異世界で幸せに~運命?そんなものはありません~

存在証明

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ライズまでの道のり

忘れていた1ピース

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洞窟の中をどんどんと進んでいく。

「なんでこの扉からめっちゃなにかが焼け焦げたような匂いがすんねん。カイ、なんかやった……やったんやな?…露骨に眼を反らすなや!」

…だってなんか怒りそうだもん

「…地獄絵図だから見ない方がいいと思うよ」

実際、ほんとうに地獄のような風景になっていることだろう。

「でも敵襲なのにこの部屋に固まっているっていうことは何かあるのかもしれませんよ?」

…確かに

「…あーそれなら僕が始めに見に行くよ。2人はそこで待ってて」

そう言い残し部屋の中にパッと入った。やはり地獄と言って過言ではないくらいの大量の焼けた死体が転がっていた。

だが、酸素がきれて火が消える前に全員死んだわけではなさそうだ。

何人かまだ生きている。

ソイツらは見つけ次第短剣でとどめをさす。

こんなやつらに慈悲なんていらない。…あっ、どうせ放っておいても死にそうだからこのまま苦しんで死なせればよかった…

「酷い匂いだ…」

魔法鞄の中に彼らの骨や死体を出来るだけつめていく。…安心してほしい、それらを入れる鞄は後で焼こうと思っていた魔物の死体を入れる用の鞄だ。食材などと一緒に入れたりはしない。

こんなものか…

ガチャ
「2人とも、もう入っていいよ」


「あれ、なんもおらへんやん!」


「この中に入れたからね」

と言って魔法鞄を叩く。

さすがに子どもに見せるのはどうかと思った僕なりの判断だ。

ちなみにお前も子どもだろ、という野次についてはスルーさせてもらう。

前世を足したら子どもじゃない。

「あれって隠し扉じゃないですか?」

「本当だ…でもどうやって動かすんだろ…」

パッと見ただの壁のように見えるが少し柄がずれている。恐らく火に焦って誰かがずらしてしまったのだろう。
その場所を押すと想像していたのよりも整然としていてまるで倉庫のようだった。

「それじゃあ物色しますか!」

目を輝かせているのは僕だけじゃないと信じたい。

「待て待て待て!カイはここおってな!!」


「なんで?僕も漁りたいんだけど」


「カイの別荘で地下倉庫を整理した時のことを忘れたとは言わせへんで?カイは鑑定係として真ん中におって。そんじゃあ右から見よか、俺はユウリの手が届かなさそうな所から見ていくからユウリは下から見ていってな」

僕が反論を言う前にコウがてきぱきと指示を出してしまった。…イリアスを置いていったのは失敗だったか…






鑑定!
キャットシーの爪 品質:良

説明:結構高価な代物。使い方は多種多様で武器にも使えるしポーションにも使える。


エメラルドの首飾り 品質:良

説明:とあるご婦人の装飾品。めっちゃ高い


人間の頭蓋骨 品質:良

説明:スケルトンになる前に解体しよう
    
          ・
          ・
          ・

「ろくなものがないね。」

少しがっかりして近くの壁にもたれるその壁がグルンと回転した。

「うわっ……何ここ」

僕の目の前には大きな卵が1つ置かれてあった。

「カイ!大丈夫か?」


「うん。今のところは…」

そう言って卵を両手で抱えながら扉をぐるっと回転させてコウ達の元へ戻った。

「何その卵」

「美味しそうだと思って持ってきたんだけど、これ調理できそう?」

卵焼きに目玉焼き、たまごかけご飯、、ああ、お腹空いてきたな…

「それ食べる気なん?」


「え、逆にそれ以外の用途があるの?」


「孵化させることに成功したら有能な魔物が出てくるかもしれませんよ。」


「…それもそうだね、じゃあ食べないでおいとくよ。」

ユウリがそういうなら仕方がない。今回は我慢しよう。

「…俺だけやったらもっと粘ってたやろうにな。ユウリの言うことは聞くんやから、まったくホンマに…ハァー」

というコウの独り言は無視してイリアスとエレンが待っている場所に軽い足どりで向かった。













「これはなんの卵なんだ?」

やっぱりイリアスも分からないか…

「さぁ?卵に関しては専門外なんでね」


「卵なら兄さんが詳しいですよ。」


「そうなんや、じゃあ起きたら聞いてみよか。イリアス、エレンはまだ起きなさそう?」


「いや、もうすぐ起きると思う。傷はもう治ってるから今夜中には目を覚ますとふんでる。」


「そっかぁ、よかったやんユウリ!」


「はい、何から何までありがとうございます!」


「いや、いいんだよ。助けたおかげで良いことがあったから。」



怒りという感情を思い出させてくれてありがとう


とは口にはしないものの少し頬を緩ませてユウリの眼を見た。



感情が増えていく。全て戻ったらどんなに良いことだろうか


こんなこと彼らには絶対に言えないな

そう思って少し眼を細めて目の前のシアワセを噛みしめることにした。
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