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第八話
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タローにずるずると引きずられ連れて来られた先は、体育館だった。体育館の入り口で一旦立ち止まったタローは、扉を開け頭だけ突っ込み、何か一言二言しゃべると大きくうなずいてこちらに笑顔を向けた。
「だいじょーぶだって!」
だからなんのだよと言う俺のつぶやきは再び無視され、仕方なくタローに続いて体育館に入る。中を見て思わず拍子抜けした。
「なんだ」
体育館の真ん中で輪になって準備体操している男子達の傍には、ネットの張られた1面分のコートと、かごに入ったいくつもの真っ白なボールがあった。男子バレー部の部活動だ。足を止め、何となく彼らを眺めていた俺は見知った顔を見つけた。
メンバーの中に黒田秀平がいる。体格のいい彼は他の部員の中にいてもよく目立った。
「あ」
思わず彼を見つめていると目が合った。秀平は真顔のまま了承していると言うように軽く頷き、人差し指を立てて天井を指した。
「あ?」
「ちょっとリョータ!何ぼーっとしてるんだよ、上行こ、上!」
取って返してきたタローに再び腕をつかまれ、俺はやっと合点がいった。
「見学すんの?バレー部?」
「何度もそう言ってるじゃん!」
何か釈然としない気持ちのまま、タローと一緒に2階の見学席へ向かう。誰もいない広々とした席に居心地が悪く感じながらも、前方の席に隣り合って座った。部員たちはまだ準備体操をしている。手持無沙汰でなんとなくタローに問いかけた。
「いつも見学してんの?」
「ううん、初めて。ほら、北村先生厳しいからさー」
北村先生が分からないが、見学可否は顧問によって考え方が違う。大方顧問がいない時は部員はこっそり自由にやってるんだろうと思った。
「だいじょーぶだって!」
だからなんのだよと言う俺のつぶやきは再び無視され、仕方なくタローに続いて体育館に入る。中を見て思わず拍子抜けした。
「なんだ」
体育館の真ん中で輪になって準備体操している男子達の傍には、ネットの張られた1面分のコートと、かごに入ったいくつもの真っ白なボールがあった。男子バレー部の部活動だ。足を止め、何となく彼らを眺めていた俺は見知った顔を見つけた。
メンバーの中に黒田秀平がいる。体格のいい彼は他の部員の中にいてもよく目立った。
「あ」
思わず彼を見つめていると目が合った。秀平は真顔のまま了承していると言うように軽く頷き、人差し指を立てて天井を指した。
「あ?」
「ちょっとリョータ!何ぼーっとしてるんだよ、上行こ、上!」
取って返してきたタローに再び腕をつかまれ、俺はやっと合点がいった。
「見学すんの?バレー部?」
「何度もそう言ってるじゃん!」
何か釈然としない気持ちのまま、タローと一緒に2階の見学席へ向かう。誰もいない広々とした席に居心地が悪く感じながらも、前方の席に隣り合って座った。部員たちはまだ準備体操をしている。手持無沙汰でなんとなくタローに問いかけた。
「いつも見学してんの?」
「ううん、初めて。ほら、北村先生厳しいからさー」
北村先生が分からないが、見学可否は顧問によって考え方が違う。大方顧問がいない時は部員はこっそり自由にやってるんだろうと思った。
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