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ライズまでの道のり

この世界で生き抜くために

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「そんな、、なんで、父さんが、、なんで、、なんで殺されなければならないんだ…ウワァァァ、、許さない、絶対に、、許さない!!!」

そう叫ぶ彼にかけられる言葉は何もなかった。


僕らは少し離れて彼が落ち着くのを待った。


「…取り乱してすまなかった」

そう言う彼の瞳にはもう涙はなかった。エレンにとって最も最優先にしないといけないのは弟の奪回、だろうからな。悲しむ暇もないなんて残酷なことだ。

「いや、構へんで。誰だって家族が死ぬんは辛いからな。」

コウはどこか悲しそうな眼をしてそう言った。

「…賽は投げられたな。」

思わず口にだしてしまったのは昔の口癖だった。

「なんだ、それ?」


「もう後戻りはできないということだよ。僕らでエレンの弟を助けだして盗賊どもをぶち殺す。異論がある人、いる?」

そう口にだして思った。

「殺すって、、犯罪にはならんの?」


「盗賊には何をしても正当防衛が通じるからね。それじゃあエレン、お前はどうする?」


「もちろん、お前についていく。」

そう言ったエレンの眼は強い殺気を帯びていた。



そう、いつかは腹をくくろうと思っていた。人殺しにかわりはないが、この世界では日常茶飯事で命のやり取りが起っている。
そろそろ覚悟を決めるときだ











???視点

玉座よりも豪華な椅子に座っているのは黒髪黒眼で20台前半の顔つきをした男。

その男に跪くのはハールーン帝国の王を始めとしたハールーン帝国の貴族多数。

男は跪く彼らを虫けらを見るかのようになんの感情もない瞳で見た。

「%#$@$様、これからどういたしましょう」

帝国の王がそう怯えながら言う。

「ソイツはとんでもなく頭がいい。俺と同じくらいといっても過言ではないだろう。殺るなら早めのうちがいい。タイミングを逃すと痛い目を見るどころかこちらが殺られる可能性がある。そろそろ俺の存在にも気ずくだろう。どんな手を使ってもいい、その前になんとしてでもカイ・フォードの息の根を止めろ」


「御意。…そ、それではあの薬は」

その一言で跪いている連中がざわつき始める

「薬中毒者が…」

そう吐き捨てて男は彼らに向かって薬を投げた。

男の眼には何も写っていない。そう、何も。感情があるのかすらもわからない上、圧倒的な魔力を保有しているこの男に周りの人々は恐怖するしかなかった。

男は薬に飛びつく人々を横目に部屋を出た。

そして自分の寝室にある窓から外を眺めた。

「孤独なものだな。あっちの世界でもそうだったが異世界に来てもなお孤独だなんて笑えないな。
…本当に人間は愚かだ。ゆえに世界に存在してはならない。だからこの世界にされたのはこの世から人間を消すために違いないのだろう。…約束は守った、これでいいんだよな?…はぁ…しょうもない。
……賽は投げられた、俺が俺であるためにはアイツの言った通りにするしかないんだ」

そう呟いた彼の黒い瞳は冷たい殺意を纏っていた。

「カイ・フォードか…。そろそろ始めないとな」

そう言って男は机にあったチェスの駒のキングをつかんで粉々にしてしまった。

「やはり時間が足りないな…あーしてこーして、、いや、ダメだな。それじゃあ面白くない。出会いは感動的でないと。うーん、これは時期的に遅いか…ああ、じゃああれはどうだろうか、、時期的にもぴったしだな。うん、これだ、これ。なんで思いつかなかったんだ。バカか俺は...」

男はそう言ってまだ潰されていない方のキングを掴み、チェスの駒であるルークの隣にそっと置いたのだった。

その周りを金色の蝶が飛びまわっていたが、そのことを男が気づく様子はまったくなかった。
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