そうして、誰かの一冊に。

浅野新

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 病気で動くことも辛い相手の事を考慮して連絡を取らない事もまた思いやりだ。結局君は僕の心配よりも君自身が心配なのだ。自分が不安でしかたなくて、自分が安心したいだけなのだ。君は彼女と同じ事をしたと、そういう趣旨の事が書かれていた。人間図星をさされると激怒すると言う。すぐにメールで謝罪し反省としてしばらく連絡はしないし会わないと形だけは殊勝な文章を送り、友人からも理解してくれてありがとうとすぐに返信は来たものの、実のところ僕の腸は煮えくり返っていた。死に行く人に嫌な思い出を与えたくないと耐えたが、反論したくてたまらなかった。自分の厚意を批判されこんなに心配しているのにどうして説教されなければいけないのか理解不能だった。

「思いやり」と「自分が安心したい」の間。痛烈な批判で最後の人生勉強を教えてくれた事を肯定できないまま、僕は意地もあり二度と彼にメールをする事はなかった。彼からも連絡は途絶えた。それから半年後に、共通の知人から彼が亡くなった事を知らされた。享年四十五歳だった。

 僕は過ちを二つ犯したのだ。思いやりのはき違いと、その後二度と彼と連絡を取らなかった事。友人が亡くなったと聞いた時、すぐに行かなかったのは距離もあったが後悔の気持ちが強すぎて動けなかったのだ。
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