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十三突き目 琴音
いらぬ不安
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恵が、何か悩みを持ってここに来たのがわかった一城は、探りを入れる。
「そういえば、琴音ちゃんとは、うまくやってるのか?」
「え、ええ、まあ、なんとか」
「なんだ?なんかあるのか?」
グラスの中で、氷を泳がせる恵。
「大した事じゃないです。ただ・・・」
口に当てたグラスを離す一城。
「ん?ただ、なんだよ」
「ただ、なんていうか、異性と付き合うのって、なんでこう過去が気になってしまうのかな?と思ったんです」
「どういうことだ?」
「一城さん?」
「ん?」
「一つ、聞いてもいいですか?」
「なんだ?」
「一城さん、俺と関係を持つ前、他に好きな男はいたんですか?」
「え?好きな男?」
「ええ」
「いや・・・いないと思う」
「そうですよね」
「それが、どう関係があるんだ?」
「もし・・・もし、一城さんに俺以外に好きな男がいて、そいつとも関係があったとしたら、やきもちというか、嫉妬みたいなものを感じただろうか?そう思ったんです」
「なんだ、恵は琴音ちゃんに嫉妬してるってのか?」
「そうかもしれません・・・ただ、琴音は元カレに恐れを感じて逃げ出したいみたいです」
「なら、なんの問題もないじゃないか」
「ええ、そうなんですけど。今の琴音があるのは、その元カレがいたからで・・・その琴音を好きになってる今の自分が、なんだかよくわからないんです」
「何がわからないんだよ?恵は、今の琴音ちゃんが好きなんだろ?なら、それでいいと思うけどな」
「そうなんですけど・・・」
「なんだよ、恵。はっきりしねえなぁ」
「琴音が言ってたんです。体が疼いて縛られたいって感じる事があるって」
「ん?」
「俺、そんな時、そんな琴音を抱けるだろうか?って、考えちゃったんです。抱かれながら、元カレを思い出してるんじゃないかって、余計なことばかり考えてしまって」
グラスの氷を見つめながら何かを見ている恵。
「恵」
「はい」
「隠しても、仕方がないから、はっきり言っとくぞ」
「はい、なんでしょう?」
「お前に会う前に、お前の他に、好きで抱いてた男がいる」
「え?」
「それを聞いても、俺に抱かれたいと思うか?」
「え、いや」
「どうなんだ?」
「たぶん、平気だと思います」
「なんでだ?」
「え?」
「琴音ちゃんはダメで、なんで俺なら平気なんだ?」
「ああ、たぶん、それは・・・」
「はっきり、言ってみな」
「たぶん、それは、一城さんなら信じられるからじゃないでしょうか」
「じゃあ、なんで琴音ちゃんだと信じられらないんだ?」
「・・・!」
ハッとして一城を見る恵。
それを優しく微笑んで見せる一城。
「そこなんだよ、恵。まだ、付き合って日も浅いんだ。無理もないさ」
「なるほど・・」
「恵。今は信じることの方が難しいんだよ」
一城は、立ち上がり恵の横に座ると肩に手を置く。
「仕方ないんだ。体は覚えちまった快感を忘れられないんだ。だからといって言葉のまま縛ったりする必要はない」
「じゃあ、どうすれば?」
「お前の愛し方で抱いてやればいい」
「一城さん・・・」
「今の琴音ちゃんは、とても不安なんだ。一人にさせるな。そばにいてやれ」
ポンと恵の肩を叩く一城。
「はい、そうします・・・一城さんは、やっぱ最高っす」
「え?」
恵は、一城に抱きついていた。
「おおお、おい、恵?」
「すみません、ただ、ただ・・・俺」
「わかってるよ。だけど、抱きつく相手が違ってるぞ、恵」
一城から、離れる恵。
「ありがとうございました。一城さん」
「いいんだよ、恵。好きなんだろ?琴音ちゃんのこと」
「はい、大好きです。すごく愛しいんです」
「だったら、今すぐ帰ってその言葉を伝えてやりな」
「はい」
立ち上がる恵は、深くお辞儀をすると部屋を出て行った。
バタンと扉が閉まり、静けさだけが残った。
外の雑踏の音が聞こえ始める。
一城は、タバコに火を灯すと天を仰いで煙を吐き出す。
急に人恋しくなる一城は、まさるの気持ちの悪い顔が見たくなり、ボトルを持って立ち上がると部屋を後にする。
「そういえば、琴音ちゃんとは、うまくやってるのか?」
「え、ええ、まあ、なんとか」
「なんだ?なんかあるのか?」
グラスの中で、氷を泳がせる恵。
「大した事じゃないです。ただ・・・」
口に当てたグラスを離す一城。
「ん?ただ、なんだよ」
「ただ、なんていうか、異性と付き合うのって、なんでこう過去が気になってしまうのかな?と思ったんです」
「どういうことだ?」
「一城さん?」
「ん?」
「一つ、聞いてもいいですか?」
「なんだ?」
「一城さん、俺と関係を持つ前、他に好きな男はいたんですか?」
「え?好きな男?」
「ええ」
「いや・・・いないと思う」
「そうですよね」
「それが、どう関係があるんだ?」
「もし・・・もし、一城さんに俺以外に好きな男がいて、そいつとも関係があったとしたら、やきもちというか、嫉妬みたいなものを感じただろうか?そう思ったんです」
「なんだ、恵は琴音ちゃんに嫉妬してるってのか?」
「そうかもしれません・・・ただ、琴音は元カレに恐れを感じて逃げ出したいみたいです」
「なら、なんの問題もないじゃないか」
「ええ、そうなんですけど。今の琴音があるのは、その元カレがいたからで・・・その琴音を好きになってる今の自分が、なんだかよくわからないんです」
「何がわからないんだよ?恵は、今の琴音ちゃんが好きなんだろ?なら、それでいいと思うけどな」
「そうなんですけど・・・」
「なんだよ、恵。はっきりしねえなぁ」
「琴音が言ってたんです。体が疼いて縛られたいって感じる事があるって」
「ん?」
「俺、そんな時、そんな琴音を抱けるだろうか?って、考えちゃったんです。抱かれながら、元カレを思い出してるんじゃないかって、余計なことばかり考えてしまって」
グラスの氷を見つめながら何かを見ている恵。
「恵」
「はい」
「隠しても、仕方がないから、はっきり言っとくぞ」
「はい、なんでしょう?」
「お前に会う前に、お前の他に、好きで抱いてた男がいる」
「え?」
「それを聞いても、俺に抱かれたいと思うか?」
「え、いや」
「どうなんだ?」
「たぶん、平気だと思います」
「なんでだ?」
「え?」
「琴音ちゃんはダメで、なんで俺なら平気なんだ?」
「ああ、たぶん、それは・・・」
「はっきり、言ってみな」
「たぶん、それは、一城さんなら信じられるからじゃないでしょうか」
「じゃあ、なんで琴音ちゃんだと信じられらないんだ?」
「・・・!」
ハッとして一城を見る恵。
それを優しく微笑んで見せる一城。
「そこなんだよ、恵。まだ、付き合って日も浅いんだ。無理もないさ」
「なるほど・・」
「恵。今は信じることの方が難しいんだよ」
一城は、立ち上がり恵の横に座ると肩に手を置く。
「仕方ないんだ。体は覚えちまった快感を忘れられないんだ。だからといって言葉のまま縛ったりする必要はない」
「じゃあ、どうすれば?」
「お前の愛し方で抱いてやればいい」
「一城さん・・・」
「今の琴音ちゃんは、とても不安なんだ。一人にさせるな。そばにいてやれ」
ポンと恵の肩を叩く一城。
「はい、そうします・・・一城さんは、やっぱ最高っす」
「え?」
恵は、一城に抱きついていた。
「おおお、おい、恵?」
「すみません、ただ、ただ・・・俺」
「わかってるよ。だけど、抱きつく相手が違ってるぞ、恵」
一城から、離れる恵。
「ありがとうございました。一城さん」
「いいんだよ、恵。好きなんだろ?琴音ちゃんのこと」
「はい、大好きです。すごく愛しいんです」
「だったら、今すぐ帰ってその言葉を伝えてやりな」
「はい」
立ち上がる恵は、深くお辞儀をすると部屋を出て行った。
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外の雑踏の音が聞こえ始める。
一城は、タバコに火を灯すと天を仰いで煙を吐き出す。
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