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0章 転生編

プロローグ 俺と提出課題3

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日が傾き、辺りが夕焼けに染まってきた頃、山上台の一角にあるとある家では学生二人が必死の形相で課題を進めていた。

目の前にはほとんど飲み干した後のオレンジジュースと、もはや水と化してジュースに溶け込んでいる氷がグラスに入って2つ置かれている。

汗がプリントに染み込み始め、目眩のするような暑さの中、一人が絶叫を上げた。


「……っっ! ……終わらねぇ~!!」


声の主は牧野だ。海音が自分もやってなかったことに気づき、それから二人で協力する形で、担当する問題を割り振りして猛スピードで課題を終わらせているところなのだ。


「しかもなんでクーラー故障してんだよ!こんなクッソ暑いのに扇風機一台とか…! お前よくこんなとこで生活できるな! …にしてもなんでこんなに暑いんだ?昨日までわりと涼しかったのに! ……そうか、山の夏はこんな暑いものなのか…。」


そう、今俺ん家のクーラーは絶賛故障中である。しかも一週間は前から。

壊れていたことは知っていたが、昨日まではまだ涼しい風も入ってきて、我慢できないほどじゃなかったからめんどくささも相まって今日まで放置していたのだ。


俺は部屋の隅に束ねてある新聞の中から昨日の夕刊を手に取り、天気予報のページを見せながら牧野の疑問を解消してやる。


「ほら、今日から真夏日だってよ!そりゃこの暑さも納得だよな! いや~、最近ずっと涼しかったもんだからちょっと油断したわ!」


続けて、田舎だとバカにされたのでドヤ顔で反論することにする。自分で田舎だと認めていても、ことあるごとに言われると無性に腹が立つというものだ。


「それにお前あれだぞ、夏は都会のほうが断然暑いんだぞ?緑が少なくて避暑地は無いわ、アスファルトの地面は熱籠ってるわで。ほら、そう考えれば電力も食わずにちょっぴり涼しいここで勉強できて良かったんじゃないか?」


言うと、暑さと勉強に頭がやられてイライラが頂点に達していた牧野が言い返す。


「だぁーっから! それでも十分暑いから言ってんだよ!結局暑いんだからちょっとした温度差なんて誤差だ誤差!

…しかも数学もさっぱりわかんねえしよお。」


「確かに誤差かもしれないけど…、…って分からないの?やり方は全部教科書に載ってるから時間はかかれど解けないことはないと思うんだけど…。」


牧野の宿題を覗き込むと、プリントの一番最初の二次関数の問題でペンが止まっていた。


(嘘だろこいつ…、一問目で止まってんじゃねえか…。俺はもう大問で三個終ったってのに…。しかも俺のほうが頭いいからと思って基本問題やらせてるのに…。)


顔を上げると、なぜかドヤ顔の牧野。

本気でぶん殴りたくなったが俺は大人な男なのでなんとか我慢した。褒めてほしい。

そして牧野の手がゆっくりと動き…、

……問1の二次関数の問題を指差した。ドヤ顔のまま。


わかってるよ!その問題でつまってんのは!でもなんで今ドヤ顔で指差した!?今の行動になんの意味が!ってか分からないんなら自分で教科書みろよ!数字変わってるだけじゃねーか!


…とりあえずこのままでは課題が一向に進まないため、さっさと教えようと教科書を手に取り説明を始める。


「…うん。二次関数がわからないのね。これはここに書いてある通りにまずは数字を当てはめて…」


「おい」


「…ん?どうかしたか?」


なんだろうか。あ、教科書逆さだから見にくいのかな?なら横に移動して…


「俺がわからんのはそこじゃない」


「…え?」


こいつはいったい何を言っているのだろうか。

指差した上にそこしか解いてないのに何が違うというのか…。

あ、わからないんじゃなくてただサボってたってこと?

よし良い度胸だ。ぶっ殺してやろうか!


わけもわからず混乱していると、今度は勝ち誇ったような顔になる牧野。…なんだ?いったいなにが起こっているんだ!


「俺が分からないのはな…」


次の瞬間、牧野は俺から戦力外通告を受けることになった。


「因数分解だっ!!」


「お前もう帰れよ」


まだまだ宿題は終わりそうにない。
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