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夏休み~Dランク昇格編~

世界線の違う僕

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目の前には殴られ蹴られているかつての僕がいた。

いつもの夢のように僕の姿はかつての僕にも見えていないようで誰一人として声をかけてくる者もいなかった。

「お前さぁ、ウザイんだよね。わかる?頭がいいしか取り柄のない親に見捨てられた可哀想な海くん?」


「……」


「コイツ、兄貴を無視したな!!」

そう言って隣の舎弟に殴られる。…ああ、あれは歯が1本抜けたな…

格好的には中学生か。あの時は本当に苦しかったな

ここからいつものように...

「…くそがっ」

そう言って僕が、、いや、ちがう、、ちがう、、これは僕じゃない。

僕はアイツらにこんなことを言った覚えはない。なら、、こいつは誰だ?

目の前では僕の姿をした誰かが無表情で拳を振るっていた。

そして急に場面が変わった。

かいくん、これあげるよ。前読みたいって言ってたよね?たまたま手に入ったんだ。1日早いけど誕生日おめでとう!」

そう言って高校生ぐらいの女の子が本をボクに手渡す。

その女の子は顔にアザがあるもののフローレス嬢ととてもよく似ていた。

「ありがとう。…そうだ、明日一緒に花火を見に行かないか?有栖ありすこういうの好きだろ?それに夜だからソレも見にくくなるし…」

自分も高校生ぐらいだろうか?帽子を深く被っていて顔はよく見えないが少し嬉しそうなオーラを感じる。

「うん、行きたい!!」

女の子はそう言ってパァッと眼を輝かせた。

「…わかった。それじゃあ明日の夜7時にいつもの場所で...」


「うん!絶対に行くね!!」

そう言って2人は別れる

そしてまた場面が変わった。

真っ暗でどこなのかはわからなかった。


ここはどこだ?何も見えない…ただいろんな人の叫び声がする。


「お前のせいだ、お前がいなければ俺は幸せに暮らしていけたんだ!!」


「私は何もしてないのに!なんであなたに殺されなければならなかったの?」


「俺には子どもがいたんだ!!俺が死ねばアイツらの生活がどうなるかわかってるのか!!」


「殺してやる、殺してやる!!!」

そんな声が至るところから聞こえてきた。

共通しているのは全員僕を恨んでいるということ。

取りあえずここから早く抜け出さなければもう2度と戻ってこれなくなる、そういう薄気味悪さを感じた。

わけもわからずこの声から逃れるために走っていると突然誰かに手をひかれた。

その手は死んでいるのかと疑ってしまうほど冷たかったが、なぜだかとても安心した。

流れに身をまかせていると周りはいつの間にか暗闇から白い空間に変わっていた。

手を引いてくれたのはどうやらライだったようだ。でも、どうしてここに…

「お前、なんでここにいんだ?ここ、俺の領域だぞ。わかってんのか?」

開口一番に言うのがそれかよ…

「何それ、どういう意味?」


「だ、か、ら、ここは俺の夢なの。人の夢に入ってきやがって…礼儀ってもんをしらねぇのか?」


「はぁ?僕だってこんなところに入りたくなんかないさ。気づいたら入ってたんだよ!」


「気づいたら入ってたぁ?そんなわけあるか!」


「あるんだよ、それが。突然体調が悪くなって部屋で休んでたところだったのに。」

僕がそう言うと突然真剣そうな顔つきをした。

「…体調が悪くなった?もしかしたら…ちょっと眼を瞑ってくれ」


「…変なことしないでよ?」

じとっとした眼で見てしまう僕は悪くないだろう。

「するわけねぇだろ!…ったく」

そう言って眼をつぶった僕の眼をライの手が覆い隠す。
コイツ、信用してないな…

「もういいぞ。…悪かったな。お前がここに来てしまったのは怨念が原因だった。多分この怨念達は向こうで俺が殺した連中だな。ソイツらが俺と間違ってお前の所に来てしまったんだろう。今ぶっ殺してやったからコイツらのせいで悪夢を見ることはもうないはすだ。」


「ぶっ殺したって…どうやって?」


「俺のは優秀なんだ。それじゃあとっとと帰れ。戻れなくなっちまう前にな。」


「どうやって戻るのさ。」


「ったく、世話が焼けるガキだな。悪夢から覚めたい時はな、大切な人間を思い浮かべればいいんだ。お前にもいるだろう?」


「…うん。」


「そいつに会いたいと切実に願えばここから出れる、、たぶん。」


「…なんでたぶんなの?」


「俺は人の夢に入ったことないからな。まっ、また夢で会おうぜ、兄弟。ほらっ、これやるよ。これがあれば次も入ってこれる。」

なんだこれ?

てか意見変えすぎじゃないか、コイツ…

「さっきはよくなさそうだったのに…」

そう呟いてコウ達の隣にいる自分を想像する。

早く、はやく、会いたい、、あいたい











次に眼を開けると自分の部屋に戻っていた。ライが投げて寄越した首飾りを握っており、さっきのが本当の意味で夢ではないことを知ったのだった。

ああ、聞くのを忘れたな。あの少女とライとの関係を。

いや、聞いても意味はないか…

そう思いいつもより軽くなった体を起こした。

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