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第十五話
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俺にとって登校初日の月曜日は、タロー、秀平と仲良くなり一緒にバレーまでやって、帰宅後は幼馴染の巧くんとやらが出てくると言うとんでもなく情報量の多い1日だったが、その後の3日間はこれと言った大きな出来事もなく平穏に過ぎた。
と言っても知らない奴だらけの空間は、突然転入生になったような物なので緊張の連続ではあったし現在もそれは続いているのだが。
だがしかし。そうして緊張続きだった週末の金曜日、ほっとしかけた所でとんでもない罠が待ち受けていた。
「よし、全員出席してるな」
放課後のがらんとした教室にいるのは数人の生徒と、一人の教師。教壇から彼は生徒の顔一人ひとりに視線を移し、俺のところでぴたりと止まった。目を細め、にやりと言いたげに口元をゆがめる様は悪魔のようだ。グラマーの教師、篠崎先生は笑みを顔に張り付けたままドスの効いた低音でまるで最後通告をするように俺達補講者に告げた。
「容赦なくしごくから完全に覚えて帰れよ」
英語のグラマー担当である篠崎先生の授業は、そのクールな見た目と違い熱血らしいと聞いたのはタローからだった。それを聞いたのはずばり2日前のグラマー当日、俺にとっては初授業だった時で、俺は完全になめきっていた。今までの授業内容は元の世界と同じだから、教師が変わろうとどうにでもなると思っていたし実際どうにかなっていたからだ。しかし今思えば、月曜日の時点でこれから受ける授業内容と担任について一通りタローに聞き、予備知識を持っておくべきだったのだ。特に苦手な科目については。
俺にとって初授業のグラマー当日、よりによって苦手な科目担当が篠崎先生と言う事だけでも衝撃を受けたが、登壇早々に先生が放った「小テストをするぞ」の一言に俺はパニックに陥った。
えー、またー!?と教室内に生徒の悲鳴や非難が飛び交う中、俺は前に座るタローの肩を揺さぶった。
「なに!?小テストって。聞いてないんだけど!」
タローは、苦笑いを浮かべつつ
「はあー。抜き打ちだからいきなり来るよね・・・。ま、頑張るしかないよ。先生怖いし」
と諦めた風につぶやく。
「怖い!?先生怖いってなんだよ!?」
「え。なに今更」
とタローがきょとんとした所で、無情にも前の席から小テスト用紙が配られてきた。用紙を俺に素早く回し、がんばろーねと前を向きかけた彼の背中に俺はこれが最後と縋りつく。
「範囲!テストの範囲は!?」
「ほんとどうしたの?前回やった分のはずだよ」
再び、がんばろーねーと間延びした声をかけられつつ俺は一人絶望した。
グラマーは苦手な科目だから、中間期末のテスト勉強こそ嫌々ながらするものの、なるべく関わりたくないので何もしない。元の世界では抜き打ちテストなんてなかったからそれこそ放ったからしだった。よって前回学んだ事なんてすっかり忘れている。案の定小テストの問題を見てもさっぱりだった。
終わった。なんか分らんが終わった。
その後行われたグラマーの授業は、先生が特別怖いだとかスパルタだとか言う感じはなかったが、なぜか授業中居眠りする生徒もさぼっている生徒も見かけずもちろん私語をする生徒はいる筈もなく、皆必死に先生の話を聞き、ノートを取り、やけに静かな教室に緊迫した雰囲気が感じられた。聞き漏らすまい、内容を理解しようと言う周囲の必死さが伝わってくる。
一週間観察した限りでは、他の授業ではこれほどではなかった。なぜ皆こんなに必死にグラマーの授業を受けるのだろうという事と、先生が怖いと言う真の理由は、翌日クラス担任から、グラマー小テストの合格点を満たさなかった者に渡される「補講対象者リスト」を俺がもらい、それをタローに見せたことで明らかになる。
と言っても知らない奴だらけの空間は、突然転入生になったような物なので緊張の連続ではあったし現在もそれは続いているのだが。
だがしかし。そうして緊張続きだった週末の金曜日、ほっとしかけた所でとんでもない罠が待ち受けていた。
「よし、全員出席してるな」
放課後のがらんとした教室にいるのは数人の生徒と、一人の教師。教壇から彼は生徒の顔一人ひとりに視線を移し、俺のところでぴたりと止まった。目を細め、にやりと言いたげに口元をゆがめる様は悪魔のようだ。グラマーの教師、篠崎先生は笑みを顔に張り付けたままドスの効いた低音でまるで最後通告をするように俺達補講者に告げた。
「容赦なくしごくから完全に覚えて帰れよ」
英語のグラマー担当である篠崎先生の授業は、そのクールな見た目と違い熱血らしいと聞いたのはタローからだった。それを聞いたのはずばり2日前のグラマー当日、俺にとっては初授業だった時で、俺は完全になめきっていた。今までの授業内容は元の世界と同じだから、教師が変わろうとどうにでもなると思っていたし実際どうにかなっていたからだ。しかし今思えば、月曜日の時点でこれから受ける授業内容と担任について一通りタローに聞き、予備知識を持っておくべきだったのだ。特に苦手な科目については。
俺にとって初授業のグラマー当日、よりによって苦手な科目担当が篠崎先生と言う事だけでも衝撃を受けたが、登壇早々に先生が放った「小テストをするぞ」の一言に俺はパニックに陥った。
えー、またー!?と教室内に生徒の悲鳴や非難が飛び交う中、俺は前に座るタローの肩を揺さぶった。
「なに!?小テストって。聞いてないんだけど!」
タローは、苦笑いを浮かべつつ
「はあー。抜き打ちだからいきなり来るよね・・・。ま、頑張るしかないよ。先生怖いし」
と諦めた風につぶやく。
「怖い!?先生怖いってなんだよ!?」
「え。なに今更」
とタローがきょとんとした所で、無情にも前の席から小テスト用紙が配られてきた。用紙を俺に素早く回し、がんばろーねと前を向きかけた彼の背中に俺はこれが最後と縋りつく。
「範囲!テストの範囲は!?」
「ほんとどうしたの?前回やった分のはずだよ」
再び、がんばろーねーと間延びした声をかけられつつ俺は一人絶望した。
グラマーは苦手な科目だから、中間期末のテスト勉強こそ嫌々ながらするものの、なるべく関わりたくないので何もしない。元の世界では抜き打ちテストなんてなかったからそれこそ放ったからしだった。よって前回学んだ事なんてすっかり忘れている。案の定小テストの問題を見てもさっぱりだった。
終わった。なんか分らんが終わった。
その後行われたグラマーの授業は、先生が特別怖いだとかスパルタだとか言う感じはなかったが、なぜか授業中居眠りする生徒もさぼっている生徒も見かけずもちろん私語をする生徒はいる筈もなく、皆必死に先生の話を聞き、ノートを取り、やけに静かな教室に緊迫した雰囲気が感じられた。聞き漏らすまい、内容を理解しようと言う周囲の必死さが伝わってくる。
一週間観察した限りでは、他の授業ではこれほどではなかった。なぜ皆こんなに必死にグラマーの授業を受けるのだろうという事と、先生が怖いと言う真の理由は、翌日クラス担任から、グラマー小テストの合格点を満たさなかった者に渡される「補講対象者リスト」を俺がもらい、それをタローに見せたことで明らかになる。
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