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夏休み~Dランク昇格編~
2次試験~命がけの前哨戦~
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グシュッという音と共に狼の首が宙に舞う。
その様に怯えもせず2匹3匹と次々襲いかかってくる。
「っ、ファイヤーボール!…あかん!!なんで怯まへんの?!」
呪術で完全にコントロールされているのか…もしそうならほとんどの作戦がおじゃんになる。
たちの悪いロボットと戦っているのとなんら変わりはないのだから。
「なぁカイ!川をカイの氷魔法で橋かけられへんの?」
どこの女王だよ!ってそんなこと考えてる場合じゃない!
「無理だよ!っ…技術も魔力も足りないよ!」
そう言いながら狼の体を切り裂く。返り血で全身がベタベタになるが今は気にならなかった。
また、たまに爪でひっかかれるがイリアスが瞬時に治してくれるので問題はない。
「じゃあ俺らとの手合わせで使ってたヤツは?」
おそらく水魔法を広範囲に広げてそれらの属性を
水→氷にすることで相手の体(主に足)を凍らせることを言っているんだろう。
「…それなら出来るけど長くは続かな…っ、危な」
首すれすれに爪が通る。
一瞬でも反応が遅かったら首が割けていただろう。
「何体なら凍らせることができるんだ?」
「最高でも7体だよ!だが、数が多くなればなるほど維持できる時間が少なくなる。それに、魔力的にも1回しか使えない!」
「んじゃどうするんだよ!」
「エレンの狂化は何秒もつの?」
「15秒が限界だ!」
「それじゃあ僕が近くにいる魔物を凍らせるから、動いている後ろの狼をギリギリまで倒してくれ!コウはっ…」
あぶっ、危な…
「コウは僕が凍らせた狼を倒してほしい!イリアスはウィンに僕を浮かしてほしいと頼んでくれ!」
「どれぐらい浮かせばいい?」
「4mくらいが望ましい!…いい?皆、僕の魔法に当たったらコウに火魔法で溶かしてもらってね。それと、この作戦は僕が抜けた瞬間に体勢が崩れたら終わりだから覚悟するように!」
僕がそう言い終わると体が浮く。
「ここら辺でいいか…ウォーターボール!からのフリッジ」
バケツの水をひっくり返したような強烈な水魔法の雨が魔物に降りかかる。そして全身がぐっしょり濡れているであろう1秒後、僕の氷魔法が彼らを襲う。
「エレン!」
僕がそう叫ぶとエレンが少し頷いて狂化スキルを発動する。
「狂化!」
エレンがそう言うとあの時見たのと同じ金色の光が彼を纏う。
その瞬間、物凄い速さで凍りついた魔物を通りすぎて奥にいる魔物を倒し始める。
魔力はもうすっからかん。今見えている魔物だけならなんとかなりそうだが…悪い予感が自分の頭から離れない。ガンガンと頭の中で警鐘がなっているがひとまずは無視する。
凍りついた狼はコウに任せ自分はエレンの助っ人に入る。
10秒ほどしかなかったが初めて誰かと背中を合わせた。思っていたよりも悪くない。
「っ、限界だ…」
そう言ってエレンが倒れ込む。
それに群がろうとする狼を切り裂いてエレンの前にたつ。
どうやらコウの方は終わったみたいだ。
狼たちは少し距離を開けてタイミングをうかがっている。
「ちょうどいいね。イリアス、エレンを引っ張ってそっちに寄せといて。……コウ。」
「初めてなんとちゃうか?こうやって戦うの。」
そう言ってコウはどこか楽しげに口角をあげた。その姿はまるで戦闘狂のようだった。
「そうだね。ようやく僕は君達を信頼できたみたいだ。」
「そりゃ良かったわ。…残りは10体か…いけるか?」
「いけるもなにもやるしかないでしょ。コウにお願いがあるんだけど、今向いている方向に魔力全てを使ってファイアーボールを放ってくれる?」
「…そんなことしたら木が燃えるんちゃう?」
「燃やしたいから大丈夫。…来るよ!」
僕がそう言った瞬間には僕らの足は自然と動いていた。
「っ信じるで?…ファイアーボール!」
コウが放ったファイアーボールは3,4匹の狼を巻き込んで2本の木に火をつけた。
僕らはその様子を見る暇もなく剣を振るう。
いつもよりも体は軽かった。
♢
「…しぬ、死ぬかと思った…」
そう言ってもう動けないとコウが座り込む。
「イリアスもありがとう。…エレンはどんな…っ」
妙な気配を感じる。
霧の方を見つめると人影がゆっくりこっちに近付いてきているのが分かった。
「どうしたんだ?」
「…誰か来る」
霧の中から現れたのは一次試験前に話しかけてきた少年だった。
「みんな、大丈夫だった?僕、魔力探知が得意なんだ。こっちに魔物がたくさんいった気配を感じて助けにきたんだけど、大丈夫だったみたいだね。」
そう言って微笑む少年に背中がひんやりとする。
「おん!ギリギリやったけ「コウ!ダメだ!!近付いてはいけない!」…なんで?」
「君なんじゃない?この魔物を僕らに送ったのは。」
そう言っていつでも戦えるように剣を抜く。
「酷いなぁ、せっかく助けにきたのに。」
「その割には急いで来たようには見えなかったけど?近くにいて様子を見てたんじゃないの?」
「…賢い子は嫌いじゃないよ。でもね、お前は別だ!我が召喚に応えよ、ルイゼル!」
少年が呼び出したのは白光狼の上位種“白銀狼”、
推定ランクはBランク以上だ。
どうあがいても勝てるわけがない魔物に僕らは呆然と立ちつくすしかなかった。
その様に怯えもせず2匹3匹と次々襲いかかってくる。
「っ、ファイヤーボール!…あかん!!なんで怯まへんの?!」
呪術で完全にコントロールされているのか…もしそうならほとんどの作戦がおじゃんになる。
たちの悪いロボットと戦っているのとなんら変わりはないのだから。
「なぁカイ!川をカイの氷魔法で橋かけられへんの?」
どこの女王だよ!ってそんなこと考えてる場合じゃない!
「無理だよ!っ…技術も魔力も足りないよ!」
そう言いながら狼の体を切り裂く。返り血で全身がベタベタになるが今は気にならなかった。
また、たまに爪でひっかかれるがイリアスが瞬時に治してくれるので問題はない。
「じゃあ俺らとの手合わせで使ってたヤツは?」
おそらく水魔法を広範囲に広げてそれらの属性を
水→氷にすることで相手の体(主に足)を凍らせることを言っているんだろう。
「…それなら出来るけど長くは続かな…っ、危な」
首すれすれに爪が通る。
一瞬でも反応が遅かったら首が割けていただろう。
「何体なら凍らせることができるんだ?」
「最高でも7体だよ!だが、数が多くなればなるほど維持できる時間が少なくなる。それに、魔力的にも1回しか使えない!」
「んじゃどうするんだよ!」
「エレンの狂化は何秒もつの?」
「15秒が限界だ!」
「それじゃあ僕が近くにいる魔物を凍らせるから、動いている後ろの狼をギリギリまで倒してくれ!コウはっ…」
あぶっ、危な…
「コウは僕が凍らせた狼を倒してほしい!イリアスはウィンに僕を浮かしてほしいと頼んでくれ!」
「どれぐらい浮かせばいい?」
「4mくらいが望ましい!…いい?皆、僕の魔法に当たったらコウに火魔法で溶かしてもらってね。それと、この作戦は僕が抜けた瞬間に体勢が崩れたら終わりだから覚悟するように!」
僕がそう言い終わると体が浮く。
「ここら辺でいいか…ウォーターボール!からのフリッジ」
バケツの水をひっくり返したような強烈な水魔法の雨が魔物に降りかかる。そして全身がぐっしょり濡れているであろう1秒後、僕の氷魔法が彼らを襲う。
「エレン!」
僕がそう叫ぶとエレンが少し頷いて狂化スキルを発動する。
「狂化!」
エレンがそう言うとあの時見たのと同じ金色の光が彼を纏う。
その瞬間、物凄い速さで凍りついた魔物を通りすぎて奥にいる魔物を倒し始める。
魔力はもうすっからかん。今見えている魔物だけならなんとかなりそうだが…悪い予感が自分の頭から離れない。ガンガンと頭の中で警鐘がなっているがひとまずは無視する。
凍りついた狼はコウに任せ自分はエレンの助っ人に入る。
10秒ほどしかなかったが初めて誰かと背中を合わせた。思っていたよりも悪くない。
「っ、限界だ…」
そう言ってエレンが倒れ込む。
それに群がろうとする狼を切り裂いてエレンの前にたつ。
どうやらコウの方は終わったみたいだ。
狼たちは少し距離を開けてタイミングをうかがっている。
「ちょうどいいね。イリアス、エレンを引っ張ってそっちに寄せといて。……コウ。」
「初めてなんとちゃうか?こうやって戦うの。」
そう言ってコウはどこか楽しげに口角をあげた。その姿はまるで戦闘狂のようだった。
「そうだね。ようやく僕は君達を信頼できたみたいだ。」
「そりゃ良かったわ。…残りは10体か…いけるか?」
「いけるもなにもやるしかないでしょ。コウにお願いがあるんだけど、今向いている方向に魔力全てを使ってファイアーボールを放ってくれる?」
「…そんなことしたら木が燃えるんちゃう?」
「燃やしたいから大丈夫。…来るよ!」
僕がそう言った瞬間には僕らの足は自然と動いていた。
「っ信じるで?…ファイアーボール!」
コウが放ったファイアーボールは3,4匹の狼を巻き込んで2本の木に火をつけた。
僕らはその様子を見る暇もなく剣を振るう。
いつもよりも体は軽かった。
♢
「…しぬ、死ぬかと思った…」
そう言ってもう動けないとコウが座り込む。
「イリアスもありがとう。…エレンはどんな…っ」
妙な気配を感じる。
霧の方を見つめると人影がゆっくりこっちに近付いてきているのが分かった。
「どうしたんだ?」
「…誰か来る」
霧の中から現れたのは一次試験前に話しかけてきた少年だった。
「みんな、大丈夫だった?僕、魔力探知が得意なんだ。こっちに魔物がたくさんいった気配を感じて助けにきたんだけど、大丈夫だったみたいだね。」
そう言って微笑む少年に背中がひんやりとする。
「おん!ギリギリやったけ「コウ!ダメだ!!近付いてはいけない!」…なんで?」
「君なんじゃない?この魔物を僕らに送ったのは。」
そう言っていつでも戦えるように剣を抜く。
「酷いなぁ、せっかく助けにきたのに。」
「その割には急いで来たようには見えなかったけど?近くにいて様子を見てたんじゃないの?」
「…賢い子は嫌いじゃないよ。でもね、お前は別だ!我が召喚に応えよ、ルイゼル!」
少年が呼び出したのは白光狼の上位種“白銀狼”、
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