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第15話
アシュマンとザルー
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いよいよ大運動会まであと三日と迫った時、クレイがやって来た。
「一つ、相談したい事があるのだが。片翼のアシュマンと呼ばれている男がいる。・・・そう、彼の翼は一枚しかないのだ。もう一枚あるにはあるが、異常に小さい。怪我のせいでね。で、彼がリレーに選手として出たいと言ってきた。リレーは、貴殿が決めた通り有翼人は飛んで速さを争う。彼なら一般有翼人の半分の力も出ない。無理だろうと思って、とりあえず平等の天秤に乗せて見た。そうしたらだ。なんと優秀な有翼人リレー選手と同じ能力だったのだ。彼は両翼があった時、優れた飛び手だったとは聞いていたが・・。本人にとって片方で飛ぶのは辛かろうと思うのだが」
「そうなんだ。ちょっと考えてみるよ」
するとなんと、同じ日にギルディアもやって来た。
「全盲のザルーと言うドラゴンがいる。こやつがリレーに出たいと言ってきた。ドラゴンは走る事になっているが、歩幅は大きいものの元々走る事は得意でない。しかも全盲じゃ! 無理だと思ったのだが」
「あー、はいはい、平等の天秤で問題がなかったわけだね」
アシュマン、ザルーか。会ってみたいな。
私はララとセドリックを連れ、二人がいると言う練習場に行って見た。
彼らは皆の邪魔にならないよう、離れた所で練習していた。
アシュマンは片方の翼で飛んでいるとは思えないほど、速かった。二百メートルを風を切るように飛びぬける。
「すごい!! 」
苦しそうな顔で呼吸していた彼は、私達を見ると、恥ずかしそうに微笑んだ。
「ありがとう。えーと、あなた達は・・」
「あ、あの、黄金国の大会関係者なんだ。僕達もこの大会に興味があって、視察に来て」
「そうですか。私とザルーは、あのドラゴンの名前ですが、周りから変人扱いされてるんです。有翼人とドラゴンが仲が良いなんて、と。と言っても、ほんの少ししゃべっただけでですよ? 実際話し始めたのは昨日ぐらいからです。今までドラゴン族には、声をかけた事もなかったのですが。粗野で乱暴な種族と聞いていて。実際会ってみても怖い顔してるし。でも、あいつは黙々と頑張ってる。私のように不便あってもね。あいつは、他の奴らと違うような気がするんです」
「アシュマン」
ザルーがこちらに向かって、ぶっきらぼうに言った。
「調子が良いな。見えずとも分かる。羽音が違う」
すると、アシュマンの顔に、みるみる微笑が広がった。彼は、えへん、と咳払いした。
「あ、あなたも、中々のものですよ」
お互い、まだぎこちないけれど良い感じ! こんなに頑張っていて、優秀な二人を出さない訳にはいかないよね。
私は早速クレイとギルディアに伝えた。
「いいじゃないか、出しなよ。王の命令だ! 」
二人は、軽くため息をついた。
「王よ、後悔されても知らぬぞ」
私は、その時クレイが言った意味をまだ理解していなかった。
「一つ、相談したい事があるのだが。片翼のアシュマンと呼ばれている男がいる。・・・そう、彼の翼は一枚しかないのだ。もう一枚あるにはあるが、異常に小さい。怪我のせいでね。で、彼がリレーに選手として出たいと言ってきた。リレーは、貴殿が決めた通り有翼人は飛んで速さを争う。彼なら一般有翼人の半分の力も出ない。無理だろうと思って、とりあえず平等の天秤に乗せて見た。そうしたらだ。なんと優秀な有翼人リレー選手と同じ能力だったのだ。彼は両翼があった時、優れた飛び手だったとは聞いていたが・・。本人にとって片方で飛ぶのは辛かろうと思うのだが」
「そうなんだ。ちょっと考えてみるよ」
するとなんと、同じ日にギルディアもやって来た。
「全盲のザルーと言うドラゴンがいる。こやつがリレーに出たいと言ってきた。ドラゴンは走る事になっているが、歩幅は大きいものの元々走る事は得意でない。しかも全盲じゃ! 無理だと思ったのだが」
「あー、はいはい、平等の天秤で問題がなかったわけだね」
アシュマン、ザルーか。会ってみたいな。
私はララとセドリックを連れ、二人がいると言う練習場に行って見た。
彼らは皆の邪魔にならないよう、離れた所で練習していた。
アシュマンは片方の翼で飛んでいるとは思えないほど、速かった。二百メートルを風を切るように飛びぬける。
「すごい!! 」
苦しそうな顔で呼吸していた彼は、私達を見ると、恥ずかしそうに微笑んだ。
「ありがとう。えーと、あなた達は・・」
「あ、あの、黄金国の大会関係者なんだ。僕達もこの大会に興味があって、視察に来て」
「そうですか。私とザルーは、あのドラゴンの名前ですが、周りから変人扱いされてるんです。有翼人とドラゴンが仲が良いなんて、と。と言っても、ほんの少ししゃべっただけでですよ? 実際話し始めたのは昨日ぐらいからです。今までドラゴン族には、声をかけた事もなかったのですが。粗野で乱暴な種族と聞いていて。実際会ってみても怖い顔してるし。でも、あいつは黙々と頑張ってる。私のように不便あってもね。あいつは、他の奴らと違うような気がするんです」
「アシュマン」
ザルーがこちらに向かって、ぶっきらぼうに言った。
「調子が良いな。見えずとも分かる。羽音が違う」
すると、アシュマンの顔に、みるみる微笑が広がった。彼は、えへん、と咳払いした。
「あ、あなたも、中々のものですよ」
お互い、まだぎこちないけれど良い感じ! こんなに頑張っていて、優秀な二人を出さない訳にはいかないよね。
私は早速クレイとギルディアに伝えた。
「いいじゃないか、出しなよ。王の命令だ! 」
二人は、軽くため息をついた。
「王よ、後悔されても知らぬぞ」
私は、その時クレイが言った意味をまだ理解していなかった。
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