そうして、誰かの一冊に。

浅野新

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 友人が北海道へ帰ってからは彼と僕はずっとメールで連絡を取り合っていた。癌の事や治療の事はわざと触れなかったが、彼からの返信がだんだん間が開いてきて、友人の状態がきついものであるのだろうと思い、メールの頻度は控えるようにしていた。

 ある時自分が送ったメールに対して友人からの返信が途絶えた事があった。たった一週間だったが、この頃は自分も神経が過敏になり彼がいつ倒れてもおかしくないと思い込むようになっていた。そうして八日目に、返事がないので心配している事、体調不良ならゆっくりでいいがまた返事が欲しい旨を押し付けがましくならないよう言葉は慎重に選んでメールした。しかしそのメールは友人の逆鱗に触れた。彼も病魔と闘い疲れ切っていた時だったのだろう。温厚な彼が僕の短慮を攻め立てるメールを送ってきた。その時気付かされたのだ。絶対に自分はするまいと思っていた過ちを犯してしまった事に。
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