魔物を倒すよりお前を押し倒したい

貴林

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第八夜 ラート 

懐が寂しいと、何も始まらない

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さすがにイチヤタ国に通ずる街道だけあって、人通りがかなり激しい。
馬車や荷車の往来が切れることがなかった。
「ねえ、これから行くとこって遠いの?」
チマウが馬車を見ながら尋ねる。
「えっと、そうね。徒歩でモタモタしてたら2ヶ月は掛かるわね」
行くとことは、闇の帝王 ブラアーデミーの居城 アンディーラカマハル。
「そうなると、やはり足が必要だね」
チマウが往来する場所を見て言う。
ロカも同じことを考えていた。
「せめて馬車と馬車馬がほしいわね」
ヤタノが、懐を探りながら
「でも、私たちこの辺りで使える通貨とか持ってないですよ」
ん~と、あごをつまむロカは、街道の脇に剥き出した岩を見つける。
「待って、なんとかなるかも」
岩に近づくロカは、岩を調べ始める。
「なあ、ロカ。この岩がどうしたんだよ?」
シュンタが、ただの岩っ頃を見るロカを不思議がる。
ミサオがロカのスキルを思い出す。
「あ、なるほど」
「なに?どうしたの?」
訳のわからないシュンタ。
「鉱石よ。シュンタ、こう言う時こそあなたのスキルが活かされる時よ」
「そ、そうなのか?」
鉱石と魔法の関係性がまるでわからないシュンタ。
ロカが、岩を調べ終わるとシュンタに駆け寄ってくる。
「うん、思った通りだよ。これ、溶岩石だ。シュンタ、この岩の中、透かして見てくんない?」
「透かす?そんなこと出来るの?」
「当たり前じゃない。魔導士なんだから、いくら新人でもそのくらい出来るはずよ」
「へえええ、まあ、やってみるけど」
岩を見つめるシュンタは、何やら詠唱を始める。
すると、レントゲン写真のように中が見えた。
「おお、これ、すげえな。みんなにも見えるの?」
「見えてねえよ。何も」
チマウがバカなこと言ってるなと、腕を組む。
「マジで?」
チマウを見たシュンタがニヤける。
「うほ、これって」
チマウを舐め回すように見るシュンタ。
その様子に気づいたミサオ。
「こら、そういう使い方するな」
チマウは、事態が飲み込めていない。
「何よ?」
「なんでもないよ、チマウ。ささ、シュンタ、透視続けて」
シュンタを岩の方に向かせるミサオ。
「透視?」
その言葉の意味を考えているチマウは、意味がわかると顔を真っ赤にする。
「て、てめえ、まさか」
真剣なシュンタは、年季の入った魔導士を気取る。
「今は、集中せねばなりませぬ。お静かに願おう」
「この・・・」
腕まくりするチマウを、まあまあと抑えるヤタノ。
「なんか、見えるよ。水晶みたいなものが、何個かある」
「それよ」
ロカが、見えないながらも覗き込む。
「取り出せる?」
ロカがシュンタに聞く。
「取り出せる?」
さらにシュンタもミサオに聞く。
「やってみて」
ニコニコしているミサオ。
「おお、やってみるよ」
シュンタは、何やら詠唱を始める。
すると、岩がピキピキと音を立てるとパカリと割れた。
バラバラと崩れる岩の中に、水晶が見える。
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