一夜明けたら性生活が一変してた

貴林

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八突き目 琴音という子

私って、変ですか?

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一城さんと蓮実さんからの提案もあって、しばらくは一城さんとの同行は、控えることになった。
男を受け付けない歩に、何かの時に駆けつけしやすいようにと、新人の女の子が同行することになった。
奈良岡琴音ならおかことね、メガネを掛け、やや細めだが凹凸がそれなりにはっきりしたショートヘアの子。事業拡大にあたり、採用された九人の中の一人である。
これまでは、現場に出ることもなく、倉庫の管理を主に機器の扱い方、物品の名称などを覚えてもらうことで現場に出るための備えをしていた。
今日は、現場初日。簡単な日常的な清掃を行う。
掃除機の掛け方、T字箒の使い方、水拭きの掛け方など、基本的動作を身につけるのが目的だった。
道具類は、ほとんど現場にあるので、ほぼ手ぶらで訪問する。
受付を済ませ、入館証明書のバッジを受けとり中に入る。
「おはようございます」
すれ違う人たちと、挨拶を交わしながら、トイレ近くのPS(パイプスペース)を開ける。
上下水道やガス管などのチェックを行ったりするためのスペース。その隙間に清掃道具が置かれている。
会社などの勤務時間中での作業が多いため、音の出る掃除機よりもT字箒又は自在箒とも言われる箒を使うことが多い。
ここの場合、共用部が主で、廊下、階段、トイレなどの除塵、水拭きを行う。
滅多に使われない会議室や留守で空いている役の付いた方の部屋などは、絨毯敷きが多いため、さすがに箒という訳にはいかないため、掃除機を使うことになる。
真ん中に大きなテーブルが置かれただけの場所なら椅子を廊下に出すか、テーブルに逆さまに乗せて、掃除機を掛けるだけで済むが、複雑に入り組んだ場所は、どこをどう掃除して良いのか悩んでしまう。
不慣れな者が、やってしまいがちな丸くく、丸く拭く。
琴音も、緊張のせいか、それをする。
しかも、さっきやったところを、何度もやってしまう。
「奈良岡さん、そうじゃなくてね」
「はい?」
「これは、教わったことを俺なりに解釈したものなんだけど」
「はあ」
「まず、行うべき部屋や場所を見るよね」
「はい」
部屋の入り口に立つ恵。
「掃除をする時は、ここが出口になるからね。いい」
「ん?はあ」
「俺は、一本の木に例えるんだけど」
「木?ですか?」
メガネのブリッジを持ち上げ、目を丸くする琴音。
「うん、出口が根本で一番遠い部屋の奥を木の先端に例えて、メインになる通路を幹と考えるんだけど」
「??」
「そこを中心に考えて、左右に伸びる枝だと想像する。わかる?」
「んー、わかりません」
「だよね、とにかく、やってみるから」
「はい」
「一番奥の先端から、後ろに下がりながら、後ろに後ろにゴミを運んでいく」
「はい」
「隅っこに、ゴミが溜まりやすいから、とにかくそこは確実にゴミを取ってね」
「はあ、なるほど」
「角のゴミとか、取りにくい時は、これを使う」
腰袋に手を回す恵は、そこから革スキを取って角に当てると、カリカリと角に固まったゴミを搔き出した。
「綺麗になったのわかるよね?」
「おお」
パチパチと手を叩く琴音。
「下がってくると、左右に伸びる通路が見えてくる。そこで、一旦ゴミをまとめておく。ここまでやったと目印になる。で、右でも左でもいいからそこの一番奥に行ってまた下がっていく。隅っこは、綺麗にしながらね。で、まとめたゴミの所まで来たら、メインの幹を下がって行く」
出口まで、やってきた恵。
「と、こんな感じ」
「これなら、無駄がないですね」
行ったり来たりしていた自分に気づいていた様子だった。
「水拭きのモップを掛けるのもやり方はほとんど変わらないからね。隅っこを綺麗にするのが基本。拭いたところは、出来るだけ入らないこと」
「なぜですか?」
「ん?実践すれば、わかるよ」
「わかりました」
琴音は、水拭きをしてから、拭いたところに戻ってみた。
「あっ」
足跡が着いていた。
「意外と靴底って汚れてるんだよ。濡れた所を歩くと、靴底の汚れが床に着いちゃうんだよね」
「おお、すご~い」
また、パチパチと手を叩く琴音。
(わかってて、バカにしてないか)
「と、とにかく、やってみて。慣れてきたら、これ一人でやることになるから」
「え?私一人で、これするんですか?」
「もちろん」
「え?、だって、箒で掃いて水拭きもするんですよね?」
「そうだよ」
「え?て、部屋いくつありましたっけ?」
「四つ」
「それを、しかも一時間でやるんですか?」
「うん」
「無理無理無理無理無理」
(どんだけ、連呼してんの?)
「大丈夫だって、慣れれば四十分あれば終わる」
「はあ?それって、一部屋十分じゃないですか。絶対に無理です」
「まあ、最初からそれは望まないから、とにかくやってみてよ」
肩を落とす琴音。
「俺、廊下やってるから、また見にくるよ」
「わ、わかりました・・・」
その場を琴音に任せて、廊下の掃除を始める恵。

しばらくして、三つ目の部屋には、来てるだろうと覗きに行くと、そこにはいなかった。もう四つ目に行ったのかと、覗いてみるとそこにもいなかった。まさか、まだ、二つ目?
行ってみたら、そこに水モップを抱えた琴音がいた。
しかも、クスクスと笑いながらスマホを見ている。
額に手を当てる恵は、コンコンとドアを叩く。
「奈良岡さん」
あばばばばば、慌てる琴音は、持ったスマホを落としそうになりつつ、形のいいお尻のポケットに差し込む。
「す、すみません」
「終わったら、次行くよ。一緒にやるから片付けちゃうよ」
「ど、どうも・・・」

四つの部屋が片付いたので、今度はトイレ掃除をする。
琴音は、箒を持って入ってくる。
「あ、奈良岡さん、先に便器綺麗にするから、それあとでいいよ」
「べ、便器?」
「トイレなんだから、するのは当たり前だよ」
「するのは当たり前・・・」
(そこだけ、言われるとなんか恥ずかしいな)
「洋式トイレって、やっぱ前の方が汚れてるんだよ」
実際に腰掛けてみる恵。
「で、ここからこう、用を足すと」
なんだか、顔を赤くしている琴音。
迂闊にも、可愛いと思っている恵。
「そ、そうすると、ここに尿が集中してかかるから、ここが汚れやすくなるんだよ」
便器の手前の溝を手袋を着けたが手が摩る。
ちょっと、触れただけだが汚れが指先に付着していた。
「この縁って、見えにくくて汚れがわからないから、気づいたらバリバリになってるなんてことあるから。とにかく、やって覚えるのが一番だからね」
「はあ、やってみます」
しゃがみ込むといきなり内蓋を上げ、本体を拭き始める琴音。すると今度は内蓋を下ろし便座を拭こうとするから、さすがにそれを止める恵。
「ああ、待って。奈良岡さん」
「あ、はい」
「考えてみてね。奈良岡さんだったら、尿で汚れた部分を拭いた雑巾で、便座を拭いたとするよね。ここに座りたいと思うかな?」
「あ、そっかぁ、なるほど」
案外、飲み込みは早いのかな?と思う恵。
「うん、見た目は綺麗かもしれないけど、イヤだよね?それを知らない人は、そのまま座ってしまうから気をつけて」
「てことは、綺麗な所から拭けばいいってこと?でいいのかな?」
「そうだね、あとは、完全に雑巾を使い分けるかだけどね」
「ほおほお」
「でも、たまになんだけど、『あっ、手にう○こが付いちゃった』とかで、手すりにつかまったとするね。ここ、う○こあるよね?」
想像した琴音が顔を歪める。
「うえ、汚ね」
琴音のリアクションに驚く恵。
「そ、そうなるよね。そういう時は、先にペーパーとかで、粗方取ってしまっておくといいよ」
「ええ!う○こを手で取るんですか?」
「当たり前だろ、掃除屋なんだから。もし、仮に床に落ちてたら拾わなきゃならないんだよ」
鼻で笑う恵と笑えない琴音。
「ええええー」
やってらんな~い、の顔をしている琴音。
仕方なく拭き始めるが、かなりの想像力のようだ。何もない手すりを、うえっうえっとしながら拭いてる琴音。
ふと、床を見て声を上げる琴音。
「げっ、白羽根さん、これ見てください」
「何を?」
振り向いたその目の前に、差し出された何かをつまんだ指。よく見ると、誰ともしれない誰かの縮れた下の毛だった。
「いやいや、そういうの手でつままなくていいから」
(むしろ、なぜ、わざわざ、拾うかな)
「え?」
「床のゴミは、箒で履けば良くないかい?」
「そうでした」
ひっと、指からそれを離すと、汚いものを触った後みたいに、ブラブラと指を振っている琴音。実際、汚いんだけど・・
そんなこんなで、トイレの床も綺麗になり、階段の掃除を始めることにした。
水モップの使い方も、ある程度覚えた琴音にモップを渡す恵。万が一にも階段を踏み外したりした時の為の、恵の配慮であった。
「俺が箒で履き落としていくから、後をモップで、拭いてきてね」
「わかりました」
向き合うような形で構える琴音。
「それでも、やれないことないけど、少し遠くなる分、拭き方が粗くなったり、見えづらくなって拭き残しとか出来るから、やっぱここも後ろ向きが理想かな」
「はい」
後ろ向きに、掃いた所を一段ずつ拭きあげてくる琴音。
恵も、後ろ向きに掃き落としていく。時々、止まっては角で固まったゴミを革スキで搔き出している恵。
段々慣れてきた琴音のスピードが上がってきて掃き落として次に行く恵を待っている。
気になって琴音を見上げる恵は必然的に目の前にお尻を見ることになる。
パンと張り詰めたプリンプリンのお尻。男の一城が好きとはいえ。元々は女の子好き。モヤモヤしないはずがなかった。
つい見惚れて、浮き上がる下着のラインを目でなぞる。
思わず固唾を飲む恵。
いやいやいやいや、いかんいかんと首を振る恵は先を急ぐ。

階段も終わり、最後に人気の少ない臨時用の搬入時など使われる玄関だけとなった。
「あとは、ここだけだから、休憩は終わってからでもいいかな?」
「はい、やっちゃいましょう」
箒を持つ琴音。モップをゆすいでいる恵。
「げっ」
琴音が何かを見つけて声をあげる。
「今度はどうしたの?」
「ししし、白羽根さん、ちょちょ、ちょっと、来てください」
「何、どうしたの?」
「こここ、ここを見て下さい」
(にわとりですか)
言われて床を見ると、トイレで見かけた縮れた毛。
「ん?これが?」
「不思議に思いませんか?」
「何を?」
「なぜ、このような場所に、このようなものが落ちているのか?」
「それは、多分・・・」
「こここ、ここで、何かしらの行為が行われていたという証拠ではないかと」
「え?」
琴音の勝手な妄想が始まった。
「誰もいなくなった会社に残された二人きりの男女。前々から、お互いが気になっていた。戸締りに来た女の後ろから男が現れる。そっと、後ろから腕を回す男。その腕にそっと手を置く女。ゆっくりと振り返る女は、口付けをもとめ目を閉じる。それに答えるように唇を重ねる男。二人の息が荒くなる。男の指先が女の膨らんだ所をまさぐる。あん♡と身を縮める女。もう、これ以上は、我慢が出来ない二人は互いの服を脱がし合う。露出する二人のナニ。 みたいなことが、ここで起きていたとか考えられませんか?」
「・・・」
一人芝居の凄さに圧倒されて言葉が出ない恵は、ハッと我に帰る。
「いや、そこまで・・・」
それを遮るように、琴音の妄想は続く。
「待って。毛は一本よね。だとしたら、二人はあり得ないわね」
(いやいや、言ってる全てがあり得ませんから)
「あっ、そうか。男だ。戸締りのために、ここまで来た男は、ふと憧れの女性のことを思い出す。あの唇、あの胸、あのヒップ。男のアソコが疼いて仕方がない。ゆっくりと、チャックを下ろすと、硬くなり始めている男はナニを取り出し手を充てがう。のようなことが、ここで起きていたとしたら、どうですか?」
(どうもしません)
あまりに真剣に恵を見ているものだから、ブッと吹き出す恵。
「はい?」
メガネの丁番ちょうばんを持ち上げる琴音。
「すごい、想像力だね。びっくりした」
「え?また、私、何かやってましたか?」
「え? たった今、あはんとかうふんて」
顔を真っ赤にする琴音は、顔が潰れるほど両手で覆った。
「ああ、なんてことを、また、やってしまった」
「な、何を?」
「いえ、この事は忘れて下さい」
(忘れませんね)
頭を下げている琴音。
「面白いね、琴音ちゃんて」
あはははははと、笑い始める恵。
驚いているのは琴音だった。
いつもなら、お前、キモいよ。と言われる所なのに、この反応。琴音の中で、キュンとなるものがあった。
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