夜明けのムジカ

道草家守

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終曲1

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『****。さあ、手伝ってちょうだい』

 出所不明記録を発見。消去するべきか否か。
 選択、続行すべきと判断。破損はあれど重要度高。
 記録の回想。
 笑顔を浮かべる女性。詳細な記録はなし、しかし味方であると判断。
 外見、金髪、青眼。20代後半。態度から親しい存在であると類推。
 前指揮者ディレットである可能性大。

『え、なあに? 自分は自律兵器ドールだから食べ物なんて作っちゃだめ? 何言っているの』

 笑声。当時の回答、否定を唱える。

『あなたは、私の弟……ううん、子供みたいなものだわ。だからいいの。これからは男の子でも料理ができなきゃいけない時代よ。いっぱい教えてあげる』

 理解不能。
 手を握られる。困惑。

『スコーンを作るときはね、冷たい手が良いのよ。そして、冷たい手の人は、心が温かいの。だからきっとあなたが一番おいしく作れるわ』

 体表の温冷と心に因果関係はなし。
 女性の反応、困惑。否哀惜。

『あなたに人間になれ、なんて言わないわ。私とあなたは違うもの。でもねお父様はあなたにそんなことをしてしまったけれど、あなたにだって心はあった。私はいつか、あなたの大事な人ができたときに、大事にしてあげられるように学んで欲しいの』

 記録の己の行動。
 否定。自律兵器ドールに心は不要。故に創造主は自分に機能制限を設けた。
 さらに回答。自分は彼女の守護のために作られた機体。彼女以上に重要度の高いものはないと主張。
 彼女からの返答、微笑。

『ほらやっぱり。本当の奇械アンティークはね、そんな風にむきにならないものよ。あなたもいつか一目惚れアムールをするかもしれないんだから、これだけは覚えていて』

 現在も不明。しかし――……

 想起。
 澄み渡るような、貫く声。
 記録とは異なる金茶の髪、晴天の青の瞳。若く、もろく、まっすぐな少女。

『――それをね、愛と呼ぶのよ』


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