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無し寄りの無しでしょ
しおりを挟むベランダで昆布茶をすすりつつ、欠けた月をまったり見ていたそんな夜、何故に僕は一人で異世界に放り出されねばならなかったのか…。
まずツッコミから良いだろうか。
「取り敢えず月と夜はドコ行ったーーーーー!!」
よく昨今の異世界転移系小説で『気付いたら知らない場所に居た』とかあるけど、気付いたらも何も、気付かない訳が無い。
千歩譲って昼なのは許すから、月と同じ位置に居るのは止めろ太陽!
ぼんやりした月明かりに甘やかされてた僕のお目々が、さんさんと降り注ぐ太陽光にうっかり焼かれてしまったじゃないか!
落ち着け~、落ち着け僕~。先ずは状況確認だ。
「いや、落ち着いてられるか!」
おそらく一般街道、旅人らしき人達が複数見える。
そして彼等は一様に同じ方向に向かって走っている。それはもう見事な全力ダッシュだ。それも見えるかぎり全員が。
さらに彼等の後方からは、超巨大トンボが何やらムシャムシャしながら飛んで来る。
そのお口の中に入ってるの、動物的なモノでFA?
どう見てもアレから逃げている皆さんですねありがとうございます。
状況確認? そんなこと悠長にしてられるか! 落ち着いてる場合でもない!
じゃあどうする?
「全力で逃げる一択に決まってるだろうがー!!」
走り出そうとした瞬間、横から飛び出して来た大男が二人。
「居やがった! おっと、チビちゃんごめんよ」
誰がチビちゃんか!
「おっし、捕獲、捕獲っと!」
二人は大きな網を持って超巨大トンボに突っ込んで行く。
ちょっと待て。なに勝手に僕の事抱き上げて連れてってんだよ!
何故か大男①に抱えられている僕。誰か説明を求む!
大男②は持っていた網を投網よろしく超巨大トンボに投げ掛けている。
羽ごと網に絡め取られ、バタバタしてる超巨大トンボが、僕の直ぐ目の前に。
「ひぎゃーーー!!!」
叫ぶさそらもう。此処は白亜紀真っ只中か!
博物館で見たメガネウロプシスの実寸模型も真っ青な巨大サイズのトンボ!
もう乗れるよねこのサイズ!!
「おお、鳴き声も可愛いな」
ちょっ、待てこら鳴き声って何だ! こちとら必死で叫んでるんじゃい! 可愛いって何だ!
何でも良いから、超巨大トンボ捕獲中に余所見をするなーーーー!!!!
「カル、良いぞ。やれ!」
「うっしゃ、殺るか! 放すなよビス!」
殺るかじゃねーよ! 先に僕を下ろしたまへ。出来るだけトンボから離れた場所にな!!
大男①改めカルが網から手を放し、剣を右手に超巨大トンボに斬り掛かる。大男②改めビスが押さえ込んだトンボの巨大な体から、これまた巨大な羽が切り落とされた。
そしてその間カルの左腕に捕らわれたままの僕。
「~~~!!!」
目の前には羽を切り落とされて地をのたうつ超巨大トンボが、硬そうな顎をガチガチいわせてる。
もう無理です。声も出ませんよ。気を失えたら楽だろうか? いうていくら貧弱BOYの僕でも、そう簡単に意識は飛びませんて。
はじめましての異世界人で現在進行形誘拐犯だろうが、すがる先がそれしか無いなら取り敢えず全力で縋る所存です!
「お?何だ?甘えてんのか?かわいいなぁ~」
だから、超巨大トンボ討伐中に余所見してんじゃねーーー!!!
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