7 / 33
第六話
しおりを挟む
太郎とやらに引っ張られながら教室に入る間、俺は謎のゲーム開始を告げて来たパソコン画面を思い出していた。画面に表示されていた説明文いわく、学校の構造や俺のクラスや席、授業の進み具合はゲーム開始前と同じだから安心して良い、との事。全てが初めてづくしだったらゲームを開始するも何も日常生活を送るだけで手いっぱいになりそうだったので、その設定には少しほっとした。ただ現実のIf世界のため、クラスメイトや教師は全く知らない人ばかり、学校外で出会う人物も両親と親戚縁者を除いて全く知らない赤の他人だらけだと言う事だった。
教室に入ってざっとクラスメイト達の顔を見るが、確かに男子も女子も知らない奴ばかりだ。おはよう、と声をかけてきくれたやはり誰か分からない男子にあいまいな笑顔を返しながら、早く顔を名前を覚えなければと気持ちが焦った。
太郎は俺の真ん前の席のようで、現国の宿題、難しかったよねー?と俺に声をかけながらナップサックから手際よく教科書やノートを取り出し机の中にしまっていく。トリコロールの洒落た筆箱やノートを机の上にきれいに並べ、女子みてぇ、と思うと同時に私服とかおしゃれそうだなと感じた。
「鈴木」
「あ、おはよー、しゅーへー」
太郎に声をかけた男子に顔を向ける。目が合い、相手に低い声でおはよう、と言われ、お、おはようとどもりながらも返事をした。
でけぇ。
太郎とは対照的な、運動部なのだろう、よく灼けた肌に180センチはありそうな高身長、短く刈り上げられた黒髪に切れ長の瞳。ぱっと見は分かりやすい派手顔美男子タイプではないが、全体的に見ると格好いいかもしれない。いわゆる雰囲気イケメンと言うやつか。いかにも女子にモテそうな風貌だが、その鋭い瞳は一瞬簡単には人をよせつけないぶっきらぼうな感じがした。
それにしても、太郎って鈴木太郎って言うのか!そりゃこのハーフ風美少年ルックスではなおさら嫌すぎるだろう。現に先生に名前を呼ばれた時にすごく嫌がっていたし俺も名前を呼ばない事はもちろん、彼の地雷っぽい名前の話題にも触れないように気をつけなければ。
悪いと思いつつこみあげる笑いを抑えるため思わず顔を伏せた。太郎達はそんな俺の様子に気付かずに二人で会話を続けている。
「現国の宿題、写させてくれるか」
「えー、またかぁ。今度ジュースおごってね」
太郎の言葉に、しゅうへいと呼ばれている男子はわかった、と真顔でうなずき、ありがとうとつぶやくとノートを持って自分の机に戻っていく。
「あれ。冗談だったのに。しゅーへーは真面目だからなぁー」
太郎としゅうへいって奴は仲がいいんだな。なんとなく太郎の顔を見続けていると、彼と目が合い、
「あ、嫉妬した?やだなぁ、僕はリョータ一筋だってー」
と、こてんと首をかしげ、上目遣いで照れ笑いをされた俺は思わず頬をひきつって苦笑いした。
あざといってこういう事を言うんだろうな。こんな分かりやすい態度でキュンと来る奴なんているんだろうか。ゲームじゃあるまいしって、これはゲームだった。だからとりあえずこいつも恐らくゲーム対象なんだろう。気をつける観察対象その2だ。
教室に入ってざっとクラスメイト達の顔を見るが、確かに男子も女子も知らない奴ばかりだ。おはよう、と声をかけてきくれたやはり誰か分からない男子にあいまいな笑顔を返しながら、早く顔を名前を覚えなければと気持ちが焦った。
太郎は俺の真ん前の席のようで、現国の宿題、難しかったよねー?と俺に声をかけながらナップサックから手際よく教科書やノートを取り出し机の中にしまっていく。トリコロールの洒落た筆箱やノートを机の上にきれいに並べ、女子みてぇ、と思うと同時に私服とかおしゃれそうだなと感じた。
「鈴木」
「あ、おはよー、しゅーへー」
太郎に声をかけた男子に顔を向ける。目が合い、相手に低い声でおはよう、と言われ、お、おはようとどもりながらも返事をした。
でけぇ。
太郎とは対照的な、運動部なのだろう、よく灼けた肌に180センチはありそうな高身長、短く刈り上げられた黒髪に切れ長の瞳。ぱっと見は分かりやすい派手顔美男子タイプではないが、全体的に見ると格好いいかもしれない。いわゆる雰囲気イケメンと言うやつか。いかにも女子にモテそうな風貌だが、その鋭い瞳は一瞬簡単には人をよせつけないぶっきらぼうな感じがした。
それにしても、太郎って鈴木太郎って言うのか!そりゃこのハーフ風美少年ルックスではなおさら嫌すぎるだろう。現に先生に名前を呼ばれた時にすごく嫌がっていたし俺も名前を呼ばない事はもちろん、彼の地雷っぽい名前の話題にも触れないように気をつけなければ。
悪いと思いつつこみあげる笑いを抑えるため思わず顔を伏せた。太郎達はそんな俺の様子に気付かずに二人で会話を続けている。
「現国の宿題、写させてくれるか」
「えー、またかぁ。今度ジュースおごってね」
太郎の言葉に、しゅうへいと呼ばれている男子はわかった、と真顔でうなずき、ありがとうとつぶやくとノートを持って自分の机に戻っていく。
「あれ。冗談だったのに。しゅーへーは真面目だからなぁー」
太郎としゅうへいって奴は仲がいいんだな。なんとなく太郎の顔を見続けていると、彼と目が合い、
「あ、嫉妬した?やだなぁ、僕はリョータ一筋だってー」
と、こてんと首をかしげ、上目遣いで照れ笑いをされた俺は思わず頬をひきつって苦笑いした。
あざといってこういう事を言うんだろうな。こんな分かりやすい態度でキュンと来る奴なんているんだろうか。ゲームじゃあるまいしって、これはゲームだった。だからとりあえずこいつも恐らくゲーム対象なんだろう。気をつける観察対象その2だ。
0
お気に入りに追加
27
あなたにおすすめの小説
エレベーターで一緒になった男の子がやけにモジモジしているので
こじらせた処女
BL
大学生になり、一人暮らしを始めた荒井は、今日も今日とて買い物を済ませて、下宿先のエレベーターを待っていた。そこに偶然居合わせた中学生になりたての男の子。やけにソワソワしていて、我慢しているというのは明白だった。
とてつもなく短いエレベーターの移動時間に繰り広げられる、激しいおしっこダンス。果たして彼は間に合うのだろうか…
告白ゲームの攻略対象にされたので面倒くさい奴になって嫌われることにした
雨宮里玖
BL
《あらすじ》
昼休みに乃木は、イケメン三人の話に聞き耳を立てていた。そこで「それぞれが最初にぶつかった奴を口説いて告白する。それで一番早く告白オッケーもらえた奴が勝ち」という告白ゲームをする話を聞いた。
その直後、乃木は三人のうちで一番のモテ男・早坂とぶつかってしまった。
その日の放課後から早坂は乃木にぐいぐい近づいてきて——。
早坂(18)モッテモテのイケメン帰国子女。勉強運動なんでもできる。物静か。
乃木(18)普通の高校三年生。
波田野(17)早坂の友人。
蓑島(17)早坂の友人。
石井(18)乃木の友人。
咳が苦しくておしっこが言えなかった同居人
こじらせた処女
BL
過労が祟った菖(あやめ)は、風邪をひいてしまった。症状の中で咳が最もひどく、夜も寝苦しくて起きてしまうほど。
それなのに、元々がリモートワークだったこともあってか、休むことはせず、ベッドの上でパソコンを叩いていた。それに怒った同居人の楓(かえで)はその日一日有給を取り、菖を監視する。咳が止まらない菖にホットレモンを作ったり、背中をさすったりと献身的な世話のお陰で一度長い眠りにつくことができた。
しかし、1時間ほどで目を覚ましてしまう。それは水分をたくさんとったことによる尿意なのだが、咳のせいでなかなか言うことが出来ず、限界に近づいていき…?
真冬の痛悔
白鳩 唯斗
BL
闇を抱えた王道学園の生徒会長、東雲真冬は、完璧王子と呼ばれ、真面目に日々を送っていた。
ある日、王道転校生が訪れ、真冬の生活は狂っていく。
主人公嫌われでも無ければ、生徒会に裏切られる様な話でもありません。
むしろその逆と言いますか·····逆王道?的な感じです。
無自覚美少年のチート劇~ぼくってそんなにスゴいんですか??~
白ねこ
BL
ぼくはクラスメイトにも、先生にも、親にも嫌われていて、暴言や暴力は当たり前、ご飯もろくに与えられない日々を過ごしていた。
そんなぼくは気づいたら神さま(仮)の部屋にいて、呆気なく死んでしまったことを告げられる。そして、どういうわけかその神さま(仮)から異世界転生をしないかと提案をされて―――!?
前世は嫌われもの。今世は愛されもの。
自己評価が低すぎる無自覚チート美少年、爆誕!!!
****************
というようなものを書こうと思っています。
初めて書くので誤字脱字はもちろんのこと、文章構成ミスや設定崩壊など、至らぬ点がありすぎると思いますがその都度指摘していただけると幸いです。
暇なときにちょっと書く程度の不定期更新となりますので、更新速度は物凄く遅いと思います。予めご了承ください。
なんの予告もなしに突然連載休止になってしまうかもしれません。
この物語はBL作品となっておりますので、そういうことが苦手な方は本作はおすすめいたしません。
R15は保険です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる