異世界で幸せに~運命?そんなものはありません~

存在証明

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ライズまでの道のり

人間という愚かな生き物

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翌朝

「それじゃあ手分けして探そうか。とりあえず、コウとエレン、僕とイリアスでわかれて探そうと思ってるけど異論ある人いる?」

僕とエレンのペアにすればコウが反対するかもしれないし、エレンがどのくらい戦えるかわからないのでイリアスと一緒にすることもしたくない、と考えた結果こうなった。

「別にかまへんで」


「僕もそれで構わない」


「俺も構わないが見つけた時の連絡方法はどうするんだ?」

精霊のことは言わない方がいいだろう。ちょっとぼかすか…

「何か分かったらイリアスの友達のウィンをそっちに派遣するから大丈夫。何かなくても定期的にそっちに行かせるからコウ達はそのときに現状の報告をして」

と、深くは聞くなというオーラをだしつつ答える。

「わかった、それじゃあ俺らはこっちの方へ行くわ」

そう言ってコウはエレンを連れて森の中に入っていった。


「カイ、僕らはどっちに……何してるんだ?」

イリアスの眼には僕が寝そべってサボっているようにしか見えないだろう、まあ実際サボってるんだが…

「うーんっと、天啓待ち、かな?」

そう曖昧に答える。

「全く…サボるためにコウと別れたのか?」

イリアスは少し呆れながら僕の顔を覗き込む。

「違うよ。僕がエレンを信用してないからさ。」


そう言うとイリアスは、はぁーっとタメ息をついた。

それを横目に見ながらエレンの家族を効率よく探す方法を考える。

エレンはここに来るまでに5時間かかったと言っていたからな…それにまっすぐ進んだとも…

図式するとこんな感じだ。

    ?
    ↑
    ↑
    弟
盗賊  父→→→?
    エレン
    ↓
    ↓
    ↓
   今ココ


彼の言い分かつ本当にまっすぐに進んだとするとこうなる。
そうなればエレンとコウが進んでいった先が盗賊との遭遇地点であると考えた方が都合がいい。

だが現実は違う。人間はまっすぐに進んだと思っていても徐々に左に進んでいることが多いことが証明されている。
だから同じ場所をぐるぐる回っているだけだったなんてことが起るのだ。

「それじゃあ僕らもいこうか」

そう言って立ち上がって彼らとは別の方に歩く。


「コウ達よりも速く見つけないとね。」


「なんでだ?」


「そりゃあ、彼の父親はもう死んでるからだよ。直接見つけるよりも、心構えをした後に現実を見る方がましだからね。」


「…そうか。場所はわかるのか?」

イリアスはが少し悲しげにうつむく。

「何となく。…ねぇ、イリアス。コウの周りで赤い蝶を見たことある?」

神殿で過ごしていた彼なら何か分かるかもしれない。

「赤い蝶?いや、ないな。蝶と言えば神々のしもべである天使の姿が蝶に見えるらしい。カイの言う赤い蝶は愛と運命の神セレネ様の使徒、復讐の天使と慈悲の天使がこの世に降りてくる時の仮初めの姿と言われている。」

復讐の天使、か…確かコウは加護を持っていたな...

「ふーん、それならあんまり気にしなくていいか…」

それじゃあ昨日見たのはその天使だったのかもしれないが、確認する術がないため頭の片隅へと追い出した。

--------------------------------------------------------------------------------------------------

数時間後


「イリアス、これって」


「、、ああ、そうだな」

僕らの前には無惨にも体を刺されて死んでいる獣人の男の死体があった。


僕の推理が間違っていたことは今まで一度もない。そしてこの日初めて間違っていて欲しかったと、そう思った。

ウィンをコウ達の元に送るイリアスを見ながら、今までにないぐらいの激しい嫌悪感を覚えた。

それが、昔レイを亡くした時の状況と少し似ていたからなのかは自分にもよくわからなかった。

ただ、私利私欲のために誰かにとって大切な人をそれも罪のない人を簡単に殺してしまう人間という生物に失望したのは確かだろう。

自分はそうはなりたくない、そう思って彼らの到着を待った。
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