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十二突き目 病院にて

蓮実と哲美

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ガラガラ
哲美の病室の扉が開き蓮実が入ってくる。
「おかえり、蓮実。一城どうかしたの?」
「あ、うん、入院してる子の友達がいてね」
ベッド脇の椅子に腰を下ろす蓮実。
「その子が?」 
「恵くんの幼馴染なのよ」
「ほお、で?一城に言ってた咲って子が知り合いなわけだ」
「まあ、そんなとこ」
「ふうん、にしては、咲って子は一城とは、何やらありそうなのは気のせいかい?」
「鋭いね、哲美。一城に告ったらしいんだ、咲ちゃん」
身を乗り出す哲美は、そのあとが気になって仕方がない。
「へえ、それでどうなったんだよ」
「一城は、断ったらしいけど」
やっぱりかと、乗り出した身を戻す哲美はつまらなそうな顔をしていたが、ニヤリと口角を持ち上げた。
「全く、あいつらしいな。いつまでも泉一筋なんだから。これで、またまたライバル出現っていうことだな。ウカウカしてらんないね、蓮実」
「なんで私に振るのよ。哲美だって」
「あたい?あたいのことなんて、あいつの眼中にないよ」
「でも、かなり評価は高そうだけど?」
「それは、仕事的なもんだろ?女としては見てないよ、あいつは」
「そうかな・・・?」
「ん?」
「昔は、年中一緒だったじゃない?」
「ああ、あれは、単に暴れ回ってただけで、好きだ嫌いだとは違うんだよな」
「でも、寝てたでしょ?」
蓮実はスッパリ言うと目を見開いて哲美を見る。
「ん?ま、まあな」
思い出して照れている哲美。
「飯食うのと何にも変わらないよ。するのが普通すぎだったな」
「ふうん・・・で、哲美自身はどうだったの?」
「え?どうって?」
「一城のこと・・・愛してた?」
「え?あ、まあ、そりゃ」
一城との絡みを思い出したのか、股の間に手を差し込んで、両手を擦り合わせる哲美。
「でもな、あたい、あいつに・・・愛されてたのかな・・・?」
「え?」
「よくわかんないんだよな、喧嘩してお互いの傷に触れ合って、気がつくと求め合ってたから」
「なんか、自然でいいんじゃない?」
「そうかな?でも、あいつ、一度だって。愛してる なんて、言ったことなかったよ」
「え?」
蓮実は驚いた。
言われてみれば、蓮実自身も同じであった。あの時もそうだった。

愛してる

そんな言葉は、蓮実も一城からは聞いていない。
別れたあの時以来、一度も。
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