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奇械探掘2
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「同胞、の定義がわかりません。奇械同士では味方、中立、敵性で判断しますが、これらの機体は自分にとっては中立であり、ムジカの大切な『飯の種』です」
「お前がそういう言い回しを使うと妙な気分だな。どこで拾ってきたんだ」
「現在使われている言い回しの学習のため、探掘坑周辺にいた人間の会話を傍受しました」
「めちゃくちゃ器用なことしてたんだな……?」
ラスが急に世俗的な単語を使い始めた理由を知ったムジカは顔を引きつらせつつも、空いている工具を渡した。
「一番注意しなきゃいけねえのは、高く売れるエーテル機関と、管制頭脳だ。特に管制頭脳は先にエーテル供給を断ち切っとかないとショートするからそこは触るな。お前はとりあえずそっちのコードを外していけ」
「了解しました、ムジカ。現在のエーテル濃度は中度です」
「わかった」
工具をもたせて的確に指示さえ出せば、ラスは良い働き手だった。
エーテル濃度が中度であればまだ問題ないレベルだが、そんなときの眠気は良くない。引きずられてしまわないようしゃべるのが一番いい。
音に敏感な奇械だが人間の声に反応して寄ってくることはないため、気晴らしに独り言をしゃべる探掘屋は多かった。
だから解体作業を進めながら、ラスの手際を眺めていたムジカは、彼に話しかけていた。
「お前、ずいぶんはしゃいでるな」
ラスはコードを巻き取る手を止めて、紫の瞳でムジカを見た。
「はしゃいでいる、というのはどの行動を指していますか」
「遺跡に入ってから、あたしが省略した作業がわかるか。エーテル濃度の計測に、奇械の探索、がれきの除去、マッピング。奇械の制圧はあたしが言うまでもなかったし。生き生きしてるな、お前」
「俺は人のように生命活動をしていないため、その形容は不適切だと判断します。ですが俺の機能が発揮できる環境でしたので、行動判断がスムーズだったと考察します」
「いや、それが生き生きしてるってやつだと思うんだけど」
ムジカが半眼で見やっても、ラスは全く理解した様子はない。
ただそういう風に見える、というのは人間らしく見えるということでもあるのでなかなか悪くない。これほどラスが探掘作業に向いているとは思わず、そこは不本意ながら認めざるを得なかった。
「この調子で洗濯とか料理とかできたらいいんだけどな」
「ムジカは、俺を戦闘のみに従事させないのですか」
「は、なんで?」
虚を突かれてムジカ顔を上げれば、案の定紫の瞳からは感情は読み取れない。が、質問する以上気になっているのは確かのようだ。
「はしゃいでいる、というのが個体に向いた作業に従事している状態を指しているのであれば、俺は戦闘と索敵に適性があります。それのみに従事させるのが効率的なのではありませんか」
「はしゃいでいるってのはそういうことじゃないんだけど。まあそうだなあ、有り体に言うんならもったいない」
「もったいない」
困惑といった様子のラスに、ムジカは工具で自分の肩を叩きながら言った。
「だってお前、ときどきぶっ飛ぶけどそれ以外もできるじゃねえか。どうせ四六時中一緒にいるんだから、苦手でもいろいろできた方があたしが楽できるだろ」
まだつきあいは短いがラスの高性能さはそれなりに実感している。
だからスリアンの「眠らせておくのはもったいない」というのが不本意なが悔しいが納得してしまったムジカなのだった。
「俺を必要以上に連れ歩きたくないのでしたら、必要な場面でのみ連れ出してくだされば問題ないのでは」
「自律兵器だから、使用人型が任されるような仕事は覚えたくないか?」
少々意地悪に問い返せば、ラスは沈黙する。
「なら、所有者登録したやつを間違えたな。あたしは便利なものならどんどん使う。使えなくても使い方を考える。あたしを選んだのが運の尽きだ。せいぜい最大限利用してやるよ」
「……了解しました、ムジカ。戦闘面以外でも役に立てるよう学習します」
わずかな沈黙の後そう答えたラスに、ムジカは鼻を鳴らして解体作業に戻ったのだった。
「お前がそういう言い回しを使うと妙な気分だな。どこで拾ってきたんだ」
「現在使われている言い回しの学習のため、探掘坑周辺にいた人間の会話を傍受しました」
「めちゃくちゃ器用なことしてたんだな……?」
ラスが急に世俗的な単語を使い始めた理由を知ったムジカは顔を引きつらせつつも、空いている工具を渡した。
「一番注意しなきゃいけねえのは、高く売れるエーテル機関と、管制頭脳だ。特に管制頭脳は先にエーテル供給を断ち切っとかないとショートするからそこは触るな。お前はとりあえずそっちのコードを外していけ」
「了解しました、ムジカ。現在のエーテル濃度は中度です」
「わかった」
工具をもたせて的確に指示さえ出せば、ラスは良い働き手だった。
エーテル濃度が中度であればまだ問題ないレベルだが、そんなときの眠気は良くない。引きずられてしまわないようしゃべるのが一番いい。
音に敏感な奇械だが人間の声に反応して寄ってくることはないため、気晴らしに独り言をしゃべる探掘屋は多かった。
だから解体作業を進めながら、ラスの手際を眺めていたムジカは、彼に話しかけていた。
「お前、ずいぶんはしゃいでるな」
ラスはコードを巻き取る手を止めて、紫の瞳でムジカを見た。
「はしゃいでいる、というのはどの行動を指していますか」
「遺跡に入ってから、あたしが省略した作業がわかるか。エーテル濃度の計測に、奇械の探索、がれきの除去、マッピング。奇械の制圧はあたしが言うまでもなかったし。生き生きしてるな、お前」
「俺は人のように生命活動をしていないため、その形容は不適切だと判断します。ですが俺の機能が発揮できる環境でしたので、行動判断がスムーズだったと考察します」
「いや、それが生き生きしてるってやつだと思うんだけど」
ムジカが半眼で見やっても、ラスは全く理解した様子はない。
ただそういう風に見える、というのは人間らしく見えるということでもあるのでなかなか悪くない。これほどラスが探掘作業に向いているとは思わず、そこは不本意ながら認めざるを得なかった。
「この調子で洗濯とか料理とかできたらいいんだけどな」
「ムジカは、俺を戦闘のみに従事させないのですか」
「は、なんで?」
虚を突かれてムジカ顔を上げれば、案の定紫の瞳からは感情は読み取れない。が、質問する以上気になっているのは確かのようだ。
「はしゃいでいる、というのが個体に向いた作業に従事している状態を指しているのであれば、俺は戦闘と索敵に適性があります。それのみに従事させるのが効率的なのではありませんか」
「はしゃいでいるってのはそういうことじゃないんだけど。まあそうだなあ、有り体に言うんならもったいない」
「もったいない」
困惑といった様子のラスに、ムジカは工具で自分の肩を叩きながら言った。
「だってお前、ときどきぶっ飛ぶけどそれ以外もできるじゃねえか。どうせ四六時中一緒にいるんだから、苦手でもいろいろできた方があたしが楽できるだろ」
まだつきあいは短いがラスの高性能さはそれなりに実感している。
だからスリアンの「眠らせておくのはもったいない」というのが不本意なが悔しいが納得してしまったムジカなのだった。
「俺を必要以上に連れ歩きたくないのでしたら、必要な場面でのみ連れ出してくだされば問題ないのでは」
「自律兵器だから、使用人型が任されるような仕事は覚えたくないか?」
少々意地悪に問い返せば、ラスは沈黙する。
「なら、所有者登録したやつを間違えたな。あたしは便利なものならどんどん使う。使えなくても使い方を考える。あたしを選んだのが運の尽きだ。せいぜい最大限利用してやるよ」
「……了解しました、ムジカ。戦闘面以外でも役に立てるよう学習します」
わずかな沈黙の後そう答えたラスに、ムジカは鼻を鳴らして解体作業に戻ったのだった。
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