68 / 184
ハルシャ公爵領のライズにて
帰着点はいつだって
しおりを挟む
「これをどうぞ。」
執事長さんの手にはいつの間にかたくさんの資料がのってあった。
「…なんですか?これ」
「学院についての資料です。では、夕食のお時間になりましたらお呼びしますのでそれまでおくつろぎください。」
執事長さんは資料を半ば押しつけるように僕に渡すとそのまま出ていった。
僕の部屋には大きなベッドや勉強机はもちろんのこと、訪ねてくることを見越してかコウ達の分の椅子と大きなテーブルが置いてあった。
怪しそうな所はないな…
そう思い机に勉強机の方をチラッと見ると僕の感性に凄く刺さるキレイな花瓶が置いてあった。
その花瓶を見ると何故かわからないが今すぐにでも花瓶の中を確認しなければならない、そうしなければ手遅れになる、そう思った。
自分の直感を信じて花瓶から花を取り出して中を除くと変な石が入ってあった。
手に持っていた花を元に戻し石を机の上に置いてじっくりと観察した。
鑑定
運命の神石(使用済み) 品質:普通
説明:たった1度だけ会いたいと思った人に会える
石。ただし1度使えば使用者は使用時の記憶を
忘れ過去に戻るが、この石はかつての使用者が
再び手に取るまでは使用した場所で待ち続け
る。
所有者:カイ・ハルシャ
使用済み?どう言うことだ?それにカイ・ハルシャって…
未来の自分が使ったということか??
それにしてもなぜ?
石をひっくり返してみると、日本語で
"できる限りのことはした。後はそっちで何とかしてくれ。それと、彼によろしく頼むと伝えて欲しい。"
と書かれてあった。
…いや、彼って誰だよ!!ちゃんとわかるように書けよ、ホント…まあ、わかるように書いたらダメだったんだろうけどね、…だけど、これはないよ
とりあえず、ここからわかることはこの石を使わざるをえない状況に未来の自分が陥ったということ、そして"彼"という人物が何か知っているかも知れないということだ。
"できる限りのことはした"という言い方に少し引っ掛かりを感じる。
僕はこれまでその言葉を1度も使ったことがない。なぜなら自分の本当の力を100パーセント使ったことなど無かったからだ。
僕は自分の力、すなわち頭脳を恐れている。それゆえ本気を出したことは1度もない、というか出せなかった。もし本気を出していたらエレンが倒れることもなかったと言いきれる。
だが、全力を出せば本当の自分は血も涙もない残酷な存在だと周囲にバレてしまう。僕には仲間に"嫌われたくない"という思いから目の前のことから眼を反らす癖がある。それなのに、それなのに、、
僕が本気を出さざるをえない状況とは一体……
そう思って石を魔法鞄の中にそっといれた時、扉がノックされた
扉を開けると少し心配そうな顔をしたイリアスとユウリ、そして何もわかってなさそうなコウとエレンがいた。
「みんなそろってどうしたの?…入る?」
「長話になりそうだからそうさせてもらう。」
「1つ聞いても言いか?今のところカイは貴族になろうと思ってるのか?」
「…あの話しはしたの?」
あの話しとはもちろん赤目のことである。
「ああ。さすがにな…」
「僕が貴族になることの利点は僕ら自身を守ってくれる後ろ楯を得るということだ。逆に欠点は君らとの冒険者ライフを一時中断しなければならないこと。ちなみに僕はこれが2番目に嫌。」
「1番目はなんなん?」
「君たちを、持ってる手札を使わずに死なせてしまうこと、かな。使えるものは使うべきだと思う。」
「でも6年も会われへんねやろ?」
「コウ、ちゃんと話聞いてた?普通の人は、だよ?ちゃんと3年で出ようと思ってる。」
「そんなに授業が簡単そうなのか?」
「いや?まだ資料を見てないからなんとも」
「じゃあみんなで手分けしてまとめようか。」
さすがイリアス、聖人君子とはこのことだ。
ざっとまとめるとこういうことだ。
・学院で学ぶこと
(通常の新入生の場合)
魔法理論
魔法実技
適性に応じて
戦術実技-剣術・弓術・体術
どれか1つ以上
召喚術学-召喚術理論
魔生物学-生物学・植物学
どれか1つ
魔方陣学-魔方陣理論学・魔方陣創造学
歴史学-世界史・国史・庶民学
国史は全員必須
残りは1つ選択
一般教養-美術・音楽・一般作法・帳簿学・馬術
どれか3つ選択
[特殊]
錬金術学・戦闘実技・医学・魔法理論(応用)・法学
から1つ選択
上記の通りに選択し、学期末の試験で一定以上の点数を取らなければ休み返上で補習、学年末の試験だと留年になるらしい。また、総合得点が10位以内に入れば半年ごとにある飛び級試験を受ける資格がもらえる。
・寮について
・アクアマリン寮
・スピネル寮
・タンザナイト寮
・オパール寮
の4つにわかれていて、入学後ランダムで振り分けられる。行事などでは4つの寮で競いあうそうだ。
この学院では貴族と平民が9:1くらいで存在している。平民に対しては当たりが強い奴らがいるらしいが、学院の中では完全なる平等となっている。(本当かは知らないが…)
「こんなもんか?」
「疲れた…無駄に字が多いの本当にやめて欲しい。」
「…カイ、僕らに遠慮するなよ。自分の心に正直に行動してくれ。僕らはカイがどの道を選んだって最後には隣にいるんだから。」
「そっか、、そうだね。君たちが最終的に側にいてくれるならどっちを選んだって」
コンコン
不意に扉がなる。
「どうぞ」
「失礼します。お食事の用意ができました。」
「ああ、今行きます。それじゃあ皆行こうか…」
地に足をつけるといつもより体が軽い気がした。
執事長さんの手にはいつの間にかたくさんの資料がのってあった。
「…なんですか?これ」
「学院についての資料です。では、夕食のお時間になりましたらお呼びしますのでそれまでおくつろぎください。」
執事長さんは資料を半ば押しつけるように僕に渡すとそのまま出ていった。
僕の部屋には大きなベッドや勉強机はもちろんのこと、訪ねてくることを見越してかコウ達の分の椅子と大きなテーブルが置いてあった。
怪しそうな所はないな…
そう思い机に勉強机の方をチラッと見ると僕の感性に凄く刺さるキレイな花瓶が置いてあった。
その花瓶を見ると何故かわからないが今すぐにでも花瓶の中を確認しなければならない、そうしなければ手遅れになる、そう思った。
自分の直感を信じて花瓶から花を取り出して中を除くと変な石が入ってあった。
手に持っていた花を元に戻し石を机の上に置いてじっくりと観察した。
鑑定
運命の神石(使用済み) 品質:普通
説明:たった1度だけ会いたいと思った人に会える
石。ただし1度使えば使用者は使用時の記憶を
忘れ過去に戻るが、この石はかつての使用者が
再び手に取るまでは使用した場所で待ち続け
る。
所有者:カイ・ハルシャ
使用済み?どう言うことだ?それにカイ・ハルシャって…
未来の自分が使ったということか??
それにしてもなぜ?
石をひっくり返してみると、日本語で
"できる限りのことはした。後はそっちで何とかしてくれ。それと、彼によろしく頼むと伝えて欲しい。"
と書かれてあった。
…いや、彼って誰だよ!!ちゃんとわかるように書けよ、ホント…まあ、わかるように書いたらダメだったんだろうけどね、…だけど、これはないよ
とりあえず、ここからわかることはこの石を使わざるをえない状況に未来の自分が陥ったということ、そして"彼"という人物が何か知っているかも知れないということだ。
"できる限りのことはした"という言い方に少し引っ掛かりを感じる。
僕はこれまでその言葉を1度も使ったことがない。なぜなら自分の本当の力を100パーセント使ったことなど無かったからだ。
僕は自分の力、すなわち頭脳を恐れている。それゆえ本気を出したことは1度もない、というか出せなかった。もし本気を出していたらエレンが倒れることもなかったと言いきれる。
だが、全力を出せば本当の自分は血も涙もない残酷な存在だと周囲にバレてしまう。僕には仲間に"嫌われたくない"という思いから目の前のことから眼を反らす癖がある。それなのに、それなのに、、
僕が本気を出さざるをえない状況とは一体……
そう思って石を魔法鞄の中にそっといれた時、扉がノックされた
扉を開けると少し心配そうな顔をしたイリアスとユウリ、そして何もわかってなさそうなコウとエレンがいた。
「みんなそろってどうしたの?…入る?」
「長話になりそうだからそうさせてもらう。」
「1つ聞いても言いか?今のところカイは貴族になろうと思ってるのか?」
「…あの話しはしたの?」
あの話しとはもちろん赤目のことである。
「ああ。さすがにな…」
「僕が貴族になることの利点は僕ら自身を守ってくれる後ろ楯を得るということだ。逆に欠点は君らとの冒険者ライフを一時中断しなければならないこと。ちなみに僕はこれが2番目に嫌。」
「1番目はなんなん?」
「君たちを、持ってる手札を使わずに死なせてしまうこと、かな。使えるものは使うべきだと思う。」
「でも6年も会われへんねやろ?」
「コウ、ちゃんと話聞いてた?普通の人は、だよ?ちゃんと3年で出ようと思ってる。」
「そんなに授業が簡単そうなのか?」
「いや?まだ資料を見てないからなんとも」
「じゃあみんなで手分けしてまとめようか。」
さすがイリアス、聖人君子とはこのことだ。
ざっとまとめるとこういうことだ。
・学院で学ぶこと
(通常の新入生の場合)
魔法理論
魔法実技
適性に応じて
戦術実技-剣術・弓術・体術
どれか1つ以上
召喚術学-召喚術理論
魔生物学-生物学・植物学
どれか1つ
魔方陣学-魔方陣理論学・魔方陣創造学
歴史学-世界史・国史・庶民学
国史は全員必須
残りは1つ選択
一般教養-美術・音楽・一般作法・帳簿学・馬術
どれか3つ選択
[特殊]
錬金術学・戦闘実技・医学・魔法理論(応用)・法学
から1つ選択
上記の通りに選択し、学期末の試験で一定以上の点数を取らなければ休み返上で補習、学年末の試験だと留年になるらしい。また、総合得点が10位以内に入れば半年ごとにある飛び級試験を受ける資格がもらえる。
・寮について
・アクアマリン寮
・スピネル寮
・タンザナイト寮
・オパール寮
の4つにわかれていて、入学後ランダムで振り分けられる。行事などでは4つの寮で競いあうそうだ。
この学院では貴族と平民が9:1くらいで存在している。平民に対しては当たりが強い奴らがいるらしいが、学院の中では完全なる平等となっている。(本当かは知らないが…)
「こんなもんか?」
「疲れた…無駄に字が多いの本当にやめて欲しい。」
「…カイ、僕らに遠慮するなよ。自分の心に正直に行動してくれ。僕らはカイがどの道を選んだって最後には隣にいるんだから。」
「そっか、、そうだね。君たちが最終的に側にいてくれるならどっちを選んだって」
コンコン
不意に扉がなる。
「どうぞ」
「失礼します。お食事の用意ができました。」
「ああ、今行きます。それじゃあ皆行こうか…」
地に足をつけるといつもより体が軽い気がした。
24
お気に入りに追加
66
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
異世界成り上がり物語~転生したけど男?!どう言う事!?~
繭
ファンタジー
高梨洋子(25)は帰り道で車に撥ねられた瞬間、意識は一瞬で別の場所へ…。
見覚えの無い部屋で目が覚め「アレク?!気付いたのか!?」との声に
え?ちょっと待て…さっきまで日本に居たのに…。
確か「死んだ」筈・・・アレクって誰!?
ズキン・・・と頭に痛みが走ると現在と過去の記憶が一気に流れ込み・・・
気付けば異世界のイケメンに転生した彼女。
誰も知らない・・・いや彼の母しか知らない秘密が有った!?
女性の記憶に翻弄されながらも成り上がって行く男性の話
保険でR15
タイトル変更の可能性あり
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
異世界に転生したら?(改)
まさ
ファンタジー
事故で死んでしまった主人公のマサムネ(奥田 政宗)は41歳、独身、彼女無し、最近の楽しみと言えば、従兄弟から借りて読んだラノベにハマり、今ではアパートの部屋に数十冊の『転生』系小説、通称『ラノベ』がところ狭しと重なっていた。
そして今日も残業の帰り道、脳内で転生したら、あーしよ、こーしよと現実逃避よろしくで想像しながら歩いていた。
物語はまさに、その時に起きる!
横断歩道を歩き目的他のアパートまで、もうすぐ、、、だったのに居眠り運転のトラックに轢かれ、意識を失った。
そして再び意識を取り戻した時、目の前に女神がいた。
◇
5年前の作品の改稿板になります。
少し(?)年数があって文章がおかしい所があるかもですが、素人の作品。
生暖かい目で見て下されば幸いです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語
Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。
チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。
その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。
さぁ、どん底から這い上がろうか
そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。
少年は英雄への道を歩き始めるのだった。
※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
刻の短刀クロノダガー ~悪役にされた令嬢の人生を取り戻せ~
玄未マオ
ファンタジー
三名の婚約者候補。
彼らは前の時間軸において、一人は敵、もう一人は彼女のために命を落とした騎士。
そして、最後の一人は前の時間軸では面識すらなかったが、彼女を助けるためにやって来た魂の依り代。
過去の過ちを記憶の隅に押しやり孫の誕生を喜ぶ国王に、かつて地獄へと追いやった公爵令嬢セシルの恨みを語る青年が現れる。
それはかつてセシルを嵌めた自分たち夫婦の息子だった。
非道が明るみになり処刑された王太子妃リジェンナ。
無傷だった自分に『幻の王子』にされた息子が語りかけ、王家の秘術が発動される。
巻き戻りファンタジー。
ヒーローは、ごめん、生きている人間ですらない。
ヒロインは悪役令嬢ポジのセシルお嬢様ではなく、彼女の筆頭侍女のアンジュ。
楽しんでくれたらうれしいです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした
高鉢 健太
ファンタジー
ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。
ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。
もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。
とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい
ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。
強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。
ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
明日を信じて生きていきます~異世界に転生した俺はのんびり暮らします~
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生した主人公は、新たな冒険が待っていることを知りながらも、のんびりとした暮らしを選ぶことに決めました。
彼は明日を信じて、異世界での新しい生活を楽しむ決意を固めました。
最初の仲間たちと共に、未知の地での平穏な冒険が繰り広げられます。
一種の童話感覚で物語は語られます。
童話小説を読む感じで一読頂けると幸いです
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる