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夏休み~Dランク昇格編~

2次試験~彼らのために~

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「どうしたの?顔面蒼白だよ?」

青白いイリアスの顔はどこか緊迫な雰囲気を感じる。

「木の上で魔力探知をしたんだが、北から物凄い数の魔力が移動しているんだ!速く逃げよう!」

イリアスの切迫さに事態の深刻さを感じ、皆来た道とは反対方向に走る。


「霞の森の上位捕食者は群れで生活する“白光狼ビャッコウウルフ”と単独で動く“大食いイノシシグラトニーボア”いるんだ。大食いイノシシグラトニーボアは言うまでもないが、白光狼ビャッコウウルフもそこまで集団では動かないはずなんだが…」

困惑気にエレンがそう言う。

「誰かが魔物が集まる薬でも撒いたんじゃない?」

ただ、そういった薬は高額であまり出回ってないと思うんだが…

「そんなことしてなんのメリットがあんねん!」

メリット?それならある。

「受験者の数を減らして有利にしたいんだろうね。流石に僕の良心もここまでは許さなかったよ。」

偏見で申し訳ないがあの不良みたいなヤツが犯人だと思う。

「なんでかわからないんだが、魔力の動き的に魔物全てがこちらに向かっている。」

この“場所”に何か用があるのか、はたまた“僕達”に何か用があるのか、、

「…ただの偶然だったらいいんだけど、、」

もしこれが偶然でなく必然だったら、、狙いは誰だ?

赤い瞳関係か、それとも僕か…

どちらにしろよくはない。

「イリアス、あとどれぐらい走れる?」

昔のイリアスならもうギブアップしている頃だろう。よくこの2ヶ月で成長したものだ。

「あと10分ぐらいならこのスピードでも耐えれるがそれ以上は無理だ。」

この場所まで歩いて2時間かかった。だいたいの歩行スピードは4km/hだったから試験監督がいる場所まで約8km。今は8km/hで走っているから単純計算だと1時間でつくはずだ。(もちろん山ということは考慮にいれてないためかなりずれが生じるだろう)

ただ、人間の速度よりも魔物の速度の方が速いだろうし、イリアスの体力もそこまでもたないようなので机上の空論で終わることは火を見るよりも明らかだ。

「数はどれぐらいなんだ?」


「わからない!でも、50匹はゆうに越えていた。」

Dランク以上の可能性が高い魔物が50匹以上となると、これはおそらく本当に僕らの中の誰かを狙っているとみていいだろう。

魔物をおびき寄せる薬にそんな力はなかったと思うしな。

「木に登るんはどうや?前もそれでいけたやん!」


「それはホーンバードの時でしょ!大食いイノシシグラトニーボアがいたら突進で木を倒されて皆等しく餌になるよ!!」


「水に入るのはどうだ?この川は下まで続いている。アイツらは泳げないから「君たちも泳いだことないでしょ!」…そうだった」

まったく、、まともな案を出す人間はいないのだろうか?

「っ、カイ!もう近くにいる!!」

自分の索敵範囲にも入っているのですぐそこにいるのはわかっているが、今の手持ちでは打つ手がない。

たかがDランク試験だと思って油断し過ぎたな…もう少し用意しておくべきだった。

「…っ、戦闘用意!」

僕がそう言うとイリアスを守るような陣形をとり各々の武器を構える。

「…なあカイ、“狂化”を使ってもいいか?」


「……でも、、」

それを使えば1分も経たずにエレンは間違いなく戦闘不能状態になる、とは言えなかった。

「勝機がないんだろう?使えるものは使うべきだ。」


「…まだ待ってほしい。できるところまでやってからじゃないとエレンが倒れた後に打つ手がなくなる。」

後ろには大きな川が流れているので挟み撃ちされる危険はほとんどない。

「…来たぞ!」

霧の中から出てきたのは白光狼ビャッコウウルフだった。


種族 白光狼  レベル12  

体力 1650/1800

魔力 500

俊敏 60

レベルが足らないので以下閲覧不可


かなり強いが倒せなくもない、か…だが数が数だ。

一筋縄ではいかないだろう。

「イリアスはアクアに頼んでこの霧をどうにかできないかな?」


「やってみる。アクア!」

そうイリアスが言うと宙に浮いたアザラシが空中を泳ぎ、霧は僕らから半径10mの域で消えてなくなった。

「っ、おい、まさか…」

白光狼はルーンの種族である月光狼と系列が同じであり日中は眼が青い。だが、目の前の狼は皆瞳が赤かった。

これが意味するのはすなわち、

「呪術か…」

そう呟いた時、狼が一斉に飛びかかってきた。

むこうがその気なら、こちらも死に物狂いで抵抗しなければ…

僕に生きる意味を教えてくれた彼らのために。

もう少し生きたいと思わせてくれた彼らのために。

さあ、命を賭けた戦いをしようじゃないか!

もう、後悔はしたくないんだ…
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