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学校が終わって家へ帰ると、玄関に見慣れないダンボールが置いてあった。見ると、紙パックのお茶がワンケース分も入っているようだ。
ダンボールの上には二つ折りの真っ赤な紙が貼られている。
これってもしかして。
ぴんと来た。
急いで中を開けると、印刷の文字で
「赤の男爵」
とだけ書いてあった。
さすが赤の男爵だ。
あの時からまだ三日しか立っていないのに。
思わず顔がにやけてしまった。
その時の僕に、これから起こる事がどうして予測できただろう。
翌日の放課後、北島先生に呼ばれた。学長が呼んでいると言う。訳を尋ねても先生は笑って答えてくれない。
「大丈夫だよ、叱られる訳じゃないから」
そう言われても安心はできない。入学してまだ一ヶ月にも満たないと言うのに一体何だろう、と僕は恐る恐る学長室へ入った。
学長は壁まである大きな本棚を背後に、がっしりとした机に座っていた。きれいに禿げ上がったゆで卵のような頭、丸く艶々した顔に真っ白で豊かな口ひげをたくわえ、本当に人の良さそうな顔をしていた。
顎鬚を伸ばせばサンタクロースだ。
和製サンタクロース、いや学長がにこにこしながら、や、君が藤堂君かね。突然すまないね、と切り出した。
「ああ、そんなに緊張しないで。君は何も悪い事をしていないし、第一、君の事じゃないんだ。・・・あのね」
学長が声を潜める。
「・・・君、赤の男爵を見たんだって?詳しい話を聞かせてくれないかな。・・・いやー、実は僕は彼の大ファンでね、はは、こんな事恥ずかしくって皆の前で聞けなくってねえ」
僕はどうして知ってるんですか、と言いそうになり思いとどまった。
何故僕が男爵に会った事を学長が知っているのだろう。僕は親友の田中を思い出し、すぐに打ち消した。
確かに彼にだけ赤の男爵に会った話はしたが、絶対誰にも言わないようにと口止めした。田中は約束を破る奴じゃない。ただ彼はこんな事を言っていた。
「最近警察も厳しくってさ、広く情報提供を呼びかけたり、あちこちで張ってるらしい。大人には話さない方がいいよ」
そう言う事か。
その手には乗らない。
ダンボールの上には二つ折りの真っ赤な紙が貼られている。
これってもしかして。
ぴんと来た。
急いで中を開けると、印刷の文字で
「赤の男爵」
とだけ書いてあった。
さすが赤の男爵だ。
あの時からまだ三日しか立っていないのに。
思わず顔がにやけてしまった。
その時の僕に、これから起こる事がどうして予測できただろう。
翌日の放課後、北島先生に呼ばれた。学長が呼んでいると言う。訳を尋ねても先生は笑って答えてくれない。
「大丈夫だよ、叱られる訳じゃないから」
そう言われても安心はできない。入学してまだ一ヶ月にも満たないと言うのに一体何だろう、と僕は恐る恐る学長室へ入った。
学長は壁まである大きな本棚を背後に、がっしりとした机に座っていた。きれいに禿げ上がったゆで卵のような頭、丸く艶々した顔に真っ白で豊かな口ひげをたくわえ、本当に人の良さそうな顔をしていた。
顎鬚を伸ばせばサンタクロースだ。
和製サンタクロース、いや学長がにこにこしながら、や、君が藤堂君かね。突然すまないね、と切り出した。
「ああ、そんなに緊張しないで。君は何も悪い事をしていないし、第一、君の事じゃないんだ。・・・あのね」
学長が声を潜める。
「・・・君、赤の男爵を見たんだって?詳しい話を聞かせてくれないかな。・・・いやー、実は僕は彼の大ファンでね、はは、こんな事恥ずかしくって皆の前で聞けなくってねえ」
僕はどうして知ってるんですか、と言いそうになり思いとどまった。
何故僕が男爵に会った事を学長が知っているのだろう。僕は親友の田中を思い出し、すぐに打ち消した。
確かに彼にだけ赤の男爵に会った話はしたが、絶対誰にも言わないようにと口止めした。田中は約束を破る奴じゃない。ただ彼はこんな事を言っていた。
「最近警察も厳しくってさ、広く情報提供を呼びかけたり、あちこちで張ってるらしい。大人には話さない方がいいよ」
そう言う事か。
その手には乗らない。
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