12 / 29
一章 兵器化編
約7話 地響きと出現
しおりを挟む
「魔法陣…」
そこにあったのは、文字の意味や構造こそわからないが、確かに魔法陣だった。それの発する光にホタルが引き寄せられるように集まっていたのだ。そして飛んでいるホタルが触れるたびに、魔法陣は輝きを増していく。
「あそこに辿り着ければ、ワンチャンあるかもな……」
でもどれだけ体を奮い立たせても、立ち上がる寸前で崩れ落ちてしまう。そんな自分の有り様に、海音は半ば諦めていた。
もう、手遅れなのだ。今目の前に生きる活路を見出だしても、立ちあがることすらできないのだから。
海音は再び地面に寝転がると、魔法陣に視線を戻す。既に魔法陣は大量のホタルに覆われて見えなくなっており、中から膨大な量の光が漏れ出している。その様子を眺めていると、よりいっそう激しさを増し始める。あまりの光量に思わず目を反らした瞬間、光が辺りの地面に広がり始めた。まるで水の波紋のように中心から広がっていき、光が通った後の地面には、複雑な文字列が刻まれていていく。そしてその光は一瞬で海音のところまで到達した。
(……!? 何だ…? どーなってんだよこりゃあ…)
やがて光の波紋が収まり、巨大な魔法陣が完成した。魔法陣は青く輝きを放っている。
刹那、地面が揺れ始めた。
次第に地面に亀裂が走りだし、『ビキビキビキ』と嫌な音を立てている。次に、目の前の地面が隆起し始めた。ひび割れた地面から、膨れ上がるように浮上してくる。しばらくすると、地下から出てきたそれが全容を現した。
「遺跡…か?」
それは、コンクリートのような材質で出来た、研究所だったであろう建物だった。建物は所々崩れていて、壁のあちこちに空いた穴からは中の様子がうかがえる。全体がびっしりとコケのようなものに覆われており、大きさは一軒家より少し大きい程度の小さなもの。一見すると普通のすごく古い建物だが、部屋の中に散乱している大量の試験管やビーカーを見ると、ここが研究施設であることがわかる。
地鳴りが完全に収まり、呆然としていると、辺りを照らしていた光が徐々に集まっていき……こっちに向かって飛んできた。
「おおおおう!?」
俺は身を守るように手を前に出すが、光は手をすり抜けて─体に吸い込まれていった。
直後、体の底から力が湧いてきた。あっちの世界にいる時には感じたこともない、不思議な力が体の芯から溢れてくる。
(これはまさか……)
この光で魔法陣が発動し、体に宿った後は不思議な力に転換される。俺のオタ知識と照らし合わせ、この世界が俺の理想の世界と仮定するなら、思い当たるものは一つしかない。
(魔力…か…?)
光が体に馴染み始め、さらに力がみなぎってくる。体力、精神力、生命力、あらゆる力が戻ってくるのを感じていた。
そして海音は、立ち上がった。
「何が起こったのかはわからないけど……体が動かせるようになったのならありがたい。俺は諦めないぞ!どうにかこの森を抜け出して、立派なハーレムを作ってみせる!」
ハーレムは自分にとっては立派な夢だ。客観的に見ればそうじゃないことはわかっているけど、どうせ捨てられないこともわかってるんだ。なら、これは自分にとっては立派な夢。そう思うことにした。
一部の人類は、星に夢見て天体望遠鏡を作り上げ、果てには地球を脱出して星に辿り着いたのだ。
どれだけバカにされようとも、不可能だと言われようとも、それが自分でバカなことだとわかっていても。彼らは、諦めなかった。いや、もしかしたら俺みたいに諦められなかっただけなのかもしれない。でも、結果として辿り着いた。そして、夢を叶えたのだ。
なら…俺に出来ないはずがない。捨てきれない夢があり、叶えたいと思う意思がある。
今まで俺は何も変わっていなかったのかもしれない。でも、今から変わっていけるかもしれない。だから、俺はもう一度立ち上がったのだ。
「……光が収まっちゃったから辺りが暗くなったな。とりあえず遺跡の探索をしたいんだけど、…どうしたもんかね。」
俺はこれからのことについて思案しながら、遺跡の中へ入っていった。
そこにあったのは、文字の意味や構造こそわからないが、確かに魔法陣だった。それの発する光にホタルが引き寄せられるように集まっていたのだ。そして飛んでいるホタルが触れるたびに、魔法陣は輝きを増していく。
「あそこに辿り着ければ、ワンチャンあるかもな……」
でもどれだけ体を奮い立たせても、立ち上がる寸前で崩れ落ちてしまう。そんな自分の有り様に、海音は半ば諦めていた。
もう、手遅れなのだ。今目の前に生きる活路を見出だしても、立ちあがることすらできないのだから。
海音は再び地面に寝転がると、魔法陣に視線を戻す。既に魔法陣は大量のホタルに覆われて見えなくなっており、中から膨大な量の光が漏れ出している。その様子を眺めていると、よりいっそう激しさを増し始める。あまりの光量に思わず目を反らした瞬間、光が辺りの地面に広がり始めた。まるで水の波紋のように中心から広がっていき、光が通った後の地面には、複雑な文字列が刻まれていていく。そしてその光は一瞬で海音のところまで到達した。
(……!? 何だ…? どーなってんだよこりゃあ…)
やがて光の波紋が収まり、巨大な魔法陣が完成した。魔法陣は青く輝きを放っている。
刹那、地面が揺れ始めた。
次第に地面に亀裂が走りだし、『ビキビキビキ』と嫌な音を立てている。次に、目の前の地面が隆起し始めた。ひび割れた地面から、膨れ上がるように浮上してくる。しばらくすると、地下から出てきたそれが全容を現した。
「遺跡…か?」
それは、コンクリートのような材質で出来た、研究所だったであろう建物だった。建物は所々崩れていて、壁のあちこちに空いた穴からは中の様子がうかがえる。全体がびっしりとコケのようなものに覆われており、大きさは一軒家より少し大きい程度の小さなもの。一見すると普通のすごく古い建物だが、部屋の中に散乱している大量の試験管やビーカーを見ると、ここが研究施設であることがわかる。
地鳴りが完全に収まり、呆然としていると、辺りを照らしていた光が徐々に集まっていき……こっちに向かって飛んできた。
「おおおおう!?」
俺は身を守るように手を前に出すが、光は手をすり抜けて─体に吸い込まれていった。
直後、体の底から力が湧いてきた。あっちの世界にいる時には感じたこともない、不思議な力が体の芯から溢れてくる。
(これはまさか……)
この光で魔法陣が発動し、体に宿った後は不思議な力に転換される。俺のオタ知識と照らし合わせ、この世界が俺の理想の世界と仮定するなら、思い当たるものは一つしかない。
(魔力…か…?)
光が体に馴染み始め、さらに力がみなぎってくる。体力、精神力、生命力、あらゆる力が戻ってくるのを感じていた。
そして海音は、立ち上がった。
「何が起こったのかはわからないけど……体が動かせるようになったのならありがたい。俺は諦めないぞ!どうにかこの森を抜け出して、立派なハーレムを作ってみせる!」
ハーレムは自分にとっては立派な夢だ。客観的に見ればそうじゃないことはわかっているけど、どうせ捨てられないこともわかってるんだ。なら、これは自分にとっては立派な夢。そう思うことにした。
一部の人類は、星に夢見て天体望遠鏡を作り上げ、果てには地球を脱出して星に辿り着いたのだ。
どれだけバカにされようとも、不可能だと言われようとも、それが自分でバカなことだとわかっていても。彼らは、諦めなかった。いや、もしかしたら俺みたいに諦められなかっただけなのかもしれない。でも、結果として辿り着いた。そして、夢を叶えたのだ。
なら…俺に出来ないはずがない。捨てきれない夢があり、叶えたいと思う意思がある。
今まで俺は何も変わっていなかったのかもしれない。でも、今から変わっていけるかもしれない。だから、俺はもう一度立ち上がったのだ。
「……光が収まっちゃったから辺りが暗くなったな。とりあえず遺跡の探索をしたいんだけど、…どうしたもんかね。」
俺はこれからのことについて思案しながら、遺跡の中へ入っていった。
0
お気に入りに追加
115
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
チート薬学で成り上がり! 伯爵家から放逐されたけど優しい子爵家の養子になりました!
芽狐@書籍発売中
ファンタジー
⭐️チート薬学3巻発売中⭐️
ブラック企業勤めの37歳の高橋 渉(わたる)は、過労で倒れ会社をクビになる。
嫌なことを忘れようと、異世界のアニメを見ていて、ふと「異世界に行きたい」と口に出したことが、始まりで女神によって死にかけている体に転生させられる!
転生先は、スキルないも魔法も使えないアレクを家族は他人のように扱い、使用人すらも見下した態度で接する伯爵家だった。
新しく生まれ変わったアレク(渉)は、この最悪な現状をどう打破して幸せになっていくのか??
更新予定:なるべく毎日19時にアップします! アップされなければ、多忙とお考え下さい!
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。

少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?
冷遇された第七皇子はいずれぎゃふんと言わせたい! 赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていました
taki210
ファンタジー
旧題:娼婦の子供と冷遇された第七皇子、赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていた件
『穢らわしい娼婦の子供』
『ロクに魔法も使えない出来損ない』
『皇帝になれない無能皇子』
皇帝ガレスと娼婦ソーニャの間に生まれた第七皇子ルクスは、魔力が少ないからという理由で無能皇子と呼ばれ冷遇されていた。
だが実はルクスの中身は転生者であり、自分と母親の身を守るために、ルクスは魔法を極めることに。
毎日人知れず死に物狂いの努力を続けた結果、ルクスの体内魔力量は拡張されていき、魔法の威力もどんどん向上していき……
『なんだあの威力の魔法は…?』
『モンスターの群れをたった一人で壊滅させただと…?』
『どうやってあの年齢であの強さを手に入れたんだ…?』
『あいつを無能皇子と呼んだ奴はとんだ大間抜けだ…』
そして気がつけば周囲を畏怖させてしまうほどの魔法使いの逸材へと成長していたのだった。
貴族家三男の成り上がりライフ 生まれてすぐに人外認定された少年は異世界を満喫する
美原風香
ファンタジー
「残念ながらあなたはお亡くなりになりました」
御山聖夜はトラックに轢かれそうになった少女を助け、代わりに死んでしまう。しかし、聖夜の心の内の一言を聴いた女神から気に入られ、多くの能力を貰って異世界へ転生した。
ーけれども、彼は知らなかった。数多の神から愛された彼は生まれた時点で人外の能力を持っていたことを。表では貴族として、裏では神々の使徒として、異世界のヒエラルキーを駆け上っていく!これは生まれてすぐに人外認定された少年の最強に無双していく、そんなお話。
✳︎不定期更新です。
21/12/17 1巻発売!
22/05/25 2巻発売!
コミカライズ決定!
20/11/19 HOTランキング1位
ありがとうございます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる