青を、往け。【短編集】

浅野新

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同窓会 6

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今まではそんな過去の自分を、その強さを羨ましく思っていた。嫉妬すらした。

物事が上手く運ばない時、世間の目を気にする時、すぐに決定できない時、前しか見なかった強さを取り戻したいと願った。


しかし。二十七歳になった正輝は今、昔の自分を受け入れないでいる。

何故自分はあれほど単純だったのだろう。

前方しか見ず、目に映る物しか信じなかった。

何故周囲に疑問を抱かなかったのだろう。


今振り返れば小、中学校時代は最悪だったのだ。

当時の自分がどの時代もそれなりに楽しんでいたのが信じられない。

そして、そんな自分を知っている環境_教師、同級生達、思い出が染み込んだ校舎でさえ彼には振り向きたくない物となった。


過去は、完璧なものでなければいけない。

余計な物を取り除き、楽しかった事、良かった事だけを思い浮かべる。



過去は、選び取るものだ。

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