そうして、誰かの一冊に。

浅野新

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 先の弔問客が帰り、僕の知らない健康的な顔色とふっくらとした顔立ちの友人の遺影の前に座った僕は、すまなかったと心の中で何度も詫びた。しかしそれでも苦しさは取れず、その場にいた彼の母親と兄とでしばらく友人の思い出話をし、母親が退出した後で友人の兄に洗いざらい打ち明け「彼に誤解されたままだったかもしれない」と頭をたれた。

「だいじょうぶです。わかっていますよ」
 友人の兄が、思わず僕が顔を上げるほど友人とそっくりな声で言った時、限界だった。
 僕は声を上げて泣いた。友人の兄も泣いていた。
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