上 下
64 / 145
ライズまでの道のり

開けてはならないパンドラの箱

しおりを挟む
作戦はこうだ。

まずウィンに頼んで僕が持ってきたボスの首をアジトの前に落してもらう。大騒ぎになるだろうからその隙に小さくなったルーンが近づいても気づかないはずだ。次にルーンがギリギリまで近づいたと思ったら即座に巨大化する。そしてルーンの姿を盾に僕らも近づく。
まずユウリの手のみを影に取り込んで、例の睡眠薬を6個中4個使い満遍なく影の中に流し込む。
昨日実験したためルーンに影響がないことは把握済みだ。
そして外にいる奴らからどんどん影に吸い込ませては寝かせて影から追い出す、以下エンドレスだ。

この作戦の弱点は影の中にいない魔術師がルーンに向かって魔法を放つことだ。
まだ成体でないルーンはそこまで強いわけじゃない。専門職に魔法を撃たれたらどうなるかは自明の理だ。そうならないように上手く動かないといけない。
それに僕は……


「それじゃあルーン、出番だよ。」


「ワフ!!」

任せておけと言わんばかりに颯爽と草むらを離れていく。

30秒程経ちルーンが巨大化する。

「それじゃあ行こう」

ちなみにイリアスはここにはいない。エレンを見る人間がいないとかなり問題だし容態が悪化した時に何とか出来るかもしれないのはイリアスだけだからだ。

僕の予想通り盗賊達は固まって集団でいた。

「コソッ)ユウリ」

「コソッ)了解です」

ユウリとコウは眠らせた盗賊の始末とルーンの護衛のためここに残し、僕は洞窟の中に1人で入った。

隠密スキルとこの大騒ぎのお陰で僕がこっそりアジトに入ってきているということはまだ気づかれていない。

ここら辺か…。横にご丁寧に置かれてある松明を1つ手に取る。

そして反対側の手で魔法鞄の中に手を突っ込み油をとりだす。

僕が何をしたいか分かった者も少なくないはすだ。

僕は奥の部屋に向かっておもいっきり投げてビンを割った。

「な、なんだお前は!」

そう叫ぶ者もいたが…

「もう遅いよ…」

そう言って松明を投げつける。

部屋の中がしきりに燃えていることを確認して石でできた扉を閉める。

「こんな感情はレイが死んだ時以来だ。忘れていたよ……確かに僕は今怒っているんだ。」

この扉の向こうには10数人の人がいる。日本でやったら大問題だけどこの世界では逆に誉められる行為だ。今は思えば生まれてくる世界を間違えたのだろう。あの世界の常識から考えたら僕の倫理観は欠如しているのだろうがそれでいい、それでいいのだ。

フッと笑って扉に向かって小さくあっかんべーをしてルーンの元へ戻る。

油を撒いたんだ、普通の水魔法じゃ止められないよ。

僕をここまで怒らせたんだ。死の覚悟を持ってもらわないとね!

途中ですれ違う盗賊を後ろから襲う。


「グワッ」

気が動転してるからって雑魚すぎやしないか?いや、それとも僕が強いのか…?

途中で違う部屋を見つけては睡眠薬を放り込んでいく。

なぜかって?動物がいたからね。僕、動物には優しいんだ。

それに、木の扉だったし…

「おーい、カイ!そっちは大丈夫そうか?」


「問題ないよ。そっちこそ大丈夫?」


「ああ、なんとかな煙玉と麻痺玉を全部使ってしまったけど全員やっつけたで!」


ざっと見ただけでも15人程死んでいる。地獄絵図とはこの事かな?

「ユウリの溜飲が少し下がってくれたらいいけど…」


「もう、大丈夫です。協力してくださってありがとうございます。」

そう言ってユウリはペコリとお辞儀をする。

「いいんだ、気にしないで。それじゃあ2人とも中に入ろうか」

そう言ってアジトの方へと進もうと足を向ける。

「えっ、中に入るん?」

えっ、入らないつもりなの?

「そらそうでしょ、お宝があるかも…?」


「はぁ…まぁエエけど残党おっても知らんで?」


「大丈夫。絶対にいないから。」

眠ってるし死んでるし大丈夫大丈夫

「その自信はどっから来んねん…」

それから僕は呆れたような顔をしたコウとユウリを無理やり引き連れて洞窟の中に入った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界サバイバルセットでダンジョン無双。精霊樹復活に貢献します。

karashima_s
ファンタジー
 地球にダンジョンが出来て10年。 その当時は、世界中が混乱したけれど、今ではすでに日常となっていたりする。  ダンジョンに巣くう魔物は、ダンジョン外にでる事はなく、浅い階層であれば、魔物を倒すと、魔石を手に入れる事が出来、その魔石は再生可能エネルギーとして利用できる事が解ると、各国は、こぞってダンジョン探索を行うようになった。 ダンジョンでは魔石だけでなく、傷や病気を癒す貴重なアイテム等をドロップしたり、また、稀に宝箱と呼ばれる箱から、後発的に付与できる様々な魔法やスキルを覚える事が出来る魔法書やスキルオーブと呼ばれる物等も手に入ったりする。  当時は、危険だとして制限されていたダンジョン探索も、今では門戸も広がり、適正があると判断された者は、ある程度の教習を受けた後、試験に合格すると認定を与えられ、探索者(シーカー)として認められるようになっていた。  運転免許のように、学校や教習所ができ、人気の職業の一つになっていたりするのだ。  新田 蓮(あらた れん)もその一人である。  高校を出て、別にやりたい事もなく、他人との関わりが嫌いだった事で会社勤めもきつそうだと判断、高校在学中からシーカー免許教習所に通い、卒業と同時にシーカーデビューをする。そして、浅い階層で、低級モンスターを狩って、安全第一で日々の糧を細々得ては、その収入で気楽に生きる生活を送っていた。 そんなある日、ダンジョン内でスキルオーブをゲットする。手に入れたオーブは『XXXサバイバルセット』。 ほんの0.00001パーセントの確実でユニークスキルがドロップする事がある。今回、それだったら、数億の価値だ。それを売り払えば、悠々自適に生きて行けるんじゃねぇー?と大喜びした蓮だったが、なんと難儀な連中に見られて絡まれてしまった。 必死で逃げる算段を考えていた時、爆音と共に、大きな揺れが襲ってきて、足元が崩れて。 落ちた。 落ちる!と思ったとたん、思わず、持っていたオーブを強く握ってしまったのだ。 落ちながら、蓮の頭の中に声が響く。 「XXXサバイバルセットが使用されました…。」 そして落ちた所が…。

誰も要らないなら僕が貰いますが、よろしいでしょうか?

伊東 丘多
ファンタジー
ジャストキルでしか、手に入らないレアな石を取るために冒険します 小さな少年が、独自の方法でスキルアップをして強くなっていく。 そして、田舎の町から王都へ向かいます 登場人物の名前と色 グラン デディーリエ(義母の名字) 8才 若草色の髪 ブルーグリーンの目 アルフ 実父 アダマス 母 エンジュ ミライト 13才 グランの義理姉 桃色の髪 ブルーの瞳 ユーディア ミライト 17才 グランの義理姉 濃い赤紫の髪 ブルーの瞳 コンティ ミライト 7才 グランの義理の弟 フォンシル コンドーラル ベージュ 11才皇太子 ピーター サイマルト 近衛兵 皇太子付き アダマゼイン 魔王 目が透明 ガーゼル 魔王の側近 女の子 ジャスパー フロー  食堂宿の人 宝石の名前関係をもじってます。 色とかもあわせて。

異世界転生ファミリー

くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?! 辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。 アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。 アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。 長男のナイトはクールで賢い美少年。 ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。 何の不思議もない家族と思われたが…… 彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

幼少期に溜め込んだ魔力で、一生のんびり暮らしたいと思います。~こう見えて、迷宮育ちの村人です~

月並 瑠花
ファンタジー
※ファンタジー大賞に微力ながら参加させていただいております。応援のほど、よろしくお願いします。 「出て行けっ! この家にお前の居場所はない!」――父にそう告げられ、家を追い出された澪は、一人途方に暮れていた。 そんな時、幻聴が頭の中に聞こえてくる。 『秋篠澪。お前は人生をリセットしたいか?』。澪は迷いを一切見せることなく、答えてしまった――「やり直したい」と。 その瞬間、トラックに引かれた澪は異世界へと飛ばされることになった。 スキル『倉庫(アイテムボックス)』を与えられた澪は、一人でのんびり二度目の人生を過ごすことにした。だが転生直後、レイは騎士によって迷宮へ落とされる。 ※2018.10.31 hotランキング一位をいただきました。(11/1と11/2、続けて一位でした。ありがとうございます。) ※2018.11.12 ブクマ3800達成。ありがとうございます。

魔力∞を魔力0と勘違いされて追放されました

紗南
ファンタジー
異世界に神の加護をもらって転生した。5歳で前世の記憶を取り戻して洗礼をしたら魔力が∞と記載されてた。異世界にはない記号のためか魔力0と判断され公爵家を追放される。 国2つ跨いだところで冒険者登録して成り上がっていくお話です 更新は1週間に1度くらいのペースになります。 何度か確認はしてますが誤字脱字があるかと思います。 自己満足作品ですので技量は全くありません。その辺り覚悟してお読みくださいm(*_ _)m

収納持ちのコレクターは、仲間と幸せに暮らしたい。~スキルがなくて追放された自称「か弱い女の子」の元辺境伯令嬢。実は無自覚チートで世界最強⁉~

SHEILA
ファンタジー
生まれた時から、両親に嫌われていた。 物心ついた時には、毎日両親から暴力を受けていた。 4年後に生まれた妹は、生まれた時から、両親に可愛がられた。 そして、物心ついた妹からも、虐めや暴力を受けるようになった。 現代日本では考えられないような環境で育った私は、ある日妹に殺され、<選択の間>に呼ばれた。 異世界の創造神に、地球の輪廻の輪に戻るか異世界に転生するかを選べると言われ、迷わず転生することを選んだ。 けれど、転生先でも両親に愛されることはなくて…… お読みいただきありがとうございます。 のんびり不定期更新です。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

おいでませ異世界!アラフォーのオッサンが異世界の主神の気まぐれで異世界へ。

ゴンべえ
ファンタジー
独身生活を謳歌していた井手口孝介は異世界の主神リュシーファの出来心で個人的に恥ずかしい死を遂げた。 全面的な非を認めて謝罪するリュシーファによって異世界転生したエルロンド(井手口孝介)は伯爵家の五男として生まれ変わる。 もちろん負い目を感じるリュシーファに様々な要求を通した上で。 貴族に転生した井手口孝介はエルロンドとして新たな人生を歩み、現代の知識を用いて異世界に様々な改革をもたらす!かもしれない。 思いつきで適当に書いてます。 不定期更新です。

処理中です...