上 下
77 / 147
アルバード王立高等学院~新たな出会い~

初の授業

しおりを挟む
今日の授業は午前中に魔法理論(初級)と剣術、午後に魔方陣理論学(初級)と国史だ。

とりあえず魔法理論(初級)の教室に向かう。

この学院はとても大きいため移動するのが大変面倒くさいというのを除けばかなりいいところだ。

そう思って歩いていると後ろから声がかけられる。

「カイも魔法理論なの?」

振り返るとハミルは教科書を持って後ろにいた。マジで気づかなかった…

「そうだよ。でも、ハミルも一緒だとは思わなかったよ。」

2人で当たり障りのないことを喋りながら教室へ移動する。

「授業は他の寮と合同で行うんだ。どこに座ってもいいけれど前らへんに座ったら居眠りできないから気をつけたほうがいいよ。どこに座りたい?」

優等生に見えるハミルでも居眠りするんだ…なんか親近感を覚える。

「とりあえず1番端の窓際で…」

5分程たつと続々と生徒が入ってきた。

じろじろとこちらを見るのは本当にやめてほしいものだ。僕は見せ物ではない。


「それでは皆席に着け!転入生、俺が魔法理論の初級を担当するガルダだ。これからよろしく頼む。それでは授業を始める!」


おさらいしておこう。


まず、魔力は血液と同じように体全体をまわってる。それを意図的1ヶ所に集めて使うのが魔法である。

詠唱するのが基本だが、熟練の魔法使いは無詠唱らしい。まあ僕が熟練でないのに詠唱しなくても使えるのだから、熟練度は関係ないのかもしれない。

また、魔法は適正が有るものしか使えない。

ただ適正が有ったとしてもその人の才能や努力によっては威力がかなり異なってしまう上、魔力消費にも多大な影響を及ぼす。

また、職業を魔法使いにすると魔法を覚えやすくなるらしい。

魔法の適正は火水風草闇光炎氷の8種類あり、人は平均2つか3つの適正を持っていて4つ以上だと器用貧乏になりかねないのであまり好まれない。

また、光と闇の適正を持っているものはかなりレアなのでどこでも重宝される。まあ、どれぐらい使えるかにもよるが…

魔力量はレベルアップや特殊な鍛練をすることで上がる。また、魔法使い→魔導師などといったジョブチェンジでは大幅に増えることがある。
また、ダンジョンからでるアイテムで増やすこともできるらしい。

魔法理論(初級)はこういった初歩的な知識と魔法の原理についての授業である。
正直言ってつまらない。初級程度の内容はもう頭に入っている。
隣のハミルも同じだろう。さっきから欠伸を噛み殺しているのが眼に入ってくる。


「それではここまでの内容をしっかり覚えてくるように!試験まであと1ヶ月なんだからちゃんとやれよ!!」

ちなみに1年360日でありそれぞれ

1月  光の月 
2月  雪の月
3月  花の月 
4月  海の月 
5月  鳥の月
6月  水の月
7月  星の月
8月  火の月 
9月  土の月
10月   風の月
11月   神の月 
12月   闇の月 

と呼ばれている。
今は水の月24日、つまり6月24日だ。この学院では7月末と12月上旬に試験を行い8月丸々1ヶ月と12月の下旬から1月上旬が大きな休みとなる。また、1月から新入生が入ってくる。これは日本とは大きなる違いだ。

ちなみに飛び級試験は7月のテスト後と12月のテスト後に行われる。

結局何が言いたいのか…。それはくどいかもしれないが試験まであと1ヶ月しかないということだ。

さっさと飛び級したいので上位をとらないといけない。

さらに僕の頭を悩ますのは特別試験のことだ。

特別試験とは不定期に行われる屋外試験のことだ。この試験は試験日のちょうど7日前に告知され、基本的には寮vs寮で行われる。
そして、星の月1日に行われる特別試験が今日発表されるのだ。
なんで知ってるのかは聞かないでほしい。

昼休みに発表されるため次の剣術の授業の場所に移動する。ちなみにハミルも偶然?一緒だった。


「ここが剣術の訓練場だよ。ところでカイは剣術が得意なの?」

「ううん、全然。」

ハミルはたしか剣術やその他武術においてたぐいまれな才能があるとか。彼と比べたら赤子のようなものだろう。

「えっ、それじゃあなんで剣術にしたの?」


「それは「おい、お前だな!公爵家の薄汚い孤児っつうのはよ!!!」」

後ろを振り返ると少し、いやだいぶ太っている男がいた。男の名前はブルース・クロード。僕の要注意人物欄のトップに載っている男だ。

「クロード卿、それは人に対して言う言葉ではないと思う。撤回を要求する。」

そう言って僕を庇うようにして前に出たのはハミルだった。予想外のことに少し思考が停止する。彼は少し臆病と聞いていたが百聞は一見に如かずだな…

「構わないよ、ハミル。彼はまだガキなんだ。」

僕がそう挑発するとソイツは直ぐに顔を真っ赤にした。

「なんだと!!もういっぺん「お前ら!とっくに休み時間は終わってるんだが?」っ」

その鶴の一声で一旦騒動は終わる。


「あー俺の名前はレイスだ。これでも一応元Aランクの冒険者だ。よろしくな、転入生。そんじゃあまずはお前の実力を確かめる。コイツと戦いたいやつはいるか?」

先生がそう言うと待っていましたと言わんばかりにクロードは手を挙げる。

恐らく剣術が苦手だという会話を聞いていたのだろう。まったく...面倒なことを…

「コイツでも構わないか?」

と遠慮げに聞かれたので無言で頷く

「それじゃあ準備しろ」

するとハミルが僕の服の袖を少し引っ張る。

「ねえ、カイ。大丈夫なの?剣術は得意じゃないんでしょ?」

ハミルが不安そうに僕に聞くがそんなことはお構い無しに

「まあ見ときなって」

と言って剣を持ち前に進んだ。

もちろん短剣だ。相手は長剣でくると思ったんだろうな、すごく虚のつかれたような顔をしてる。

生憎、長剣は使えないんだ。


「相手が膝をつくか降参する、もしくは急所に剣を寸止めした方の勝ちだ。それでは始め!!」


「死ねぇぇ!!!!」

そう言って斬りかかってくるクロードを少し心で嘲笑う。

確かに僕は剣術が苦手だ。だがそれは大きくて振り回されてしまう長剣の場合。短剣は別に不得意ではない。
不得意ではないといっても短剣使いが僕しかいなかったため教えてもらうことができなかったのだ。だから、自己流となるため授業で習うような正統派のものは知らない。ただそれだけのことだ。

それに僕がハルシャ家から引き継いだのは無尽蔵の体力だけじゃないのだ。
1番強く引き継いだのは動体視力と反射神経だ。

見えるのだ、次の攻撃が。

クロードの攻撃を最低限の動きだけで避けていく。その間一切剣を使っていない。

正気を失った人間ほど扱いやすい者はないのだ。

そして1分程たった頃、クロードは息を切らせながらこちらを睨み付けた。

「避けるだけじゃねぇか、この腰抜けが!!」

そう言われたので仕方なく攻撃することにする。

良いところの坊っちゃんよりも僕の方が明らかに実践を積んでいる。結果は火を見るよりも明らかだ。

得意の素早さを活かして相手の背後に回り込み首に短剣をあてる。たったこれだけの操作をするためだけに時間稼ぎをした。この戦法は僕と彼の実力差が大きいように見せるためのものだ。実際は相手の体力を削りとり僕の早さについていけないようにしなければ通用しない三流戦法である。
これに騙されて僕を褒め称えるものはその程度ということだ。

そうこの戦いはこの学院で僕が頭にいれておくほどの人間かを判別するため作業に他ならない。

この程度も見抜けない人間と交友関係をもっても足手まといにしかならないだろう。いや、捨て駒くらいにはなるか…

とにかく、この数年で僕と彼らを守ってくれる後ろ楯を探さなければならないのだ。
そう、全ては彼らのため。僕は彼ら以外に興味の欠片もない。

……こういう思考をどうにかするためにも有能な人間が必要なのだ。

「よくやったな、転入生!自分の長所と短所がよくわかってるな。いい戦いを見させてもらった。それじゃあいつもの基礎訓練をする。とりあえず訓練場10週だ!!」

「「「えええーーーー」」」

大ブーイングがおきるが先生は気にすることもなくさっさとしろという目つきをした。


僕はとりあえずハミルの後ろを走ったが後ろから強い殺気を感じたので後で倍にして返してやろうと心に決めた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

勇者が仲間になりたそうにこちらを見ている

まる
ファンタジー
 樋口康平はそこそこどこにでもいるごく平凡な人間を自負する高校生。  春休みのある日のこと、いつものように母親の経営する喫茶店・ピープルの店番をしていると勇者を名乗る少女が現れた。  手足と胴に鎧を纏い、腰に剣を差した銀髪の美少女セミリア・クルイードは魔王に敗れ、再び魔王に挑むべく仲間を捜しに異世界からやって来たと告げる。  やけに気合の入ったコスプレイヤーが訪れたものだと驚く康平だが、涙ながらに力を貸してくれと懇願するセミリアを突き放すことが出来ずに渋々仲間捜しに協力することに。  結果現れた、ノリと音楽命の現役女子大生西原春乃、自称ニートで自称オタクで自称魔女っ娘なんとかというアニメのファンクラブを作ったと言っても過言ではない人物らしい引き籠もりの高瀬寛太の二人に何故か自分と幼馴染みの草食系女子月野みのりを加えた到底魔王など倒せそうにない四人は勇者一行として異世界に旅立つことになるのだった。  そんな特別な力を持っているわけでもないながらも勇者一行として異世界で魔王を倒し、時には異国の王を救い、いつしか多くの英傑から必要とされ、幾度となく戦争を終わらせるべく人知れず奔走し、気付けば何人もの伴侶に囲まれ、のちに救世主と呼ばれることになる一人の少年の物語。  敢えて王道? を突き進んでみるべし。  スキルもチートも冒険者も追放も奴隷も獣人もアイテムボックスもフェンリルも必要ない!  ……といいなぁ、なんて気持ちで始めた挑戦です。笑 第一幕【勇者が仲間になりたそうにこちらを見ている】 第二幕【~五大王国合同サミット~】 第三幕【~ただ一人の反逆者~】 第四幕【~連合軍vs連合軍~】 第五幕【~破滅の三大魔獣神~】

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

収納持ちのコレクターは、仲間と幸せに暮らしたい。~スキルがなくて追放された自称「か弱い女の子」の元辺境伯令嬢。実は無自覚チートで世界最強⁉~

SHEILA
ファンタジー
生まれた時から、両親に嫌われていた。 物心ついた時には、毎日両親から暴力を受けていた。 4年後に生まれた妹は、生まれた時から、両親に可愛がられた。 そして、物心ついた妹からも、虐めや暴力を受けるようになった。 現代日本では考えられないような環境で育った私は、ある日妹に殺され、<選択の間>に呼ばれた。 異世界の創造神に、地球の輪廻の輪に戻るか異世界に転生するかを選べると言われ、迷わず転生することを選んだ。 けれど、転生先でも両親に愛されることはなくて…… お読みいただきありがとうございます。 のんびり不定期更新です。

規格外で転生した私の誤魔化しライフ 〜旅行マニアの異世界無双旅〜

ケイソウ
ファンタジー
チビで陰キャラでモブ子の桜井紅子は、楽しみにしていたバス旅行へ向かう途中、突然の事故で命を絶たれた。 死後の世界で女神に異世界へ転生されたが、女神の趣向で変装する羽目になり、渡されたアイテムと備わったスキルをもとに、異世界を満喫しようと冒険者の資格を取る。生活にも慣れて各地を巡る旅を計画するも、国の要請で冒険者が遠征に駆り出される事態に……。

誰も要らないなら僕が貰いますが、よろしいでしょうか?

伊東 丘多
ファンタジー
ジャストキルでしか、手に入らないレアな石を取るために冒険します 小さな少年が、独自の方法でスキルアップをして強くなっていく。 そして、田舎の町から王都へ向かいます 登場人物の名前と色 グラン デディーリエ(義母の名字) 8才 若草色の髪 ブルーグリーンの目 アルフ 実父 アダマス 母 エンジュ ミライト 13才 グランの義理姉 桃色の髪 ブルーの瞳 ユーディア ミライト 17才 グランの義理姉 濃い赤紫の髪 ブルーの瞳 コンティ ミライト 7才 グランの義理の弟 フォンシル コンドーラル ベージュ 11才皇太子 ピーター サイマルト 近衛兵 皇太子付き アダマゼイン 魔王 目が透明 ガーゼル 魔王の側近 女の子 ジャスパー フロー  食堂宿の人 宝石の名前関係をもじってます。 色とかもあわせて。

世界樹を巡る旅

ゴロヒロ
ファンタジー
偶然にも事故に巻き込まれたハルトはその事故で勇者として転生をする者たちと共に異世界に向かう事になった そこで会った女神から頼まれ世界樹の迷宮を攻略する事にするのだった カクヨムでも投稿してます

異世界のんびりワークライフ ~生産チートを貰ったので好き勝手生きることにします~

樋川カイト
ファンタジー
友人の借金を押し付けられて馬車馬のように働いていた青年、三上彰。 無理がたたって過労死してしまった彼は、神を自称する男から自分の不幸の理由を知らされる。 そのお詫びにとチートスキルとともに異世界へと転生させられた彰は、そこで出会った人々と交流しながら日々を過ごすこととなる。 そんな彼に訪れるのは平和な未来か、はたまた更なる困難か。 色々と吹っ切れてしまった彼にとってその全てはただ人生の彩りになる、のかも知れない……。 ※この作品はカクヨム様でも掲載しています。

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

処理中です...