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十三突き目 琴音
囚われる
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一城と話すことで、琴音に対する不安が薄くなった恵は、琴音の部屋へと急いでいた。
アパートに着くと、部屋の灯りは灯されたままだ。
玄関の扉が半開きになっているのを、不思議に思いながら恵はドアを開ける。
なんだか、いつもと違っていた。
いつもは、定位置にある食卓が妙にズレている。
椅子も乱雑に置かれている。
「琴音?いるのか?」
普段なら台所で洗い物をするか、リビングでくつろいでいるはずの琴音がいない。
「琴音。いたら返事してよ」
物音一つ響いて来なかった。
「おかしいな、どこ行ったんだ?」
リビングのソファに腰をかける恵は、入り口のドアの方に視線を送る。
フローリングの床がいつもより汚れて見える。
よくよく見ると足跡だった。
近くに行く恵は、しゃがみ込むと足跡の大きさを確認する。
「琴音のものじゃないな」
ましてや、ゴツゴツとした溝の深いハイキング用の靴を恵も履かなかった。
しかも、足跡は一つではなかった。少なくとも3つの違った足跡が確認出来る。
それは、どれも男の物だった。
男がここに来ることを考えると琴音の元カレを思い出さずにはいられなかった。
「何かあったんだ」
玄関には、琴音の履き慣れた靴が残されたままだった。
「裸足?」
簡単に整理するとこうなる。
3人の男たちがやってきて、琴音をどこかに連れ出した。と
じゃあ、一体どこへ?
手がかりになるようなもの。
琴音の携帯?ダイヤルして鳴らしてみる。
ブーンブーン。どこからか、響いてきて近くにあることを告げている。
「どこだよ」
琴音の鞄を見つけ、そこから振動が来ているようだ。
中を覗き込むと、そこに発光しながら震える携帯があった。
手に取りタップして開く。
お互い、隠し事をしたくないからとロックは掛けていない。
着信履歴から、〈けんすけ〉からの不在着信が数件続いているのが確認出来る。
恐らく元カレだろう。
まさに恵が、その〈けんすけ〉をタップしようとした時、発光と共に振動を始める携帯。
〈けんすけ〉からだ。
画面をタップする恵は、携帯を耳に当てる。
「はい」
『お、出たな。よお、あんた琴音の今の彼氏か?』
「ああ、そうだけど」
『ちょうど、今面白いことしてるんだ。あんたも来ないか?』
「琴音に何をした?」
『来ればわかるよ。来んの?来ねえの?』
「わかった、行く」
『そうこなくちゃな。場所は送るから、そこまで来いよ』
言うと、メッセージが届く。
『場所、わかるか?』
「ああ、ここなら知ってる」
『あんたも来りゃ、わかるよ。楽しいからよ』
「すぐ行く」
『あんまり、遅くなるなよ。琴音の体が元気なうちに来いよな』
そのまま、通話が切れてしまった。
行き先は、○○ビル3階。ここからなら、徒歩で20分の辺りだった。
玄関に向かい靴に足を差し入れる恵。
「念のため、一城さんに連絡を・・・」
携帯を取り出すと、アドレスから一城を出すが、タップするその手が止まる。
「今回は、頼るわけにはいかないな」
そのまま、ズボンのお尻のポケットに携帯をしまうと琴音の部屋を後にした。
アパートに着くと、部屋の灯りは灯されたままだ。
玄関の扉が半開きになっているのを、不思議に思いながら恵はドアを開ける。
なんだか、いつもと違っていた。
いつもは、定位置にある食卓が妙にズレている。
椅子も乱雑に置かれている。
「琴音?いるのか?」
普段なら台所で洗い物をするか、リビングでくつろいでいるはずの琴音がいない。
「琴音。いたら返事してよ」
物音一つ響いて来なかった。
「おかしいな、どこ行ったんだ?」
リビングのソファに腰をかける恵は、入り口のドアの方に視線を送る。
フローリングの床がいつもより汚れて見える。
よくよく見ると足跡だった。
近くに行く恵は、しゃがみ込むと足跡の大きさを確認する。
「琴音のものじゃないな」
ましてや、ゴツゴツとした溝の深いハイキング用の靴を恵も履かなかった。
しかも、足跡は一つではなかった。少なくとも3つの違った足跡が確認出来る。
それは、どれも男の物だった。
男がここに来ることを考えると琴音の元カレを思い出さずにはいられなかった。
「何かあったんだ」
玄関には、琴音の履き慣れた靴が残されたままだった。
「裸足?」
簡単に整理するとこうなる。
3人の男たちがやってきて、琴音をどこかに連れ出した。と
じゃあ、一体どこへ?
手がかりになるようなもの。
琴音の携帯?ダイヤルして鳴らしてみる。
ブーンブーン。どこからか、響いてきて近くにあることを告げている。
「どこだよ」
琴音の鞄を見つけ、そこから振動が来ているようだ。
中を覗き込むと、そこに発光しながら震える携帯があった。
手に取りタップして開く。
お互い、隠し事をしたくないからとロックは掛けていない。
着信履歴から、〈けんすけ〉からの不在着信が数件続いているのが確認出来る。
恐らく元カレだろう。
まさに恵が、その〈けんすけ〉をタップしようとした時、発光と共に振動を始める携帯。
〈けんすけ〉からだ。
画面をタップする恵は、携帯を耳に当てる。
「はい」
『お、出たな。よお、あんた琴音の今の彼氏か?』
「ああ、そうだけど」
『ちょうど、今面白いことしてるんだ。あんたも来ないか?』
「琴音に何をした?」
『来ればわかるよ。来んの?来ねえの?』
「わかった、行く」
『そうこなくちゃな。場所は送るから、そこまで来いよ』
言うと、メッセージが届く。
『場所、わかるか?』
「ああ、ここなら知ってる」
『あんたも来りゃ、わかるよ。楽しいからよ』
「すぐ行く」
『あんまり、遅くなるなよ。琴音の体が元気なうちに来いよな』
そのまま、通話が切れてしまった。
行き先は、○○ビル3階。ここからなら、徒歩で20分の辺りだった。
玄関に向かい靴に足を差し入れる恵。
「念のため、一城さんに連絡を・・・」
携帯を取り出すと、アドレスから一城を出すが、タップするその手が止まる。
「今回は、頼るわけにはいかないな」
そのまま、ズボンのお尻のポケットに携帯をしまうと琴音の部屋を後にした。
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