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解除不能2
しおりを挟む「……はあなんで!?」
その提案にムジカが驚きの声を上げれば、スリアンはにやにやと楽しげな顔をした。
「幸い、こいつは関節さえ隠せば人間に見える。多少人のまねを覚えさせれば、こんな上等な人型奇械が探掘街界隈で泥まみれになってるなんざ誰も思わないさ」
金と暇の有り余った人間の考えることは、どの時代も似たようなものだ。
完全な二足歩行の人型奇械は、愛玩用の高級品と相場が決まっている。
妊娠の心配をせずに楽しめるという触れ込みで、精巧に作られた人型の奇械は存在していた。
だが整備の難しさや燃費の悪さなどで数が少なく、それこそ上流階級にしか流通しないため、ムジカもお目にかかったことはない。
そのため人間にしか見えなければ疑われる心配はないというスリアンの言葉ももっともだったが、ムジカはそれでも抵抗した。
「そんな見つかる可能性があるのに連れ歩くなんて。そうだ、あたしが休眠を命じて隠しておくとか」
「こんな高性能な奇械を使わないでおくのか? そっちの方がもったいないだろうに」
「それならあたしが命じるよ、スリアンのところで働くようにって!」
「うちの手はうちの奇械で十分足りてるし、それはあんたの奇械だろう?」
言質をとられぐぬぬと言葉を飲み込んだムジカに、スリアンはにやにやとした笑みを崩さない。
ムジカがなおも言いつのろうとした矢先、ラスが唐突に口を開く。
「ムジカの安全確保を円滑にするため、そばでの行動を求めます」
「お前には聞いてない!」
八つ当たり気味にラスへとかみついたムジカは、どうやって逃れようかと頭をフル回転させていた。
こんな綺麗な青年にしか見えないものをつれて歩いたら、あらぬ噂が立ちそうだ。
それに、使い道なんて思いつかない。今まで全部一人でやってこられたのだ。
自分の生活に入ってくると思うだけで、ものすごく抵抗感がある。
かといって、これを解体して処分するという選択はこの自律兵器の価値がわかる探掘屋だからこそ取れなかった。
葛藤しているムジカにスリアンは気遣うような、やんわりとした表情になる。
「探掘の手伝いをさせりゃあいい、あんたにもそろそろ相棒が必要だろう?」
「……いるかいらないかはあたしが決める」
「一人で新しいルートを開拓しにいったら、トラブルに巻き込まれたのは?」
痛いところを突かれたムジカは、スカートをしわが寄るまで握った。
「というか、これだけの自律兵器だろ、あたしの稼ぎで動力なんかまかなえないし」
「通常稼働は空気中のエーテルのみで問題ありません」
「……」
ラスの追い打ちに、ムジカが沈黙することしかできなくなる。
スリアンはにんまりと笑った。
「なに、ずっとじゃない。その間に私の方で契約解除法を探してみる。その間の辛抱だ。あんたの借りてるフラットはもう一人くらいふえたって大丈夫だろ。良い働き手ができたと思ってこき使ってやれ」
「あたしの気力が持つ間に、なるべく早く見つけてくれ……」
観念したムジカは、姿勢正しく座るラスを気にする余裕もなく、頭を抱えてうなだれるしかなかったのだった。
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