異世界転生でハーレムを!…胃薬飲んだら最終兵器になっちゃいました

小鳥遊よもぎ

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一章 兵器化編

約10話 飯とドルクの映像記録

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部屋に入ると、そこはこれまでの場所とは違い、個人の部屋のようだった。あんまり広くないし、光源が机上ライトしかなくて少し薄暗い。

部屋の奥には古くさい机があり、その上に数個のビンと数枚の紙が置いてある。所々に小説っぽい物や食べ物のゴミが捨ててあって、妙に生活感があった。

布団が敷いてあるあたり、ここの科学者はこの研究所で寝泊まりしていたようだ。…いや、ただ仮眠を取っていただけかもしれないけど。

そして部屋の隅には、さっき見飽きるほど見た魔法陣付きコンテナが三つほど積まれていた。


俺はまず、さっそくコンテナに駆け寄る。

そして一番上のやつを開けると……水がギッシリ入っていた。


「おいおいおい!これはビンゴじゃないか?」


俺は水の入ったコンテナをどかし、二つ目を開けると……包帯やガーゼ、消毒液などの応急用医療品が入っていた。

俺は無言でコンテナをどかし、最後のコンテナを開ける。


(頼む…食い物であってくれっ…!)


中を覗くとそこには─


「干し肉…か…?」


干し肉やドライフルーツ等の携帯食料が大量に詰め込まれていた。


「よっしゃ!俺は信じてたぜ科学者よ!」


魔力?のおかげで体力は戻ったものの、ずっと腹は減っていたのだ。さっそく干し肉をひとつ取りだして封を切る。

久しぶりの飯だ!心して食さねば!海音は干し肉にかぶり付き─


「かたっ!?」


肉がカチカチで、文字通り歯が立たなかった。当然だ。携帯干し肉なんだから硬いに決まっている。

いったん仕切り直して、今度は少しずつ犬歯で噛みきる。

うん、うまいな。めちゃくちゃ硬いけど噛めば噛むほど味が染み出てくる。肉食ってるのに、なんかチューインガム系統のお菓子でも食べてる気分だ。


「いくらでも食べられそうだな、これ。」

俺はしばらく干し肉を堪能した後、デザートにとドライフルーツに手を伸ばす。


いろんな種類があるな。ブルーベリーのような粒状ものや、マンゴーのような色合いの果実類、真っ赤なよくわからないフルーツまで様々なイラストがパッケージ描かれている。

俺は一番手頃に食べられそうな粒状のものを手に取り、封を切った。


「…ん、臭いもまんまブルーベリーだな。」

海音はブルーベリー?を口に運んだ。





念願の食事を終えた海音は、ニヤニヤしながら携帯食料を近くにあった袋に詰めていた。

もしかして食べ物が無いかも…とか、あったとしてもマズかったらどうしよう…とか不安になっていた矢先、美味しい食べ物をたくさん見つけたのだ。加えてお持ち帰りできそうな袋まで見つけたので、顔がニヤけるのも仕方ないだろう。ただ、研究所でヨダレを垂らしながらニヤニヤしつつ食べ物を詰めていく姿は、完全にアレな人だったが。


食べ物を詰め終わり、満足げにパンパンになった袋を抱える海音。

奥にあったっぽい薬品などこれっぽっちも興味が無いので、そのまま部屋から立ち去ろうとすると……


『ゴリュルルルル…』

腹から凄い音がした。同時に、腹部に激しい痛みが襲ってくる。


(痛い痛い痛い! な、なんだ!?…まさか腐ってやがったのかこの肉!?)


実際は急な食事に胃がビックリしただけだったのだが、海音は思わず袋を投げ捨てた。


腹に力が入れられず、フラフラしながら奥にある机に手をついた。机に体を預けられたものの、腹の痛みは一向に引く気配がない。っていうか尋常じゃないくらい痛くなってきた。


(もう……ダメかもしれんっ……!)

そう思い顔を上げると、机の上のビンが目に入った。錠剤が入ってる物や粉末が入ってるものが何個か置いてある。


(頼む…頼むぞっ…!)

俺は必死に薬の種類を確認するべく、ビンの蓋に書いてあった薬品名を鬼の形相で読み上げていく。


(塩素…違う! クロニジン…違う! ドルクお手製軟膏EX…違う! ドルクお手製育毛剤・改…違う!……)

そして、

(ドルクお手製胃薬…ちが……)

「これだっ!」


俺は小さく叫びながらビンの蓋を開ける。中にはひとつだけ錠剤が入っていた。


(使用量とかわからないけど、一個しかないならどうでもいいよな!)


俺は急いで薬を飲み込む。水は無かったが、わりとすんなり飲み込めた。よいこは真似しないでね!

すると、すぐ腹の痛みが収まってきた。よかった、二錠飲むタイプだったらどうしようかと…。

それにしても効きがいいな、この薬。結構良いやつだったのかもしれない。ありがとう、科学者!


もっと役に立つ薬とかがあるかもと思い、改めて机の上を見てみる。…が、他には特に役立ちそうなものは無かった。っていうか聞いたこともない薬品類がほとんどだ……触らないようにしておこう。

立ち去ろうとすると、机に引き出しがあることに気がついた。こう、机の下に引っ付くようについてるタイプの薄い引き出しだ。


(開けてみるか…)


引き出しを開けると、中にはやはり大量の書類の様なものや、使い方のまったく分からない実験器具が入っていた。そしてその書類の上に、一冊の冊子が置いてある。

表紙には『ドルク』と書いてあった。さっきの胃薬にもドルクお手製って書いてあったので、多分人の名前なのだろう。察するに科学者の一人だろうが。


「なんだこれ?」


冊子を手に取ると、いきなり青い魔方陣が浮かび上がった。直後、魔法陣から光の粒子が浮かび上がり、俺の体に吸い込まれる。


「うわっ!…な、なに!?俺の体に何が起きたの!?」


魔法陣は見慣れてきたのだが、前触れなく発動しないでほしい。心臓に悪いから!いや!ホントに!


(……それで、一体何が起こるんだ…?)


何らかの魔法が発動したので、何が起こるのかワクワクしながら待つ。


「……」


「…………」


「………………」


……が、待てども待てども何も起こる気配がない。

俺はイラついて顔に浮き出た怒りマークな血管をヒクつかせながら、気がついたら叫んでいた。


「…何も起きねぇじゃねーかっ!!」


次はどんなファンタジックなことが起こるのかと期待してた俺がバカみたいじゃないか!


俺は若干キレながらも冊子をパラパラとめくった。

…どうやらこれはドルクという科学者の記録のようだ。

見開きには『ドルク研究所の実験記録』などと書かれているが、パッと見完全に科学者自信の記録で、実験記録というよりドルクのこれまでの人生を書き綴ったものだった。

よし、ドルク記と名付けよう!我ながら良いネーミングセンスだ!


人のを勝手に見るのは気が引けたが、許可を取る相手はもういないので俺はさっそくドルク記を読み始める。

…と、そこであることに気がついた。


「あれ…文字が読める?」


なるほど、これがさっきの魔法の効果か。

俺はひとりで納得して、ドルクさん作、ドルク記を読み始め……ようとすると、目の前にいきなり映像が写し出された。


「ギャアアアァァァ!!」


ホントのホントに急に起こるのヤメテ!マジで!せめて何らかの前触れを頼む!いつかショック死しちゃいそうだよっ!


若干涙目になりながらも虚空に写された画面を見ていると、黒髪を長く伸ばした青年が現れた。結構イケメンだ。

白衣を来ているので、おそらく科学者……ドルク記から出てきたので多分ドルクだろう。どうやらこの青年がいろいろ話してくれるっぽい。

…え?じゃあドルク記いらなくね?


【よう、始めましてだな。俺はドルク=シードルフィン、科学者だ。】

「あ、始めましt…

【まずここまで辿り着いてくれたこと、感謝する。そして、俺は君に謝らなければならない、……すまなかった。】

立体映像のドルクが頭を下げた。


…そうだよね!映像記録なのに会話できるわけないよね!もう、俺ったらうっかりさんめっ!!


【さて、言いたいことは山ほどあるんだが…まずは、なぜ俺がこんなところに研究所を作ったのか。そこから話をさせて貰おう─。】


げ、何か長くなりそうだ。


【─俺はもともとハーレーという国の科学者だったんだ。 科学技術が急激に進歩してきていたハーレーで、俺は実力を評価され国内に多くの研究室を持ち、優秀な助手たちと共に毎日研究に明け暮れていた。 俺は人体の研究を専門にしていて、体の構造や仕組みとかを調べてワクチンや薬、体を補助する機械とかを開発してたんだ。 専門外だけど国の首都が土砂で埋まったときは、専用の発掘機も作ったんだぜ! それで多くの人の命を助けたこともあるんだ。 まあ、とりあえず科学者として充実した毎日を送ってたわけだ。】


ちょっと自慢話が聞こえてきた気がしたが、気にせず続きを聞く。


【そんなある日、国の調査班が未開の地から血相を変えながら帰還してきた。 そいつらが言うには、森の奥で『怪物』を見たということらしい。そしてその怪物は徐々に縄張りを広げ、この国に近づいてきているという報告内容だった。 調査班はかなりの実力派集団だったから、王は彼らを叱咤した。

「どうして始末して来なかったのか」「その装備は飾り物か」と。

だが調査班の一員は言う。

「我々は武器を手に取り戦った。奥の手である高圧力レーザーも使ったが、の体に少し焼き傷を作れる程度で、。このままではこの国はお仕舞いだ!」と。

そこで俺たち科学者の出番だ。俺は多くの研究員を集め、武器や防具の開発を急ピッチで進めた。だがこんな短期間で画期的な物が出来るはずもなく、とうとう山ひとつ越えたところにまで怪物が迫ってきた。

だが俺は諦めなかった。連日徹夜で研究に励み、怪物の侵攻まであと一週間を切ったところで、従来の兵器とはまったく異なるタイプの新兵器の開発に成功したのだ。】


…なんか大変そうだなあ……。っていうかだんだん喋り方が科学者っぽくなってきたな。やれば出来るじゃないかドルク君!


【俺の開発したものは『アトテクノロジー』という技術だ。

これは人体に直接投与することによって極小の機械が血液内に広がり、それが体内で増殖して様々な効果を引き起こすというもの。…つまり、体に何かしらプログラムした機械を送り込み、人間自体を強化しちまおうってわけだ。】


「怖っ!?今さらっと恐ろしいこと言ったな!【しちまおうってわけだ】じゃねーよ!半分サイボーグじゃん!」


【ともかく俺は俺が編み出したこの技術を使い、『皮膚を硬質化させる効果』をプログラムしようとした。研究所の仲間たちが大分数を減らしたが、最終的に機械を混入させた血液を表面に密集させることで上手くいった。

もちろん鉄の体を生み出したかったのには理由がある。体が頑丈になれば今以上の衝撃に耐えられるようになり、重火器の威力を底上げできると考えたからだ!

…反動が少ないままさらに高威力の武器を造るのが無理なら、反動に耐えれる体にしちゃおう!ってわけ!

そう……俺は天才だったんだ。。】


言いながらドルクがどや顔を決めてくる。

……俺は立体映像にどや顔をされてどんな顔をすればいいのだろう。誰か教えてください。

っていうか研究員がかなり減ったって、実験のモルモットにしたってこと…?せめてちゃんと本人に許可取ってやったんだよね?ドルク、俺は信じてるわよ!


【…ゴホン。それでだ。数々の人体実験を重ねた末に完成させたこの化学兵器のことをハーレーの王に伝えに行ったんだが……】


ドルクが渋い顔をする。…何があったのだろうか?


【先に結果だけ言うと、俺たちの開発した兵器が使用されることはなかった。

……魔法とかいうふざけた力のせいでな。】


俺はドルクの話に意識を集中させた。
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