【エヴリスタコンテスト受賞しました】救世主(仮)が救世主を探します!

浅野新

文字の大きさ
19 / 21
第18話

真の救世主

しおりを挟む
その後私達は、黄金国の王宮へ帰った。日も傾き始め、皆が一旦自室へ戻る中、私は一人外に出て、庭園を奥へと進んで行った。

茂みで覆われた誰もいない静かな場所に来て、座り込み、しばらくじっと考え込んだ。

三人でもなかった・・。
三つの国に行けば分かる筈だったのに。
三つの国に行けば・・。


・・もしかしたら!


閃いたその時、突然茂みが揺れ、セドリックが現れた。

「!! びっくりした! どうしたの」
「そっちこそ。マコトがこっちに行くのが見えたから、その」

「別に何でも・・・あの、さ、セドリック」
私は逸る気持ちを抑えながら、彼のハンカチを差し出した。
「これ、ありがとう。結局使わなかったんだけど。忘れててごめん」
「ああ、それか。いつでもいいのに」
と右手を差し出したセドリックにハンカチを渡した瞬間、私はぎゅっと彼の手を握り締めた。

「!! なんっ・・!!」

 彼が顔を真っ赤にさせたのもつかの間、それは驚愕の色に変わった。

 私が握った彼の右手が、うっすらと白く光ったかと思うと、手の周囲が白く点滅し、光り始めたのだ。

 ティンカー・ベルのフルーパウダーのように静かに、美しく明滅している。

 セドリックは握られた右手を見ながら、困惑した顔で
「こ、これって・・王の・・」
とつぶやいた。

うん。そう。そうなんだ、セドリック。
 私はゆっくりと頷いた。

「うん。セドリックも王族の人なら知ってるよね。これが王の証。__君が王だったんだ、セドリック」

「な・・!? だ、だって、マコト、君が王だろう!? 異世界の救世主だって、予言が外れるなんて・・!! 」

 私は頭を振った。

「予言はよく分からない。でも、・・あの、僕が王のわけはないんだ」

 ここで軽く深呼吸した。

 セドリックは当惑した顔で私を見つめている。
 沈黙が過ぎる。
 怖い気持ちが昇ってきそうになったその時、今までのセドリックとの事が、鮮明に目の前に蘇った。

 料理を手伝ってくれた事。文句を言いながらもどこでも付いてきてくれた事。舞踏会の思い出。困った時はいつでも助けてくれていた。

 大丈夫。セドリックならきっと、分かってくれる。
 私は彼の顔を見据え、ゆっくりと言った。私の声で、私の言葉で。
一言一言、かみ締めるように。


「わたし、男じゃない。本当は、女なんだ」


 彼の瞳が軽く見開かれた。
 綺麗なブルーアイ。そう、いつも思ってた。


 彼は下を向き、小さく息をはいた。
 暫しの沈黙。
「・・・そうじゃないかと思ってた」
 今度は私が彼を凝視する番だった。
 セドリックは口を開きかけ、閉じ、何かを吹っ切るように、又口を開いた。顔は横を向いているので表情がよく分からない。

「ドレス。・・・似合いすぎてたから」

 私はみるみる耳まで赤くなるのが分かった。そうして、自分がまだセドリックと手を握り合っている事に気付いて心臓の鼓動が最高潮に早くなった。

 セドリックは全くそれに気付いてない様子で手を握ったまま何事かを考えている。
「・・・僕が王か」
 ぽつりと言った。困惑気味の顔で。
 私は火照った頭を落ち着かせようと左右に振った。


 それはそうだよね。戸惑う気持ちは物凄くよく分かる。いきなりの指名で、彼はまだ私と同い年の、まだたった十六歳なのだから。

 でも。

 でも、私には自信があった。

 セドリック、と私は彼の顔を見つめた。
「大丈夫だよ。私、この旅を通して思ったんだ。王は、完璧な存在でなくてもいいんだって。最初は、何でも一人で考えて、決めて、実行できる人が王だと思ってた。でも、皆が私の事を王だと思ってくれてた時、皆が助けてくれて本当にうれしかった。ただあがり奉られてただけだったら、何もできなかったもん。それに、赤と青と白の国に行った時、それぞれの王様はすごく立派だったけど、皆何かが足りなかった。それはね、相手の意見を聞いてそれをまとめる力。セドリックは・・口はちょっと悪いかもしれないけど、いつも皆の意見を聞いて、大事な所では決めてくれてた。全ての国を統べる王となる人は、それが大事だと思うの」

 ここでちょっと私は一息ついた。

「大丈夫だよ。黄金の国にはバドもアレクセイもララもエヴァもいる。皆に助けてもらったらいいんだよ。勿論他の国の王様達にも」
「・・そうだな」
 セドリックは、うつむき加減に優しく微笑んだ。それは充分知っている、というように。

「ただ、口が悪い、は余計だ」
 セドリックと私は顔を見合わせ、ちょっと笑った。

 ああ、そうだ。いけない。忘れていた。

 私は片方の膝を地面につき、彼の手を改めて強く握った。

 エヴァに教えてもらったんだ。正式な王の証明。王の宣言。

「ここに、私、マコトはセドリックを王として認めます」

 その瞬間。

「わあ・・・!!」

 思わず私達は歓声をあげた。
 セドリックの手がますます白く輝き、やがてそれは彼の体を包んで彼の周りを明滅し始めたのだ。
 小さな、でも美しい白い光が、幾重にも蛍のように彼の周りを飛び、光っている。太陽も沈みかけた黄昏時の中、それは息を呑む美しさだった。

「きれい・・! 」
 まるで彼の輝かしい未来を祝福しているような。


 セドリックは左手も差し出し、ひざまずいていた私を立ち上がらせた。
 繋がれた両手から、さらにたくさんの光が明滅する。 
私達はしばらくその光に見とれていた。すると私達の両手が一層眩く光り、空中に何かが出現した。それは__、

「〝時の階段″!!」
 私達はそろって声を上げた。

 セドリックは宙に浮く二つの小箱をしげしげと眺め、
「そうか。王が決まったから出てきたんだな」
 とつぶやき、片手でそっと二つの箱を取ってポケットの中に入れた。
そうして彼は、私の両手を握りなおした。先程よりも強く。

 え。

顔を上げると、彼は真剣な表情で私を見ている。
「これでもう・・・帰れるんだな、君の世界へ。マコト」
 

 あ。
 一瞬、瞳の揺れるのが分かった。

 異世界の救世主。
 そう、そうなんだ。
王の決定、時の階段の出現。私の役目は終わったんだ。
 最初の頃は、あんなに故郷へ帰りたいと願っていたのに。
 なんで今はこんなに。


 目頭が熱くなってきて、私はただ、頷いた。足元まで明滅している彼の靴を見ながら。


 暫し沈黙。
「・・・そうか」

 セドリックは両手を握ったまま、ゆっくりと私に近付き、片手を離して、私の背中をぎこちなく抱き寄せた。

壊れ物を扱うように、
そおっと。そおっと。
 彼はもう一度つぶやく。

「・・・そうか」

 私はセドリックの肩にそっと顔を寄せ、彼の肩越しに、握り合ったままの右手を見つめた。
 手から零れ落ちるほどの白い蛍火が私達を包みこむ。

 ぼわっと光り、闇に消え。
 幾重にも幾重にも、
 淡く、強く。淡く、強く。


 それは、涙が出るほど、美しかった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

巻き込まれて異世界召喚? よくわからないけど頑張ります。  〜JKヒロインにおばさん呼ばわりされたけど、28才はお姉さんです〜

トイダノリコ
ファンタジー
会社帰りにJKと一緒に異世界へ――!? 婚活のために「料理の基本」本を買った帰り道、28歳の篠原亜子は、通りすがりの女子高生・星野美咲とともに突然まぶしい光に包まれる。 気がつけばそこは、海と神殿の国〈アズーリア王国〉。 美咲は「聖乙女」として大歓迎される一方、亜子は「予定外に混ざった人」として放置されてしまう。 けれど世界意識(※神?)からのお詫びとして特殊能力を授かった。 食材や魔物の食用可否、毒の有無、調理法までわかるスキル――〈料理眼〉! 「よし、こうなったら食堂でも開いて生きていくしかない!」 港町の小さな店〈潮風亭〉を拠点に、亜子は料理修行と新生活をスタート。 気のいい夫婦、誠実な騎士、皮肉屋の魔法使い、王子様や留学生、眼帯の怪しい男……そして、彼女を慕う男爵令嬢など個性豊かな仲間たちに囲まれて、"聖乙女イベントの裏側”で、静かに、そしてたくましく人生を切り拓く異世界スローライフ開幕。 ――はい。静かに、ひっそり生きていこうと思っていたんです。私も.....(アコ談) *AIと一緒に書いています*

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―

ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」 前世、15歳で人生を終えたぼく。 目が覚めたら異世界の、5歳の王子様! けど、人質として大国に送られた危ない身分。 そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。 「ぼく、このお話知ってる!!」 生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!? このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!! 「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」 生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。 とにかく周りに気を使いまくって! 王子様たちは全力尊重! 侍女さんたちには迷惑かけない! ひたすら頑張れ、ぼく! ――猶予は後10年。 原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない! お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。 それでも、ぼくは諦めない。 だって、絶対の絶対に死にたくないからっ! 原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。 健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。 どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。 (全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

【完結】魔法大戦 〜失われた古代魔法で無双する!〜

加瀬 一葉
ファンタジー
 王立魔法学校。高等部に編入してきた冴えない生徒ラフィト。エリートが集うこの学校で、辺境出身のラフィトは落ちこぼれの劣等生なのだが……。  実は彼は、失われたはずの古代魔法を操る一族の末裔。魔族の脅威が増す時代に、ラフィトは人類を救うことができるのか?  過去と現在が交錯する、魔法ファンタジー。

うちの孫知りませんか?! 召喚された孫を追いかけ異世界転移。ばぁばとじぃじと探偵さんのスローライフ。

かの
ファンタジー
 孫の雷人(14歳)からテレパシーを受け取った光江(ばぁば64歳)。誘拐されたと思っていた雷人は異世界に召喚されていた。康夫(じぃじ66歳)と柏木(探偵534歳)⁈ をお供に従え、異世界へ転移。料理自慢のばぁばのスキルは胃袋を掴む事だけ。そしてじぃじのスキルは有り余る財力だけ。そんなばぁばとじぃじが、異世界で繰り広げるほのぼのスローライフ。  ばぁばとじぃじは無事異世界で孫の雷人に会えるのか⁈

転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする

ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。 リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。 これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。

処理中です...