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アルバード王立高等学院~新たな出会い~

特別試験1日目②~闇夜の邂逅~

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今日1日、これといって取り上げるようなことはなかった。

成果は
ゴブリン15体
コボルト10体
ホーンラビット12体
ノーマルスライム3体

そしてコインが2つ

初期ポイントの100pを合わせると合計825pとなる。上々の滑り出しと言えよう。

ちなみに今は深夜の2時ぐらいだ。

森の中は僕ら以外誰もいないと思わせるぐらいしんと静まりかえっていた。

そのため小さいものであったがガサッという音が聞こえた。

ホーンラビットの類いだろうと思い索敵をするが一向に反応はない。不思議に思い原因を探るべくその音の方へ足を進めた。

少しばかり歩くと野原が見えた。森の中にある所謂ギャップと呼ばれる場所と言えば分かるだろうか?

ともかく少し開けた場所にたどり着いた。

中央辺りに移動して周りを見ようとしたその時だった。

呼吸が苦しくなるほどの何かを感じた。指一本動かすことはできなかった。逃げろと本能が言うのも無理もないほどの圧倒的な魔力が野原いっぱいに広がった。

「やれやれ、ここまで来るのにどれだけ予定を前倒しにしたことか…」

声の主は目の前にいた。僕が全く気づかないのだから頭では埋めようのない実力差があることは目に見えていた。

黒い髪に黒い瞳を持ちどこか懐かしい顔の男、すなわち未来のボクだ。

黒いマントの奥に見えるのは高価な宝石があしらわれた服。
国王になったっていうのは本当のようだ。

それにしても何をしにここへ…僕を殺しに来たのだろうか?

「…僕を、殺しに来たの?」

僕がそう言うとソイツはおかしそうに嗤った。

「俺がお前を?…ふっ、笑わせるな。なんで俺がお前を殺さなきゃならない?」

なんで、だと?お前がそれを知らないはずがない。

「同じ世界に同じ人間が2人も存在してはならない…。お前だって知ってるはずだ。小さな子供でも知っている。聖書に載ってあるからな、“個人は唯一無二の存在であり、そうでない者は神罰が下るであろう”。ってね」

僕がそう言うとソイツは呆れたような顔をした。

「それがどうした?俺とお前は別々の人間だ。お前がこの世界に生まれ落ちたその瞬間から俺とお前は別々の存在となった。俺の名前は五十嵐海。そしてお前の名前はカイ・ハルシャ。それが唯一のそして絶対的な証拠だ。俺はお前になれないし、お前も俺にはなれないんだ。」


「…百万が一そうだとしても、だったらなんで僕に会いに来たんだ?意味が分からない」


「伝えなければいけないことがあったんだ。…詳しいことはよくわかっていないが、確実に10年以内にこの世界を根本から揺るがす何かが起きる。それが起きれば何百万人の人間が死ぬだろう。」


「だとしてもなぜお前が知ってる?」

そして、なんでそれを僕に教えるんだ...

「“彼”に教えてもらったんだ。」


「彼って誰だよ」


「それは言えん。約束だからな。天使か悪魔かって言われたら悪魔だろうが根は優しいやつだ。」

聞いてもないことを得意気に答える。コイツ、本当にボクか?

「…あっそ。いつ転移したの?」


「数か月前だ。勇者として召還されたみたいだがとんだ殺人鬼を喚んでしまったみたいだな。あーそういや隣にいたやつを数人殺してしまったがよかったか?」


「は?なんで殺してんの?僕が殺ろうと思っていたのに。」

もちろん機会があれば、だが…

「ふっ、あっははっは!!!さすが元俺だ。血は争えないみたいだな。1つ手土産をやる。クロード侯爵に気をつけろ。」

…クロード侯爵?

「そんなことを急に言われても信用できるはずがない。」


「そうかよ。…そういやお前に1つ聞きたいことがあったんだ。本当の意味でお前は仲間を信頼しているのか?」


「…どういうこと?」


「今は違うとはいえお前はもともと俺だったんだ。自分を信用できない者が他人を信用できると本当に思っているのか?」

めちゃくちゃだ。なんだその理論、聞いたこともない。

「まあ何にせよ、お前には俺が必要だ。なぜかって?それはな、俺が服従眼の保持者だからだ。」

服従眼、だと?

「ならなぜそれを使わない?」

明らかに僕の方が弱い。そんなことをコイツが分からないはずがない。

「使いたくないんだ、特にお前にはな。そもそも俺はお前を助けにきたんだ。使う必要もない。…てゆうか、わざわざ当て字で名前を公表しただろうが。」

あれ本当にそういうことで合ってたんだ…

「下の名前とはいえ、同じ名前は少しややこしいからな。俺のことはライって呼んでくれ」

結局イシカガ ライでいくんだ…

「分かったよ、ライ。確かにややこしいし自分の名前を呼ぶのは少し照れくさい。」


「だろ?正直言って次会えるのがいつになるのかはわからん。学院の結界を破るには時間が足りないからな。ただ、手紙のやり取りなら問題ない。俺はお前と仲良くしたいしお前も俺から情報をぶんどりたいだろ?Win-Winってやつだよ。ほら、これをやる。」

そう言ってライが取り出したのは判子のような物だった。

「これを押せば紙が半透明な鳥になって俺のもとに届く。結構高価な魔道具だから失くすなよ?結界すらも通れる特注品なんだから...」

使うかどうかは分からないが貰えるものは貰っておく。

「これだけは忘れないでくれ。お前には生きる資格がある。誰もお前の邪魔はできないんだ、カイ。結末はもう既に決まっている。」


そう言ってヤツは一瞬で闇夜へと消えていった。

その途端、先ほどの出来事が嘘であるかのように魔力が消え失せて体が動くようになった。

ひとまず、勘のいい人達にばれないようにソッとその場を離れて野営場所に戻った。
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