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碩学研究者2
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「ふうん、奇械に関してはさすがによく知っているようだね」
「それで、あたしはこんなお上品なことに縁がない野蛮人でしてね。用がないんならとっとと野に返してはくれやしませんかね? ミスタ、グレンヴィル?」
ドレスの中で足を組んでまたひとつ、焼き菓子を放り込んだムジカだが、身を乗り出してきたアルーフが言った。
「そうだね、では2つめの質問の答えだ。僕は君に会いたかった。あの蛙型を倒した君に」
先ほども言われたがその表現に違和を持ったムジカは、爛々と淡い瞳を熱っぽく輝かせるアルーフに訂正した。
「あの蛙型を倒したのは、あたしの仲間とだぞ」
「だって、あれは君の所有物だろう?」
あまりにあっさりと言われて、ムジカは一瞬理解が及ばなかった。
アルーフは手指を組み合わせて、ほほえんでいるような曖昧な表情を崩さないまま、続けた。
「さて、3つ目の答えだ。僕は君を解放してやりたいと思っている。僕にはその技術がある。だからね、君と取引をしたいんだ」
「……何を言っているかさっぱりわからねえ」
声だけは平静をたもったムジカだったが、心の内は動揺に荒れ狂っていた。
この男は、ラスが自律兵器だと少なくとも奇械であると疑っている。
しかもあかしたとおり、政府公認探掘隊という公的な人間だ。
どこからかぎつけたのか見当もつかないが、想定する限り最悪の相手だった。
ムジカにできることは一つだけだ、何が何でも認めない。
「ああそんなに警戒しないでくれ。スポンサーには逆らえない身だけれど、これはあくまで僕個人の趣味なんだ」
「趣味? ずいぶん悪趣味なもんだな」
じっと目で人が殺せるのならとうにしているだろうまなざしでにらむムジカに、アルーフは大げさにぶるりほと体を震わせる。
しかし圧倒的に余裕を持っていた。
「怖いなあ。ふむ。まあ君の不安も無理はない。凡人にもわかるよう少々かみ砕いて話をしようか。君が指揮者登録をした機体の話だ。どれだけ魅力的で危険なのか。これは業界でも一部の人間しか知らない話だよ。光栄に思うといい」
ムジカが異論を唱える間もなく、アルーフは悠然と語り始めた。
「僕の研究対象は奇械……さらに言えば自律兵器特有の高度な判断能力の要因についてでね。パーツからエーテル機関、さらには管制頭脳まですべて1から作り上げることを目標としているんだ。さて、解体する君たちにはわかるだろうが、奇械のパーツはほとんどが無機物でできている。そこにあの高度な自律判断を盛り込む余地はないんだよ」
ムジカは、疑問にすら思ったことないことを語られて面食らった。
奇械の判断能力を疑ったことなどない。なぜならそういうものだからだ。
「これは奇械をくみ上げてみるとよくわかるんだがね。ただパーツを複製しただけではあらかじめ設定した動作を繰り返すものにしかならない。物理法則を利用して水をくむだけだったり、おいてあるお茶をとるだけだったり。そもそも音声入力がナンセンスの塊なんだ。今の技術ではどうやったって言語を理解する知能を作り上げることは不可能なんだよ」
「それが遺物の特徴だろ? 今の技術では再現できない技術体系だから高値がつくんだ」
「僕は解き明かした上で言っているんだよ。奇械を構成するパーツのどの部分にもそれだけの判断ができる思考回路はない。君たち探掘屋がありがたがるエーテル機関でもね。すべての根幹は管制頭脳、その中にあるエーテル結晶なんだ」
明らかに馬鹿にした様子のアルーフにむっとしたムジカだったが、その言葉に興味を惹かれた。
「それで、あたしはこんなお上品なことに縁がない野蛮人でしてね。用がないんならとっとと野に返してはくれやしませんかね? ミスタ、グレンヴィル?」
ドレスの中で足を組んでまたひとつ、焼き菓子を放り込んだムジカだが、身を乗り出してきたアルーフが言った。
「そうだね、では2つめの質問の答えだ。僕は君に会いたかった。あの蛙型を倒した君に」
先ほども言われたがその表現に違和を持ったムジカは、爛々と淡い瞳を熱っぽく輝かせるアルーフに訂正した。
「あの蛙型を倒したのは、あたしの仲間とだぞ」
「だって、あれは君の所有物だろう?」
あまりにあっさりと言われて、ムジカは一瞬理解が及ばなかった。
アルーフは手指を組み合わせて、ほほえんでいるような曖昧な表情を崩さないまま、続けた。
「さて、3つ目の答えだ。僕は君を解放してやりたいと思っている。僕にはその技術がある。だからね、君と取引をしたいんだ」
「……何を言っているかさっぱりわからねえ」
声だけは平静をたもったムジカだったが、心の内は動揺に荒れ狂っていた。
この男は、ラスが自律兵器だと少なくとも奇械であると疑っている。
しかもあかしたとおり、政府公認探掘隊という公的な人間だ。
どこからかぎつけたのか見当もつかないが、想定する限り最悪の相手だった。
ムジカにできることは一つだけだ、何が何でも認めない。
「ああそんなに警戒しないでくれ。スポンサーには逆らえない身だけれど、これはあくまで僕個人の趣味なんだ」
「趣味? ずいぶん悪趣味なもんだな」
じっと目で人が殺せるのならとうにしているだろうまなざしでにらむムジカに、アルーフは大げさにぶるりほと体を震わせる。
しかし圧倒的に余裕を持っていた。
「怖いなあ。ふむ。まあ君の不安も無理はない。凡人にもわかるよう少々かみ砕いて話をしようか。君が指揮者登録をした機体の話だ。どれだけ魅力的で危険なのか。これは業界でも一部の人間しか知らない話だよ。光栄に思うといい」
ムジカが異論を唱える間もなく、アルーフは悠然と語り始めた。
「僕の研究対象は奇械……さらに言えば自律兵器特有の高度な判断能力の要因についてでね。パーツからエーテル機関、さらには管制頭脳まですべて1から作り上げることを目標としているんだ。さて、解体する君たちにはわかるだろうが、奇械のパーツはほとんどが無機物でできている。そこにあの高度な自律判断を盛り込む余地はないんだよ」
ムジカは、疑問にすら思ったことないことを語られて面食らった。
奇械の判断能力を疑ったことなどない。なぜならそういうものだからだ。
「これは奇械をくみ上げてみるとよくわかるんだがね。ただパーツを複製しただけではあらかじめ設定した動作を繰り返すものにしかならない。物理法則を利用して水をくむだけだったり、おいてあるお茶をとるだけだったり。そもそも音声入力がナンセンスの塊なんだ。今の技術ではどうやったって言語を理解する知能を作り上げることは不可能なんだよ」
「それが遺物の特徴だろ? 今の技術では再現できない技術体系だから高値がつくんだ」
「僕は解き明かした上で言っているんだよ。奇械を構成するパーツのどの部分にもそれだけの判断ができる思考回路はない。君たち探掘屋がありがたがるエーテル機関でもね。すべての根幹は管制頭脳、その中にあるエーテル結晶なんだ」
明らかに馬鹿にした様子のアルーフにむっとしたムジカだったが、その言葉に興味を惹かれた。
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