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カイの過去
目覚め
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僕は暗闇の中を彷徨っていた。何時間、いや、何日彷徨っているのかわからない。時間の感覚がなかった。ただ、長い夢を見ていたようだ。過去を振り返ってみて、というか過去を追体験したといった方が正確だろう、僕の中の時計の針が止まっていたことに気づいた。
動いていたようで止まっていた。まるで砂時計のようにひっくり返して誤魔化していたようだ。
ただ、今の僕は少しずつだけれど時計の秒針が動いていた。過去から抜け出し、ぼぉーっとしながら暗闇の中で闇雲に歩いていると微かに音が聞こえた。
……イ、……イ、…カ………、…カイ、カイ!
どんどんはっきり聞こえてきて、僕の名前を呼んでいるのに気づいた。
カイ、早よ起きてや…
カイ、頑張って!
そういった戦友達の声が僕に力をくれた。
暗闇の中から微かに見えた光を追いかけるために、僕は足を速めた。
瞼を開けると見知った顔が僕を覗き込んでいるのが見えた。眼が2人とも赤くなっていた。僕が目を覚ましたのに気づいたのか、安心したような顔をした。
「カイ!良かった、ヴォルガさん、カイが眼を覚ました!!」
「遅いよ、、、カイ…。3日も昏睡状態だったんだぞ?…眼を覚まして良かった…」
2人の眼からはとめどなく涙が溢れだしていたが、2人とも嬉しそうに笑っていた。
人間の眼からは悲しさ以外で涙が出るなんて知らなかった。
「2人とも落ち着け。カイ、ここがどこか分かるか?」
「さぁ?病院には見えないけど…。ああ、もしかしてヴォルガさんの家?」
「……うん。頭にも問題はなさそうだ。いつも以上に冴えてる気がする。爆発に巻き込まれたのは覚えているか?」
「うん。その時に変な人に話しかけられたんだ。」
「変な人?」
「全身黒くて僕がカイ・フォードであることを知っていた。そして、厄介な奴に目をつけられているって言ってたよ。」
赤目の話は言う必要ないか…。僕から離れることはないし…
「ちょっと待て!!おまっ、お前はフォード卿の子息なのか?!」
「???」
「なんでそれがどうした?みたいな顔してんだよ!!…ああ、良かった。本当に俺の家に匿って良かった。」
「フォード家ってそんなに有名なん?」
「ああ。隣国、ハールーン帝国のパトロンと呼ばれるほどの金持ちだよ。貴族ではないが家名を持つことを許されていてハールーン帝国では公爵位の扱いを受ける。だが、この前のフィレンのスタンピードで長男以外亡くなったから、ハールーン帝国の王はおそらくその長男を探している。ため口だったなんて後でばれたら俺は多分殺されると思う。」
「そんなに心配しなくていいよ。王様の本命は僕じゃなさそうだし。莫大な資産のほとんどは王様に持っていかれたと思うけど、鍵の魔道具の主人が僕である限り各地域にある家とかは僕の物だし、生きている僕が貰った母の資産とかはさすがに王様も持っていけない。ああ、それとヴォルガさん、王様はこの前の事件に関与している可能性がある。捜査には気をつけた方がいい。下手に動くと暗殺されるよ。」
「まじかよ……。それで、お前らはこれからどうするんだ?」
「取り敢えず、アルクィンから離れようと思う。もっとハールーン帝国から遠ざからないいけないからね。ひとまず、シェナード王国の中心地ルーヴルに行こうと思ってる。」
「それなら、その途中の道に冒険者ギルドがいくつかあるからそこでDランクまであげた方がいい。ルーヴルにはダンジョンがあるがDランクからしか入れないんだ。たしか、お前らはFランクだったよな?Eランクまでならすぐに上がるはずだ。Dランクからは対人戦の試験があるから気をつけろよ。そんじゃあ、あと数日はここで休んでいけ。俺は今から仕事に戻るがちゃんと休んどけよ。」
と言って出ていった。
そして、コウとイリアスの方を向くと2人とも僕のベッドを枕にして眠っていた。もしかしたらこの3日間寝ずに僕を診ていたのかもしれない。
そう思って2人を自分が寝ていたベッドに乗せてあげた。
窓から見た景色は何時もよりも輝いて見えた。
「…そうか、レイ。君が僕に過去と向き合う時間をくれたんだね。…ありがとう」
僕はあるものを握りしめながらそう言った。
呟いた声は星の輝く夜空に消えていったのだった。
動いていたようで止まっていた。まるで砂時計のようにひっくり返して誤魔化していたようだ。
ただ、今の僕は少しずつだけれど時計の秒針が動いていた。過去から抜け出し、ぼぉーっとしながら暗闇の中で闇雲に歩いていると微かに音が聞こえた。
……イ、……イ、…カ………、…カイ、カイ!
どんどんはっきり聞こえてきて、僕の名前を呼んでいるのに気づいた。
カイ、早よ起きてや…
カイ、頑張って!
そういった戦友達の声が僕に力をくれた。
暗闇の中から微かに見えた光を追いかけるために、僕は足を速めた。
瞼を開けると見知った顔が僕を覗き込んでいるのが見えた。眼が2人とも赤くなっていた。僕が目を覚ましたのに気づいたのか、安心したような顔をした。
「カイ!良かった、ヴォルガさん、カイが眼を覚ました!!」
「遅いよ、、、カイ…。3日も昏睡状態だったんだぞ?…眼を覚まして良かった…」
2人の眼からはとめどなく涙が溢れだしていたが、2人とも嬉しそうに笑っていた。
人間の眼からは悲しさ以外で涙が出るなんて知らなかった。
「2人とも落ち着け。カイ、ここがどこか分かるか?」
「さぁ?病院には見えないけど…。ああ、もしかしてヴォルガさんの家?」
「……うん。頭にも問題はなさそうだ。いつも以上に冴えてる気がする。爆発に巻き込まれたのは覚えているか?」
「うん。その時に変な人に話しかけられたんだ。」
「変な人?」
「全身黒くて僕がカイ・フォードであることを知っていた。そして、厄介な奴に目をつけられているって言ってたよ。」
赤目の話は言う必要ないか…。僕から離れることはないし…
「ちょっと待て!!おまっ、お前はフォード卿の子息なのか?!」
「???」
「なんでそれがどうした?みたいな顔してんだよ!!…ああ、良かった。本当に俺の家に匿って良かった。」
「フォード家ってそんなに有名なん?」
「ああ。隣国、ハールーン帝国のパトロンと呼ばれるほどの金持ちだよ。貴族ではないが家名を持つことを許されていてハールーン帝国では公爵位の扱いを受ける。だが、この前のフィレンのスタンピードで長男以外亡くなったから、ハールーン帝国の王はおそらくその長男を探している。ため口だったなんて後でばれたら俺は多分殺されると思う。」
「そんなに心配しなくていいよ。王様の本命は僕じゃなさそうだし。莫大な資産のほとんどは王様に持っていかれたと思うけど、鍵の魔道具の主人が僕である限り各地域にある家とかは僕の物だし、生きている僕が貰った母の資産とかはさすがに王様も持っていけない。ああ、それとヴォルガさん、王様はこの前の事件に関与している可能性がある。捜査には気をつけた方がいい。下手に動くと暗殺されるよ。」
「まじかよ……。それで、お前らはこれからどうするんだ?」
「取り敢えず、アルクィンから離れようと思う。もっとハールーン帝国から遠ざからないいけないからね。ひとまず、シェナード王国の中心地ルーヴルに行こうと思ってる。」
「それなら、その途中の道に冒険者ギルドがいくつかあるからそこでDランクまであげた方がいい。ルーヴルにはダンジョンがあるがDランクからしか入れないんだ。たしか、お前らはFランクだったよな?Eランクまでならすぐに上がるはずだ。Dランクからは対人戦の試験があるから気をつけろよ。そんじゃあ、あと数日はここで休んでいけ。俺は今から仕事に戻るがちゃんと休んどけよ。」
と言って出ていった。
そして、コウとイリアスの方を向くと2人とも僕のベッドを枕にして眠っていた。もしかしたらこの3日間寝ずに僕を診ていたのかもしれない。
そう思って2人を自分が寝ていたベッドに乗せてあげた。
窓から見た景色は何時もよりも輝いて見えた。
「…そうか、レイ。君が僕に過去と向き合う時間をくれたんだね。…ありがとう」
僕はあるものを握りしめながらそう言った。
呟いた声は星の輝く夜空に消えていったのだった。
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