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第三十話
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月曜の教室は朝から元気に満ち溢れている者、タローのように寝不足らしく気だるそうな者様々だが2日ぶりに友達に会って少々テンションが高い気配がしないでもない。女子達の高い笑い声、ゲームだろうか、スマホを見せ合って話し込む男子のグループ、にぎやかで浮き立った気配は1時間目の予鈴と共に慌ただしくかき消えていく。それもそうだ、いきなりグラマーだから。
「まじきつい・・・。寝たら起こして」
ともう既に眠そうなタローに苦笑しながら頷くと戸が開いて篠崎先生が入ってきた。先生はいつも通りざっと教室を見渡し、めざとく眠そうな学生を見つけると
「鈴木。井上、小島、寝たら次回の補習に強制参加だからな」
とお達しを下し、タローがげぇと声を出して教室が静かな笑いに包まれた。そんな彼を先生は無視すると決めたようで仏頂面のまま一瞥したが、すぐ後ろにいる亮太とふと目があうとすぐに先生から目を逸らした。その態度はごく自然で他の生徒は何も違和感に気づかなかったが__。
おいおいおい先生めちゃくちゃ引きずってるじゃないか!?
授業が始まり、亮太だけが先生の変化に気づき焦り始めた。
いつもなら篠崎先生は入室した時に生徒全員をざっと眺め、最後に亮太をじっと見つめてくるのだ。明らかに何かを思わせぶりな瞳で。授業を行っている時も毎回目があう事は何度かあるし、問題解答の場では男女分け隔てなく当てているものの微妙に亮太が当たる回数は多い。
攻略対象の一人ではあるし自分に気があるんだろうな、どうしようかと亮太は暢気に考えていたのだが。
今日は早々に瞳を逸らされたし授業中も明らかにこちらを見ないようにしている。それ以外は至って自然で特に何をされたわけでもないのだが。
放っておいても別に問題ない・・・だろうか。なんとなくだが篠崎先生は信用できそうな気がするから新堂との事は誰にも話さないとは思う。だからそれについては心配いらない。
けれどそれなら先生エンディングはなくなるって事だよな。他の人達もまだよく知らないうちに一人候補が減っていいのか?いや、通常のゲームなら一人減っても他のキャラクターとエンディングをむかえさえすればクリアになるからいいが、このゲームは「本当に自分が好きな人」だろう? もし先生がその人だとしたらこのままってまずくないか?
ぐるぐると考えているうちに時間があっと言う間に経ち1時間目は終了した。先生が退出してすぐになんとか寝ずに済んだタローはすでに疲れ切った顔で後ろを振り向きざま亮太にささやく。
「ねぇ、なーんか今日篠崎センセ、リョータに絡まなかったよね」
ぎくりとして思わず声が裏返った。
「そ、そうか? 」
「そーだよ。僕、結構見てるもん、リョータに悪い虫がつかないように」
なんだそれ、と表面では笑いつつ亮太は心中穏やかではなかった。
周りにも分かるって、おいおいおい、これ、誤解を解かないとまずくないか。
「まじきつい・・・。寝たら起こして」
ともう既に眠そうなタローに苦笑しながら頷くと戸が開いて篠崎先生が入ってきた。先生はいつも通りざっと教室を見渡し、めざとく眠そうな学生を見つけると
「鈴木。井上、小島、寝たら次回の補習に強制参加だからな」
とお達しを下し、タローがげぇと声を出して教室が静かな笑いに包まれた。そんな彼を先生は無視すると決めたようで仏頂面のまま一瞥したが、すぐ後ろにいる亮太とふと目があうとすぐに先生から目を逸らした。その態度はごく自然で他の生徒は何も違和感に気づかなかったが__。
おいおいおい先生めちゃくちゃ引きずってるじゃないか!?
授業が始まり、亮太だけが先生の変化に気づき焦り始めた。
いつもなら篠崎先生は入室した時に生徒全員をざっと眺め、最後に亮太をじっと見つめてくるのだ。明らかに何かを思わせぶりな瞳で。授業を行っている時も毎回目があう事は何度かあるし、問題解答の場では男女分け隔てなく当てているものの微妙に亮太が当たる回数は多い。
攻略対象の一人ではあるし自分に気があるんだろうな、どうしようかと亮太は暢気に考えていたのだが。
今日は早々に瞳を逸らされたし授業中も明らかにこちらを見ないようにしている。それ以外は至って自然で特に何をされたわけでもないのだが。
放っておいても別に問題ない・・・だろうか。なんとなくだが篠崎先生は信用できそうな気がするから新堂との事は誰にも話さないとは思う。だからそれについては心配いらない。
けれどそれなら先生エンディングはなくなるって事だよな。他の人達もまだよく知らないうちに一人候補が減っていいのか?いや、通常のゲームなら一人減っても他のキャラクターとエンディングをむかえさえすればクリアになるからいいが、このゲームは「本当に自分が好きな人」だろう? もし先生がその人だとしたらこのままってまずくないか?
ぐるぐると考えているうちに時間があっと言う間に経ち1時間目は終了した。先生が退出してすぐになんとか寝ずに済んだタローはすでに疲れ切った顔で後ろを振り向きざま亮太にささやく。
「ねぇ、なーんか今日篠崎センセ、リョータに絡まなかったよね」
ぎくりとして思わず声が裏返った。
「そ、そうか? 」
「そーだよ。僕、結構見てるもん、リョータに悪い虫がつかないように」
なんだそれ、と表面では笑いつつ亮太は心中穏やかではなかった。
周りにも分かるって、おいおいおい、これ、誤解を解かないとまずくないか。
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