異世界転生でハーレムを!…胃薬飲んだら最終兵器になっちゃいました

小鳥遊よもぎ

文字の大きさ
上 下
7 / 29
一章 兵器化編

約2話 遭遇しました

しおりを挟む
「俺、転生しちゃったの?」


だが、あまりに突拍子のない仮説に思わず頭を振る。


「いやいや。 流石にそんなわけないでしょ…。 転生とかハーレムとかはあくまで二次元の話であってそもそも次元が……」


ここまで口にしたところで、海音は押し黙った。


(…なにか聞こえてくる?)


森を駆け抜ける風の音の中に、何かが地面に叩きつけられているような音が聞こえてきた。

しばらく耳をすましていると、音が大きくなってきた。どうやら何かが近づいて来ているようだ。


ドスン……ズズン……バキバキバキ……


だんだん音が鮮明になってきた。

これは恐らく足音だ。

…それも、かなり巨大な何かの。


「なんなんだ……。 なんか動物でも出たか? まずいなぁ…、野生の生き物はかなり獰猛で危険だし。」

「とりあえず音をたてないように……」


呟きながら、俺は静かに太めの木の影に隠れた。

こっちに来ないよう祈りつつ様子を伺っていると、足音のする方角から、その生物のが聞こえてきた。


「GRUOOOOOOー!!!!」

空気が、打ち震えた。


「……へ?」


思わず間抜けな声がでた。

と同時に、体から大量の汗が流れ始め、体がガタガタと震え始める。

海音には何が聞こえたのか理解が追いついていないが、

体の異常については嫌でも理解させられた。


心が、体が、本能が。 恐怖に震えているのだ。

心拍数が急激に増加し、同時に今度は全身が硬直する。


(……なんか知らんが、今の声は…? …とりあえず、見つかるわけにはいかないことには変わりはない………。)


「息を整えろ…俺…。」


足音はもうそこまで迫ってきている。


スー…ハー…スー…ハー…………よし!完璧だ!


数秒後、反対側の森の木がなぎ倒されると共に、最初自分が目を覚ました場所付近には現れた。


そのあまりの様相に、俺は驚きのあまり目玉がとび出し-もちろん例え話だが-、同時に自分の仮説は正しかったのだと確信することになった。


現れたのは全長2~3メートル程の、黒い生き物だった。

四本足で歩行していて、顔は犬っていうより狼のような顔つきだ。眼光はとても鋭く凶悪で、睨まれるだけで戦意を失うのではと思うほど。

体格はガッシリしているが、無駄にゴツゴツしているのではなく、スピードが出せそうな体だ。例えるなら力士ではなくラグビー選手といったところか。

そして……、


「顔が三つある……だと…。」


そう、その生物の正体は、海音が知る限りでは架空の存在。


--ケルベロスだった。



もう!わかりましたよ!認めますよ!ここは確かに異世界です!つまり俺は転生したんですね分かりましたありがとうございます!

軽くパニックになり、俺の中の俺が盛大に頭を下げた。


「……ハッ!」


(いかんいかん、今は心を落ち着かせなければ…。)


慌ててケルベロスに視線を戻す。


よかった。まだ気づかれてないみたいだ。


様子をうかがっていると、ケルベロスは開けた場所のまん中辺りで立ち止まり、そのまま丸まるように座り込んだ。

どうやら日光浴でもしにきたみたいだ。


(まじか。早くどっかいけよ…。)


それから20分ほど待っていると、ケルベロスは寝息をたて始めた。


「ようやく眠ってくれたか。」


俺はホッと息をついて、これからのことに思考を巡らす。


(あいつがいるからあそこに戻るわけにもいかないし……って、いてもいなくても、ずっとここにいるわけにはいかないか。)


「つっても、どっちいけばいいんだ? しばらく進んでから逆走してました~とか勘弁なんだけど。」

「せめてなにか目印になるものでも…」


辺りを見回すが、見渡す限り森しかない。

うん、知ってたけどね!さっきこの辺り探索したばっかだしね!


これからのことについてうんうん唸っていると、ヤツの体がピクリと動いた。 …なんか耳が小刻みに震えている。


(あ、あれ? なんか嫌な予感が…。)


急いで隠れ直そうとするも、先にケルベロスが目を覚ました。


そして……  バッチリと目が合った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

チート薬学で成り上がり! 伯爵家から放逐されたけど優しい子爵家の養子になりました!

芽狐@書籍発売中
ファンタジー
⭐️チート薬学3巻発売中⭐️ ブラック企業勤めの37歳の高橋 渉(わたる)は、過労で倒れ会社をクビになる。  嫌なことを忘れようと、異世界のアニメを見ていて、ふと「異世界に行きたい」と口に出したことが、始まりで女神によって死にかけている体に転生させられる! 転生先は、スキルないも魔法も使えないアレクを家族は他人のように扱い、使用人すらも見下した態度で接する伯爵家だった。 新しく生まれ変わったアレク(渉)は、この最悪な現状をどう打破して幸せになっていくのか?? 更新予定:なるべく毎日19時にアップします! アップされなければ、多忙とお考え下さい!

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

転生者はチートな悪役令嬢になりました〜私を死なせた貴方を許しません〜

みおな
恋愛
 私が転生したのは、乙女ゲームの世界でした。何ですか?このライトノベル的な展開は。  しかも、転生先の悪役令嬢は公爵家の婚約者に冤罪をかけられて、処刑されてるじゃないですか。  冗談は顔だけにして下さい。元々、好きでもなかった婚約者に、何で殺されなきゃならないんですか!  わかりました。私が転生したのは、この悪役令嬢を「救う」ためなんですね?  それなら、ついでに公爵家との婚約も回避しましょう。おまけで貴方にも仕返しさせていただきますね?

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

冷遇された第七皇子はいずれぎゃふんと言わせたい! 赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていました

taki210
ファンタジー
旧題:娼婦の子供と冷遇された第七皇子、赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていた件 『穢らわしい娼婦の子供』 『ロクに魔法も使えない出来損ない』 『皇帝になれない無能皇子』 皇帝ガレスと娼婦ソーニャの間に生まれた第七皇子ルクスは、魔力が少ないからという理由で無能皇子と呼ばれ冷遇されていた。 だが実はルクスの中身は転生者であり、自分と母親の身を守るために、ルクスは魔法を極めることに。 毎日人知れず死に物狂いの努力を続けた結果、ルクスの体内魔力量は拡張されていき、魔法の威力もどんどん向上していき…… 『なんだあの威力の魔法は…?』 『モンスターの群れをたった一人で壊滅させただと…?』 『どうやってあの年齢であの強さを手に入れたんだ…?』 『あいつを無能皇子と呼んだ奴はとんだ大間抜けだ…』 そして気がつけば周囲を畏怖させてしまうほどの魔法使いの逸材へと成長していたのだった。

処理中です...