上 下
96 / 145
夏休み~Dランク昇格編~

それぞれのカイ

しおりを挟む
「初めまして、俺はコウって言うねん。カイがいつも世話になってます!」

そう言ってコウはニカッと笑う。

「コウ、それ言いたかっただけでしょ?」

確かコウの好きな小説に載っていたセリフだったはずだ。

「せやで!」

やっぱな

「俺はエレン、よろしくな!」


「次は私かな?私の名前はノエル・エスぺラード。こちらこそよろしく頼むよ。」


「私はセシル・ブライアンと申します。」


「アタシはシド!よろしくね!!」


「俺はカール、よろしく頼むぜ!」


「ぼ、僕はジェノア。よろしくね。」

よし、これで全員の自己紹介が終わったはずだ。僕がここにいる必要はもうないだろう。

「…僕部屋に戻っていい?」

チラリとお祖父様を見ながら言う。

「これから歓迎会でも開こうと思っていたんだがカイは参加しないのかな?」

誘ってくれているお祖父様には申し訳ないが遠慮しておく。

「うん、やめておく。少し気分が悪くて。」

そう言って談話室を出て自分の部屋へと戻り着替えもせずベッドに倒れ込む。

気分が優れないのは本当だ。

いつもよりも体が重い。原因は言うまでもなくストレスだろう。そもそも僕の睡眠時間は多くても6時間だ。しかも、一睡も出来ない時もあるほどだ。

寝れない理由の一つとして考えられるのは悪夢だ。

僕はこの世界に生まれてからしょっちゅう悪夢を見ている。

それは、知らない人に意識がなくなるまで殴られて最後には首を絞められる夢や、自分の目の前でレイがやコウ達が殺される夢などと様々だ。

夜寝られないから朝起きれない。その悪循環が祟ったのだろう。

もしくは慣れない学院生活で知らぬ間にトラウマが刺激されているか…

そう思いながらもだんだんと思考は暗闇へと沈んでいった。

------------------‐‐--------------------------------------------------------------------------

「行っちゃったな…」

「カイさん、大丈夫でしょうか?」

とイリアスやユウリが不安げに言う。

「疲れているんだろう。カイのことが気になるのなら夕飯の前に様子を見に行けばいい。それじゃあ私は退散するから今は皆で親交を深めておいてくれ。」

そう言って公爵が談話室から出ていく。

「なぁ、学院の中でのカイってどんなんなん?」


「うーん、……一言で表すと『自分を隠す人』、かな。コウさん達はどうだい?」


「呼び捨てでもかまへんよ。そうやな、俺は『知能だけ異常に発達して精神が未発達な子供』、かな。知能はもう大人なんやと思うけど精神はまだ10才ぐらいなんとちゃうやろか…」

前の世界では16くらいまで生きていたみたいやしな、という言葉を飲み込んでコウが答える。

それに続いて次はユウリが口を開ける。

「うーん、僕は『優しいけど怒ると怖い人』ですかね。やっぱり普段怒らない人が怒るとすごく怖いんですよ…」

ユウリの言葉に少し頷きながら次はシドさんが口を開く。

「あっ、アタシは『興味ないことには無視に全ぶりする人』だなぁ。実際に無視されている人もいたし…」

それを聞きカールが手を上げる。

「俺は『約束を守るヤツ』だと思うぜ。賭け試合の時の約束も守ってくれたしな!」

という言葉に確かにと思いながらイリアスが続く。

「僕は『死を恐れない人』、だな。カイが死を怖がっている所なんて今まで見たことないしな。」

その言葉に皆頷く。この中に彼が死を恐れている場面を見たことがある人はいないのだ。

「私は『人間関係において臆病な人』ですかね。それゆえ社会性に少し欠けている気がします。」

セシルはそう言ってジェノアの方を見る。

「ぼっ、僕は『勇敢な人』だと思うよ。いじめられていた僕のことを助けてくれたし。」

そう言ってジェノアはその事を思い出したのか嬉しそうに微笑む。

「なるほどな。アイツ学院ではそういう感じか…」

誰かを信頼することは無理やとしても仲良くすんのも難しい、か…。いったいカイにはどんな過去があったっていうんや…

と思ってコウは顔をしかめる。


「あんま他人に興味なさそうだもんな。」


「アタシなんか名前で呼んでいいって聞いたらダメって言われたんだよ。」

シドのその言葉にコウが素早く反応する。

「えっ、マジで?はぁ~……後でカイに注意しとくわ。ごめんな?」


「ううん。それよりみんなカードゲームしない?例えばポーカーとか。」


「ぽーかー?なんですか、それ。」

そうユウリが不思議そうに聞く。

「知らないかぁ、それならブラックジャックはどう?」

シドがそう聞くと皆知っているというように頷く。

「たしかカードにかかれた数字の合計が21に一番近い人が勝つんでしたよね?」


「うん、そうだよ!それじゃあみんな準備するから手伝って!!」


その言葉を機にみな動き出した。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

誰も要らないなら僕が貰いますが、よろしいでしょうか?

伊東 丘多
ファンタジー
ジャストキルでしか、手に入らないレアな石を取るために冒険します 小さな少年が、独自の方法でスキルアップをして強くなっていく。 そして、田舎の町から王都へ向かいます 登場人物の名前と色 グラン デディーリエ(義母の名字) 8才 若草色の髪 ブルーグリーンの目 アルフ 実父 アダマス 母 エンジュ ミライト 13才 グランの義理姉 桃色の髪 ブルーの瞳 ユーディア ミライト 17才 グランの義理姉 濃い赤紫の髪 ブルーの瞳 コンティ ミライト 7才 グランの義理の弟 フォンシル コンドーラル ベージュ 11才皇太子 ピーター サイマルト 近衛兵 皇太子付き アダマゼイン 魔王 目が透明 ガーゼル 魔王の側近 女の子 ジャスパー フロー  食堂宿の人 宝石の名前関係をもじってます。 色とかもあわせて。

異世界転生ファミリー

くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?! 辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。 アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。 アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。 長男のナイトはクールで賢い美少年。 ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。 何の不思議もない家族と思われたが…… 彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

幼少期に溜め込んだ魔力で、一生のんびり暮らしたいと思います。~こう見えて、迷宮育ちの村人です~

月並 瑠花
ファンタジー
※ファンタジー大賞に微力ながら参加させていただいております。応援のほど、よろしくお願いします。 「出て行けっ! この家にお前の居場所はない!」――父にそう告げられ、家を追い出された澪は、一人途方に暮れていた。 そんな時、幻聴が頭の中に聞こえてくる。 『秋篠澪。お前は人生をリセットしたいか?』。澪は迷いを一切見せることなく、答えてしまった――「やり直したい」と。 その瞬間、トラックに引かれた澪は異世界へと飛ばされることになった。 スキル『倉庫(アイテムボックス)』を与えられた澪は、一人でのんびり二度目の人生を過ごすことにした。だが転生直後、レイは騎士によって迷宮へ落とされる。 ※2018.10.31 hotランキング一位をいただきました。(11/1と11/2、続けて一位でした。ありがとうございます。) ※2018.11.12 ブクマ3800達成。ありがとうございます。

魔力∞を魔力0と勘違いされて追放されました

紗南
ファンタジー
異世界に神の加護をもらって転生した。5歳で前世の記憶を取り戻して洗礼をしたら魔力が∞と記載されてた。異世界にはない記号のためか魔力0と判断され公爵家を追放される。 国2つ跨いだところで冒険者登録して成り上がっていくお話です 更新は1週間に1度くらいのペースになります。 何度か確認はしてますが誤字脱字があるかと思います。 自己満足作品ですので技量は全くありません。その辺り覚悟してお読みくださいm(*_ _)m

収納持ちのコレクターは、仲間と幸せに暮らしたい。~スキルがなくて追放された自称「か弱い女の子」の元辺境伯令嬢。実は無自覚チートで世界最強⁉~

SHEILA
ファンタジー
生まれた時から、両親に嫌われていた。 物心ついた時には、毎日両親から暴力を受けていた。 4年後に生まれた妹は、生まれた時から、両親に可愛がられた。 そして、物心ついた妹からも、虐めや暴力を受けるようになった。 現代日本では考えられないような環境で育った私は、ある日妹に殺され、<選択の間>に呼ばれた。 異世界の創造神に、地球の輪廻の輪に戻るか異世界に転生するかを選べると言われ、迷わず転生することを選んだ。 けれど、転生先でも両親に愛されることはなくて…… お読みいただきありがとうございます。 のんびり不定期更新です。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

おいでませ異世界!アラフォーのオッサンが異世界の主神の気まぐれで異世界へ。

ゴンべえ
ファンタジー
独身生活を謳歌していた井手口孝介は異世界の主神リュシーファの出来心で個人的に恥ずかしい死を遂げた。 全面的な非を認めて謝罪するリュシーファによって異世界転生したエルロンド(井手口孝介)は伯爵家の五男として生まれ変わる。 もちろん負い目を感じるリュシーファに様々な要求を通した上で。 貴族に転生した井手口孝介はエルロンドとして新たな人生を歩み、現代の知識を用いて異世界に様々な改革をもたらす!かもしれない。 思いつきで適当に書いてます。 不定期更新です。

いつもの電車を降りたら異世界でした 身ぐるみはがされたので【異世界商店】で何とか生きていきます

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
電車をおりたら普通はホームでしょ、だけど僕はいつもの電車を降りたら異世界に来ていました 第一村人は僕に不親切で持っているものを全部奪われちゃった 服も全部奪われて路地で暮らすしかなくなってしまったけど、親切な人もいて何とか生きていけるようです レベルのある世界で優遇されたスキルがあることに気づいた僕は何とか生きていきます

処理中です...