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プロローグ
プロローグ:恋愛とは、たった一人に夢中になる狂気だ。
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「明日は雪みたいね」
重く立ち込めたぶあつい灰色の雲で覆われた空に、目線を下げれば街路樹が風で揺れている。ぴゅーと言う細い音が時々聞こえた。
窓から外を眺める僕に、さくらさんは聖司君、はい、と紅茶の入ったマグカップを差し出した。
「少しだけど。温まると思うわ」
ありがとう、と一口飲む。体を巡る液体と、触れた肩と肩から伝わる彼女の体温が、僕をじんわりと温めてゆく。
ゆっくり紅茶を飲みながら、彼女といた今日と言う日の、余韻を全身で感じ取る。決して忘れる事がないように。今日と言う日もいつもと同じようでいて一つとして同じ事がなく大切な一日だから。たとえこの閉じられた世界が変わらないように見えても。
しばらくして僕はダウンジャケットを羽織った。
「じゃあ、また」
「うん」
さくらさんが微笑む。
僕は玄関を出て、彼女に笑い返した。ゆっくりと閉じられるドアを見ながら、明日も彼女が、今日と同じように笑っていて欲しい、と思う。
いつでも。
誰と過ごしている時でも。
例えそれが、別の恋人であろうと。
明日は曜(よう)がここを訪れるだろう。
さくらさんには恋人が二人いる。
僕と、曜が。
重く立ち込めたぶあつい灰色の雲で覆われた空に、目線を下げれば街路樹が風で揺れている。ぴゅーと言う細い音が時々聞こえた。
窓から外を眺める僕に、さくらさんは聖司君、はい、と紅茶の入ったマグカップを差し出した。
「少しだけど。温まると思うわ」
ありがとう、と一口飲む。体を巡る液体と、触れた肩と肩から伝わる彼女の体温が、僕をじんわりと温めてゆく。
ゆっくり紅茶を飲みながら、彼女といた今日と言う日の、余韻を全身で感じ取る。決して忘れる事がないように。今日と言う日もいつもと同じようでいて一つとして同じ事がなく大切な一日だから。たとえこの閉じられた世界が変わらないように見えても。
しばらくして僕はダウンジャケットを羽織った。
「じゃあ、また」
「うん」
さくらさんが微笑む。
僕は玄関を出て、彼女に笑い返した。ゆっくりと閉じられるドアを見ながら、明日も彼女が、今日と同じように笑っていて欲しい、と思う。
いつでも。
誰と過ごしている時でも。
例えそれが、別の恋人であろうと。
明日は曜(よう)がここを訪れるだろう。
さくらさんには恋人が二人いる。
僕と、曜が。
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