけだよ。」
そう言って僕は少し微笑んだ。
窓から吹く風はもう痛くなかった。
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