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十三突き目 琴音
一城と涼介
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バーまさる
カウンターで、ウィスキーの入ったグラスを傾ける涼介。
グラスを拭きながら、落ち着かないまさる。
恵と琴音のことも気になるところだが、何よりもすぐそこに涼介がいるのが気になるまさる。
「そ、それにしても、珍しいわね」
「何がです?」
「り、涼介がこういうことに首を突っ込むなんて」
「・・・たまたまです」
「あ・・・そ」
一城とは違う反応に戸惑う、まさる。
カラカラン
扉が開き一城が戻ってくる。
「おかえり、2人はどう?」
一城を見てホッとしたように、口を開くまさる。
「恵は、目を覚ましたんだが、琴音は眠ってるよ」
カウンターに座る一城。
「そお、2人の関係が変にならなければいいけど」
グラスとボトルを置くまさる。
「恵と琴音なら大丈夫だ」
「ん?」
「恵は、傷ついたものを放っておくような奴じゃない」
「それもそうね」
一城はボトルを手に取ると涼介のグラスにウィスキーを注ぎ足している。
「悪かったな、涼介」
「いいんですよ、俺にだって許せないことくらいありますから」
「そうか」
「ええ」
「それにしても、よくわかったな」
「ああ、奴が携帯落として行ったんで、気づいただけです」
話を聞いていたまさるが、カウンターに置かれていた携帯を手に取ると一城の前に置いた。
「はいこれ、涼介から預かってた携帯」
一城は画面をタップすると、ロックがかけられていないため、普通に操作が出来る。
着信記録を閲覧する一城。
「けんすけ。これが琴音の元カレか?」
「そうみたいですね」
「で、奴らビデオ撮ってたんだろ?」
「ええ、商品にしようとしてたみたいですね」
「どこかの組の依頼か?」
「いや、それはないでしょう」
「ん?なんで言い切れる?」
「仮にも、あのビルはうちのシマですから」
「そうか、なら個人的なもんか」
「たぶん。何にしても処分しときましたよ」
「助かるよ」
「あと、奈良橋さんにあの4人の処分は頼んでおきました」
「奈良橋?って、マル暴のか?」
「ええ」
襟足を掻く一城。
「まいったな、あの人に借りを作りたくなかったんだがな」
「大丈夫ですよ」
「ん?」
「一城さんが、絡んでるとは言ってませんから」
涼介のグラスが空なのを見て一城がボトルを持つ。
その手を止める涼介は、ボトルを取り上げめようとするが、一城が譲らない。
仕方なくグラスを差し出す涼介。
トゥーフィンガーほど注いだ一城が鼻で笑う。
「それにしても」
「え?」
グラスを口につけた涼介の手の止まる。
「相も変わらず、強えな。涼介は」
その言葉に首を振って鼻で笑う涼介。
「一城さんには、到底敵いませんよ」
「そんなことねえだろ。お前の動きには、無駄がないからな。長期戦になれば俺はお前に負ける」
一息にグラスを空ける一城。
「いえ、それはないですね。長期戦になる前に、俺が先に地に伏してますよ」
一城の空になったグラスにウィスキーを継ぎ足す涼介。
「よく言うぜ、俺の拳なんて一発も当たりはしねえよ」
「いいえ、それもあり得ませんね」
まさるが2人の会話を呆れ顔で聞いている。
「今からでも、殴り合いしそうな会話ね。なんで、二人はそんなになっちまったのさ?」
「ん?」
「まるで、兄弟みたいだった2人がさ。ある日突然、好敵手みたいになってるんだから、おかしな話よ」
「色々ですよ」
「女にはわかんねえ話だよ」
「けっ、こういう時だけ女扱いしやがる、汚ないわよね男って」
「かもな」
グラスをカラカラと鳴らす一城。
カウンターで、ウィスキーの入ったグラスを傾ける涼介。
グラスを拭きながら、落ち着かないまさる。
恵と琴音のことも気になるところだが、何よりもすぐそこに涼介がいるのが気になるまさる。
「そ、それにしても、珍しいわね」
「何がです?」
「り、涼介がこういうことに首を突っ込むなんて」
「・・・たまたまです」
「あ・・・そ」
一城とは違う反応に戸惑う、まさる。
カラカラン
扉が開き一城が戻ってくる。
「おかえり、2人はどう?」
一城を見てホッとしたように、口を開くまさる。
「恵は、目を覚ましたんだが、琴音は眠ってるよ」
カウンターに座る一城。
「そお、2人の関係が変にならなければいいけど」
グラスとボトルを置くまさる。
「恵と琴音なら大丈夫だ」
「ん?」
「恵は、傷ついたものを放っておくような奴じゃない」
「それもそうね」
一城はボトルを手に取ると涼介のグラスにウィスキーを注ぎ足している。
「悪かったな、涼介」
「いいんですよ、俺にだって許せないことくらいありますから」
「そうか」
「ええ」
「それにしても、よくわかったな」
「ああ、奴が携帯落として行ったんで、気づいただけです」
話を聞いていたまさるが、カウンターに置かれていた携帯を手に取ると一城の前に置いた。
「はいこれ、涼介から預かってた携帯」
一城は画面をタップすると、ロックがかけられていないため、普通に操作が出来る。
着信記録を閲覧する一城。
「けんすけ。これが琴音の元カレか?」
「そうみたいですね」
「で、奴らビデオ撮ってたんだろ?」
「ええ、商品にしようとしてたみたいですね」
「どこかの組の依頼か?」
「いや、それはないでしょう」
「ん?なんで言い切れる?」
「仮にも、あのビルはうちのシマですから」
「そうか、なら個人的なもんか」
「たぶん。何にしても処分しときましたよ」
「助かるよ」
「あと、奈良橋さんにあの4人の処分は頼んでおきました」
「奈良橋?って、マル暴のか?」
「ええ」
襟足を掻く一城。
「まいったな、あの人に借りを作りたくなかったんだがな」
「大丈夫ですよ」
「ん?」
「一城さんが、絡んでるとは言ってませんから」
涼介のグラスが空なのを見て一城がボトルを持つ。
その手を止める涼介は、ボトルを取り上げめようとするが、一城が譲らない。
仕方なくグラスを差し出す涼介。
トゥーフィンガーほど注いだ一城が鼻で笑う。
「それにしても」
「え?」
グラスを口につけた涼介の手の止まる。
「相も変わらず、強えな。涼介は」
その言葉に首を振って鼻で笑う涼介。
「一城さんには、到底敵いませんよ」
「そんなことねえだろ。お前の動きには、無駄がないからな。長期戦になれば俺はお前に負ける」
一息にグラスを空ける一城。
「いえ、それはないですね。長期戦になる前に、俺が先に地に伏してますよ」
一城の空になったグラスにウィスキーを継ぎ足す涼介。
「よく言うぜ、俺の拳なんて一発も当たりはしねえよ」
「いいえ、それもあり得ませんね」
まさるが2人の会話を呆れ顔で聞いている。
「今からでも、殴り合いしそうな会話ね。なんで、二人はそんなになっちまったのさ?」
「ん?」
「まるで、兄弟みたいだった2人がさ。ある日突然、好敵手みたいになってるんだから、おかしな話よ」
「色々ですよ」
「女にはわかんねえ話だよ」
「けっ、こういう時だけ女扱いしやがる、汚ないわよね男って」
「かもな」
グラスをカラカラと鳴らす一城。
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