異世界転生でハーレムを!…胃薬飲んだら最終兵器になっちゃいました

小鳥遊よもぎ

文字の大きさ
上 下
3 / 29
0章 転生編

プロローグ 俺と提出課題3

しおりを挟む
日が傾き、辺りが夕焼けに染まってきた頃、山上台の一角にあるとある家では学生二人が必死の形相で課題を進めていた。

目の前にはほとんど飲み干した後のオレンジジュースと、もはや水と化してジュースに溶け込んでいる氷がグラスに入って2つ置かれている。

汗がプリントに染み込み始め、目眩のするような暑さの中、一人が絶叫を上げた。


「……っっ! ……終わらねぇ~!!」


声の主は牧野だ。海音が自分もやってなかったことに気づき、それから二人で協力する形で、担当する問題を割り振りして猛スピードで課題を終わらせているところなのだ。


「しかもなんでクーラー故障してんだよ!こんなクッソ暑いのに扇風機一台とか…! お前よくこんなとこで生活できるな! …にしてもなんでこんなに暑いんだ?昨日までわりと涼しかったのに! ……そうか、山の夏はこんな暑いものなのか…。」


そう、今俺ん家のクーラーは絶賛故障中である。しかも一週間は前から。

壊れていたことは知っていたが、昨日まではまだ涼しい風も入ってきて、我慢できないほどじゃなかったからめんどくささも相まって今日まで放置していたのだ。


俺は部屋の隅に束ねてある新聞の中から昨日の夕刊を手に取り、天気予報のページを見せながら牧野の疑問を解消してやる。


「ほら、今日から真夏日だってよ!そりゃこの暑さも納得だよな! いや~、最近ずっと涼しかったもんだからちょっと油断したわ!」


続けて、田舎だとバカにされたのでドヤ顔で反論することにする。自分で田舎だと認めていても、ことあるごとに言われると無性に腹が立つというものだ。


「それにお前あれだぞ、夏は都会のほうが断然暑いんだぞ?緑が少なくて避暑地は無いわ、アスファルトの地面は熱籠ってるわで。ほら、そう考えれば電力も食わずにちょっぴり涼しいここで勉強できて良かったんじゃないか?」


言うと、暑さと勉強に頭がやられてイライラが頂点に達していた牧野が言い返す。


「だぁーっから! それでも十分暑いから言ってんだよ!結局暑いんだからちょっとした温度差なんて誤差だ誤差!

…しかも数学もさっぱりわかんねえしよお。」


「確かに誤差かもしれないけど…、…って分からないの?やり方は全部教科書に載ってるから時間はかかれど解けないことはないと思うんだけど…。」


牧野の宿題を覗き込むと、プリントの一番最初の二次関数の問題でペンが止まっていた。


(嘘だろこいつ…、一問目で止まってんじゃねえか…。俺はもう大問で三個終ったってのに…。しかも俺のほうが頭いいからと思って基本問題やらせてるのに…。)


顔を上げると、なぜかドヤ顔の牧野。

本気でぶん殴りたくなったが俺は大人な男なのでなんとか我慢した。褒めてほしい。

そして牧野の手がゆっくりと動き…、

……問1の二次関数の問題を指差した。ドヤ顔のまま。


わかってるよ!その問題でつまってんのは!でもなんで今ドヤ顔で指差した!?今の行動になんの意味が!ってか分からないんなら自分で教科書みろよ!数字変わってるだけじゃねーか!


…とりあえずこのままでは課題が一向に進まないため、さっさと教えようと教科書を手に取り説明を始める。


「…うん。二次関数がわからないのね。これはここに書いてある通りにまずは数字を当てはめて…」


「おい」


「…ん?どうかしたか?」


なんだろうか。あ、教科書逆さだから見にくいのかな?なら横に移動して…


「俺がわからんのはそこじゃない」


「…え?」


こいつはいったい何を言っているのだろうか。

指差した上にそこしか解いてないのに何が違うというのか…。

あ、わからないんじゃなくてただサボってたってこと?

よし良い度胸だ。ぶっ殺してやろうか!


わけもわからず混乱していると、今度は勝ち誇ったような顔になる牧野。…なんだ?いったいなにが起こっているんだ!


「俺が分からないのはな…」


次の瞬間、牧野は俺から戦力外通告を受けることになった。


「因数分解だっ!!」


「お前もう帰れよ」


まだまだ宿題は終わりそうにない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

チート薬学で成り上がり! 伯爵家から放逐されたけど優しい子爵家の養子になりました!

芽狐@書籍発売中
ファンタジー
⭐️チート薬学3巻発売中⭐️ ブラック企業勤めの37歳の高橋 渉(わたる)は、過労で倒れ会社をクビになる。  嫌なことを忘れようと、異世界のアニメを見ていて、ふと「異世界に行きたい」と口に出したことが、始まりで女神によって死にかけている体に転生させられる! 転生先は、スキルないも魔法も使えないアレクを家族は他人のように扱い、使用人すらも見下した態度で接する伯爵家だった。 新しく生まれ変わったアレク(渉)は、この最悪な現状をどう打破して幸せになっていくのか?? 更新予定:なるべく毎日19時にアップします! アップされなければ、多忙とお考え下さい!

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

異世界でリサイクルショップ!俺の高価買取り!

理太郎
ファンタジー
坂木 新はリサイクルショップの店員だ。 ある日、買い取りで査定に不満を持った客に恨みを持たれてしまう。 仕事帰りに襲われて、気が付くと見知らぬ世界のベッドの上だった。

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

冷遇された第七皇子はいずれぎゃふんと言わせたい! 赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていました

taki210
ファンタジー
旧題:娼婦の子供と冷遇された第七皇子、赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていた件 『穢らわしい娼婦の子供』 『ロクに魔法も使えない出来損ない』 『皇帝になれない無能皇子』 皇帝ガレスと娼婦ソーニャの間に生まれた第七皇子ルクスは、魔力が少ないからという理由で無能皇子と呼ばれ冷遇されていた。 だが実はルクスの中身は転生者であり、自分と母親の身を守るために、ルクスは魔法を極めることに。 毎日人知れず死に物狂いの努力を続けた結果、ルクスの体内魔力量は拡張されていき、魔法の威力もどんどん向上していき…… 『なんだあの威力の魔法は…?』 『モンスターの群れをたった一人で壊滅させただと…?』 『どうやってあの年齢であの強さを手に入れたんだ…?』 『あいつを無能皇子と呼んだ奴はとんだ大間抜けだ…』 そして気がつけば周囲を畏怖させてしまうほどの魔法使いの逸材へと成長していたのだった。

処理中です...