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第七夜 ラート はじまり編
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再び現実の世界に戻るために、橋渡しの役として誰かが残らなければならなかった。
ミサオは、シュンタを見ると誰に残ってもらうの?と目で訴えている。
どうしたものかと、下を向く駿太。
皆を誘った手前、残る者を選ぶことが出来なかった。
「それなら、俺が残るよ」
矢那がその役を買って出た。
「え?だって」
「ここは、若い君たちに任せるよ」
「いいんですか?こんな事滅多にないですよ。それにわれ先にでも行きたいはずです。」
駿太は矢那が真っ先に千夜宇の元に駆けつけたいのだと思っていた。
千舞宇も駿太と同じだった。
「そうだよ、まして妹を助けに行くんだよ?兄さん」
「まあ、確かに妹のことではあるがな。ましてや、映画の中に入るなんてまるで夢のような話だからね」
「だったら」
「いや、やっぱり俺は残るよ」
「じゃあ、学者をどうするんですか?」
駿太は、矢那に一緒に行ってもらいたかった。友であり兄のようにも思っていたから、どこかで頼りにしていただけに、同行しないと言うことが駿太は寂しさを感じていた。まして、矢那が抜けると男は駿太ただ一人である。嬉しさ反面、逃げ場のない旅に不安になるのは当然である。
「私の代わりなら、伊香下さんが適任じゃないかな?」
落ち着い様子で駿太を見る矢那は、露華に視線を送ると笑みを浮かべてみせた。
「は?私?・・・ですか?」
露華は、矢那が年上であることを意識した。
「世間に顔が広くて、事業主でもある伊香下さんなら知識も豊富だと思ってね」
おほほほと笑う露華。
「まったく、その通りですわ。さすがは、お兄様ですね」
「おお、では、引き受けて頂けるのですね。伊香下さん」
「露華とお呼びください。矢那さま。もちろんです。大船に乗ったつもりで、お任せ下さい。うん、そうね、サポート役をお勤めになるのでしたら。この部屋、自由に使って下さい」
気を良くした露華は、気前まで良くなっている。
「それは有難い。ああ、それはそうと。ここは、食事の持ち込みなどは大丈夫ですかな?」
「食事を持ち込む?何を仰いますの?矢那様。ここで過ごして頂く以上、不自由な思いはさせられませんわ」
決断の早い露華は立ち上がるとフロント直通の受話器を取る。
「あ、フロント。しばらくの間、この部屋に知人の矢那という男性が滞在することになったの。ええ、そうよ。ですから、私と変わらぬサービスをお願いするわね。ええ、もちろん。全て請求は私宛で構いませんわ。ですから、」
「おお~、さすが、何という太っ腹」
受話器の送話部を手で隠す露華。
「太っ腹だけど、細身ですのよ」
「では、お願いね」
ガチャリと受話器を置く露華は、褒められた事が余程気分が良かったのであろう。
話は決まった。矢那が留守をすることにアッサリと決まってしまった。
「さあ、いつでも行けますわよ」
ミサオは、シュンタを見ると誰に残ってもらうの?と目で訴えている。
どうしたものかと、下を向く駿太。
皆を誘った手前、残る者を選ぶことが出来なかった。
「それなら、俺が残るよ」
矢那がその役を買って出た。
「え?だって」
「ここは、若い君たちに任せるよ」
「いいんですか?こんな事滅多にないですよ。それにわれ先にでも行きたいはずです。」
駿太は矢那が真っ先に千夜宇の元に駆けつけたいのだと思っていた。
千舞宇も駿太と同じだった。
「そうだよ、まして妹を助けに行くんだよ?兄さん」
「まあ、確かに妹のことではあるがな。ましてや、映画の中に入るなんてまるで夢のような話だからね」
「だったら」
「いや、やっぱり俺は残るよ」
「じゃあ、学者をどうするんですか?」
駿太は、矢那に一緒に行ってもらいたかった。友であり兄のようにも思っていたから、どこかで頼りにしていただけに、同行しないと言うことが駿太は寂しさを感じていた。まして、矢那が抜けると男は駿太ただ一人である。嬉しさ反面、逃げ場のない旅に不安になるのは当然である。
「私の代わりなら、伊香下さんが適任じゃないかな?」
落ち着い様子で駿太を見る矢那は、露華に視線を送ると笑みを浮かべてみせた。
「は?私?・・・ですか?」
露華は、矢那が年上であることを意識した。
「世間に顔が広くて、事業主でもある伊香下さんなら知識も豊富だと思ってね」
おほほほと笑う露華。
「まったく、その通りですわ。さすがは、お兄様ですね」
「おお、では、引き受けて頂けるのですね。伊香下さん」
「露華とお呼びください。矢那さま。もちろんです。大船に乗ったつもりで、お任せ下さい。うん、そうね、サポート役をお勤めになるのでしたら。この部屋、自由に使って下さい」
気を良くした露華は、気前まで良くなっている。
「それは有難い。ああ、それはそうと。ここは、食事の持ち込みなどは大丈夫ですかな?」
「食事を持ち込む?何を仰いますの?矢那様。ここで過ごして頂く以上、不自由な思いはさせられませんわ」
決断の早い露華は立ち上がるとフロント直通の受話器を取る。
「あ、フロント。しばらくの間、この部屋に知人の矢那という男性が滞在することになったの。ええ、そうよ。ですから、私と変わらぬサービスをお願いするわね。ええ、もちろん。全て請求は私宛で構いませんわ。ですから、」
「おお~、さすが、何という太っ腹」
受話器の送話部を手で隠す露華。
「太っ腹だけど、細身ですのよ」
「では、お願いね」
ガチャリと受話器を置く露華は、褒められた事が余程気分が良かったのであろう。
話は決まった。矢那が留守をすることにアッサリと決まってしまった。
「さあ、いつでも行けますわよ」
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