異世界で幸せに~運命?そんなものはありません~

存在証明

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冒険者の街アルクィンにて

思い

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目の前には黒い車にぶつかる自分がいた。

運転手は眠っていない。ぼやけて見える顔からは眼を見開いて驚いていることが分かった。まるで僕のことを知ってるかのように…

そしてはね飛ばされて地面に叩きつけられた僕は心底嬉しそうに笑っていた

夢、いや夢というものでは収まらないほど奇妙な体験だった。

これは一体何なのか、今の僕には到底分かるはずもなかった。




















「カーイ、何してるん?」


「…………」

なんかコウの声が聞こえたような…?

「おーい、」

ホントに呼んでた…ちょうどいい…

「コウさぁ、ちょっと的になってくれない?」


「どゆこと?詳しく言って?」


「止まってる的には百発百中で当たるから動いてる的で練習したくて…。ルーンは嫌がられたからコウでやろうかなって」

そう、ルーンに言ったら狸寝入りされたのだ

「いや、俺も嫌やで!?てか俺ルーンの下なん?!」

どういう意味なのかよく分からない。上とか下とか別にないのだから。

「えー、でも避けれるでしょ?それに本物じゃなくて刃の部分が木製のナイフでやるよ?」


「そういう問題やなくてな、」

ジーッとコウの方を見続けると

「…………分かった、分かったからその顔やめんかい!俺がその顔に弱いんわかっててやってるやろ!」


うん、もちろんと思いながらもシラーっとしておく。


「ほんま怖いわ。でもカイ、このままは嫌やからちょっと待っといて」


そう言ってどこかに行ってしまった

















遅い、なにしてんのコウ?

ばたーっと庭で寝ころがってもう30分

そろそろ来てもいい頃だ

その時ガチャっと扉が開いてコウが顔を出した

「あ、カイ。待たせたな。」


「ほんとだよ~、てっ、何それ?」

コウの額と頭の後ろ、そして心臓付近とその後ろに木を輪切りにしたようなものがつけられていた


「カイ、ええか?この木の部分に当てるんやで?それ以外はアカン、痛いから。木の部分に当てたら3点、他の場所に当てたら-5点やからな。」


「時間制限は?」


「じゃあとりあえず5分ぐらいでどうや?」


「OK!」


「よし、準備はええか?そんじゃあよーいスタート!」

と言った瞬間コウはクルリと背を向けて全速力で走り出した。

まずはコウの動きを観察する。

木のナイフは合計3本。なぜそれがあるかというと、ナイフを買ったときにおまけとして入っていたのだ。

中にメッセージが入っていてそこには『それは弟子が作った試作品だから持ってけ』と書かれてあった。

と言うことで、使わせてもらうよ!まずは面積の大きい背中を狙おう

シュッとナイフを投げると同時にコウが右に曲がったのであらぬ方に飛んでいった

「クッソー、何でそこで曲がるの?!」

「こっちも一生懸命ってことや!」





















5分後
結果は-47点。察している人もいるだろうが木の部分に当たったのは1回だけだった。しかも最後の。

「あぁー疲れた。」


「いや、俺の方が疲れるとるよ?…ほんま、感謝しぃや?10回も俺に当てよってからに…」


「うん、ありがとう。じゃあもう1戦やろうか」


「いや、終わる流れやったやん!」













































僕はコウに会ってからたまにふと思うことがある。僕はなぜ2回目の人生を与えられたのか、僕はなぜこんなにも生きることに執着していないのか、その答えはいつ見つかるのか…

コウに会うまで、僕の中の時計の針は止まったままだった。生きる希望を見いだせずなんとなく本を読んで生きている毎日で、前世と何ら変わらない生活を送っていた。

ただ1つだけ、たった1つだけだけど、前世と違うことがあった。
前世の自分ならコウやイリアスとパーティーを組んでなかっただろう。それどころか、スタンピードの時に死んでいたはずだ。

前世て苦しんだ原因の1つだった『賢いこと』が今では自分や仲間を守るために活かされている。仲間のために自分の能力を目一杯使えるのは本当に素晴らしいことだ。

僕の仲間は訳ありだらけでとくに赤い眼は一番厄介だ。早々に赤い眼を狙う組織を潰さなければならない。だが、僕にはそんな力はない。だからこの頭
をフル活用させてもらう。

僕が直接手を下さなくても勝手に内側から崩れて潰す、つまり『戦わずして勝つ』。これが一番良い方法だ。

だが、今持っている情報だけではこの先それができる確率は0に近い。

それでも、僕が持っているすべての手札を使ったとしても絶対にコウとイリアスだけは助けて見せる。

そう心に決めて眼を閉じると夜空の下懐かしい声が聞こえたような気がした。
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