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第三夜 好みの秘密
過去に触れる
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駿太が卒業した高校の門の前。
校舎の屋上の右隅を見る。
「あれから、四年が経ったよ」
門の前で座り込む駿太。
「守ってあげられなくてごめんね。あの時、声をかけていたら」
大きくため息をつく駿太。
「中学生の時を覚えてるかな?」
遠い記憶に想いを馳せる駿太。
「あの頃、俺は泣き虫で、いじめられっ子だった。誰からも構ってもらえずにいて、死にそうだった。いや、死にたかった」
地面に落ちている小石を拾うと、足元のコンクリートをカリカリと擦り始めた。
「そんな僕を助け出してくれたのが、君だった。僕に言ってくれたよね」
遠くを見つめる駿太は、何かを思い出し笑みを浮かべている。
「私、あなたが好き。だから生きてね。って、それから、僕はその言葉を励みになんとかここまで来れたんだよ」
事件の時を思い返して胸が苦しくなる駿太。
「なのに、俺は・・・うう、それを返すことさえ出来なかった」
顔を上げ遠くを見つめる駿太は、笑顔の君を思い浮かべて涙している。
「君に 好きです。だから一緒に生きよう って」
ボロボロと溢れ出る涙で、後悔の念を洗い流すかのように遠く想いを馳せる駿太。
「あの時、ちゃんと言ってれば良かった」
両手をついて四つ這いになり、懺悔でもするかのように、駿太は頭を下げる。地面がポツポツと涙で濡れて色を変える。
「支えになってあげられなくて、ごめんね」
涙を拭う駿太。
「あとね、君に報告があるんだ」
まるで目の前にいるかのように照れてしまう駿太。
「やっと僕にも、守ってあげたいと思う女性が出来たんだ」
駿太の顔から涙が消えて、恥ずかしそうに笑顔を浮かべている。
「君のことは、一生忘れないし、ずっといつまでも好きだよ。だから、ごめんね、許して欲しい」
ゆっくりと立ち上がる駿太は、前をしっかりと見据える。
「これから、俺はその女性と生きていくと決めたから、だから」
深々とお辞儀をする駿太。
「ありがとう。さようなら」
クルリと体を反転させると、ゆっくりと歩き出した。
ザザッ 音がしてそちらを向く駿太。
遠くからバイクの光が伸びてきていた。
その光の中に人影を見た。
逆光でよく見えないが、女性とわかる。
女性は、横に来るとバイクを止め、降り立つとヘルメットを外した。
長い髪を振り解いて、微笑んでいる。
「ミサオ?」
「シュンタ」
「ど、どうしたんだよ、こんなとこで」
「シュンタこそ、一人でズルいんじゃない?」
「え?」
「私にも挨拶くらいさせてよね」
駿太がここに来そうなことがわかるのは、あの人だけだった。
「え? ああ・・矢那さんか」
門の前に立つミサオ。
「こんにちは、こんばんわ・・かな?はじめまして、ミサオ・マモルと言います。私、苗場駿太さんを心から愛しています。シュンタのこと、これからは私が引き受けます。だから、安心して下さい。現世ではお互い歩み寄れなかっただろうけど、来世では、駿太と一緒になれるといいね」
言葉にしてから、しまったの顔をするミサオ。
「あ・・ごめんね、来世も私も負けないからね、だから、ライバルになってくれると嬉しいかな」
下を向き、何か思い詰めたかと思うと顔を上げるミサオ。
「あなたには、駿太、間に合わなかったけど、私には間に合ったよ。こうして死なずに私は生きてる。ここにいるシュンタのおかげだよ」
鼻の頭を指でかくミサオ。
「あ、えと、あと、来世では友達になろうね。じゃあ、またね。それじゃ、さようなら」
ミサオも深々とお辞儀をした。
ミサオが駿太に近づく。
「ごめんね、彼女のこと悪く言ったりして」
「いや・・・俺の方こそ、叩いたりして・・ごめん。それから」
駿太は、校舎を見ると、視線をミサオに向ける。
「ありがとう、ミサオ」
「ううん、お礼を言うのはこっち」
「え」
「命を救ってくれて、ありがとう」
「俺は、何もしてないよ」
「うん、わかってる。そういうことにしておく」
「よくわかんないけど、ミサオがいいならそれで」
「あのビデオは、捨てずに取っておこうね」
「いや、俺にはもう必要ない」
「え、だって」
「第一さ、彼女に似てるだけで、彼女じゃないし」
「まあ、そうだけど」
「彼女は俺の中で生きてる」
「あ、そういこと言うんだ。なんだかズルいよそれ」
鼻を掻く駿太。
「まあ、確かにね。でも、彼女との出会いがあったから今の自分がここにいる ってことじゃダメかな?」
「仕方がないな、それでいいよ。でも、ビデオは捨てようね。一緒に」
「わかった」
「全部だよ」
「えええ、全部って、それじゃあ」
「一人Hなんてさせないから、必要ないでしょ?」
「え?」
「私がしてあげる。毎日。日に何回でも」
「マジか」
「だって、やだもん。他の子でイクなんて、絶対にイヤ」
「わかったよ」
「うん、矢那さんが待ってるから帰ろうよ」
「あ、悪いことしたな」
「なんなら、私からお礼しておこうか?体で」
「それは、許さない。ダメ」
「でしょ?」
「ん?あ、そうだね。俺もイヤだ。ミサオが他の男とHするのは」
「うん、そんなことしないよ」
バイクにまたがるミサオ。
「はい、これ被って」
ヘルメットを駿太に差し出す。
受け取って被る。
「くっさぁ、これよく被ってきたね」
「仕事でもっと臭いの被ってたから平気なの」
「なるほど」
ヘルメットの中に、ミサオの匂いもあって癒された。むっ、やっぱ無理。矢那さんの匂いが強すぎる。
「しっかり、捕まって」
「ここ?」
ミサオの胸を鷲掴みにする駿太。
「やん、そこじゃなくて、もっと下」
「ここ?」
今度は、ミサオの股間に手を差し入れる駿太。
「あん、そこは、行き過ぎ」
「冗談だよ」
「なんだ、残念なの」
「じゃ、やっぱここがいい」
再び、ミサオの胸を鷲掴みにする駿太。
「いやん、事故っても知らないからね」
ハンドルを握るミサオは、学校を後にする。一旦は遠くなるバイクのライトが再び学校の方に向けられる。
バイクが学校前に戻ってきた。
「あれ、また学校に来ちゃった。何で?」
ミサオがスマホのナビを見ている。それを覗き込む駿太。
「てか、行き先、学校前になったままだし」
「やだ、どうしよう」
「ナビは、俺に任せて」
「わかった。これから行く道、駿太が導いてね」
「・・・」
遠く燦めく星を見上げている駿太。
「シュンタ?」
「ああ、ごめん、そうだね。これから二人で行く道は二人で決めよう」
「・・・うん、わかった。二人一緒にね」
バイクが学校前を走り去っていく。
校舎の屋上の右隅を見る。
「あれから、四年が経ったよ」
門の前で座り込む駿太。
「守ってあげられなくてごめんね。あの時、声をかけていたら」
大きくため息をつく駿太。
「中学生の時を覚えてるかな?」
遠い記憶に想いを馳せる駿太。
「あの頃、俺は泣き虫で、いじめられっ子だった。誰からも構ってもらえずにいて、死にそうだった。いや、死にたかった」
地面に落ちている小石を拾うと、足元のコンクリートをカリカリと擦り始めた。
「そんな僕を助け出してくれたのが、君だった。僕に言ってくれたよね」
遠くを見つめる駿太は、何かを思い出し笑みを浮かべている。
「私、あなたが好き。だから生きてね。って、それから、僕はその言葉を励みになんとかここまで来れたんだよ」
事件の時を思い返して胸が苦しくなる駿太。
「なのに、俺は・・・うう、それを返すことさえ出来なかった」
顔を上げ遠くを見つめる駿太は、笑顔の君を思い浮かべて涙している。
「君に 好きです。だから一緒に生きよう って」
ボロボロと溢れ出る涙で、後悔の念を洗い流すかのように遠く想いを馳せる駿太。
「あの時、ちゃんと言ってれば良かった」
両手をついて四つ這いになり、懺悔でもするかのように、駿太は頭を下げる。地面がポツポツと涙で濡れて色を変える。
「支えになってあげられなくて、ごめんね」
涙を拭う駿太。
「あとね、君に報告があるんだ」
まるで目の前にいるかのように照れてしまう駿太。
「やっと僕にも、守ってあげたいと思う女性が出来たんだ」
駿太の顔から涙が消えて、恥ずかしそうに笑顔を浮かべている。
「君のことは、一生忘れないし、ずっといつまでも好きだよ。だから、ごめんね、許して欲しい」
ゆっくりと立ち上がる駿太は、前をしっかりと見据える。
「これから、俺はその女性と生きていくと決めたから、だから」
深々とお辞儀をする駿太。
「ありがとう。さようなら」
クルリと体を反転させると、ゆっくりと歩き出した。
ザザッ 音がしてそちらを向く駿太。
遠くからバイクの光が伸びてきていた。
その光の中に人影を見た。
逆光でよく見えないが、女性とわかる。
女性は、横に来るとバイクを止め、降り立つとヘルメットを外した。
長い髪を振り解いて、微笑んでいる。
「ミサオ?」
「シュンタ」
「ど、どうしたんだよ、こんなとこで」
「シュンタこそ、一人でズルいんじゃない?」
「え?」
「私にも挨拶くらいさせてよね」
駿太がここに来そうなことがわかるのは、あの人だけだった。
「え? ああ・・矢那さんか」
門の前に立つミサオ。
「こんにちは、こんばんわ・・かな?はじめまして、ミサオ・マモルと言います。私、苗場駿太さんを心から愛しています。シュンタのこと、これからは私が引き受けます。だから、安心して下さい。現世ではお互い歩み寄れなかっただろうけど、来世では、駿太と一緒になれるといいね」
言葉にしてから、しまったの顔をするミサオ。
「あ・・ごめんね、来世も私も負けないからね、だから、ライバルになってくれると嬉しいかな」
下を向き、何か思い詰めたかと思うと顔を上げるミサオ。
「あなたには、駿太、間に合わなかったけど、私には間に合ったよ。こうして死なずに私は生きてる。ここにいるシュンタのおかげだよ」
鼻の頭を指でかくミサオ。
「あ、えと、あと、来世では友達になろうね。じゃあ、またね。それじゃ、さようなら」
ミサオも深々とお辞儀をした。
ミサオが駿太に近づく。
「ごめんね、彼女のこと悪く言ったりして」
「いや・・・俺の方こそ、叩いたりして・・ごめん。それから」
駿太は、校舎を見ると、視線をミサオに向ける。
「ありがとう、ミサオ」
「ううん、お礼を言うのはこっち」
「え」
「命を救ってくれて、ありがとう」
「俺は、何もしてないよ」
「うん、わかってる。そういうことにしておく」
「よくわかんないけど、ミサオがいいならそれで」
「あのビデオは、捨てずに取っておこうね」
「いや、俺にはもう必要ない」
「え、だって」
「第一さ、彼女に似てるだけで、彼女じゃないし」
「まあ、そうだけど」
「彼女は俺の中で生きてる」
「あ、そういこと言うんだ。なんだかズルいよそれ」
鼻を掻く駿太。
「まあ、確かにね。でも、彼女との出会いがあったから今の自分がここにいる ってことじゃダメかな?」
「仕方がないな、それでいいよ。でも、ビデオは捨てようね。一緒に」
「わかった」
「全部だよ」
「えええ、全部って、それじゃあ」
「一人Hなんてさせないから、必要ないでしょ?」
「え?」
「私がしてあげる。毎日。日に何回でも」
「マジか」
「だって、やだもん。他の子でイクなんて、絶対にイヤ」
「わかったよ」
「うん、矢那さんが待ってるから帰ろうよ」
「あ、悪いことしたな」
「なんなら、私からお礼しておこうか?体で」
「それは、許さない。ダメ」
「でしょ?」
「ん?あ、そうだね。俺もイヤだ。ミサオが他の男とHするのは」
「うん、そんなことしないよ」
バイクにまたがるミサオ。
「はい、これ被って」
ヘルメットを駿太に差し出す。
受け取って被る。
「くっさぁ、これよく被ってきたね」
「仕事でもっと臭いの被ってたから平気なの」
「なるほど」
ヘルメットの中に、ミサオの匂いもあって癒された。むっ、やっぱ無理。矢那さんの匂いが強すぎる。
「しっかり、捕まって」
「ここ?」
ミサオの胸を鷲掴みにする駿太。
「やん、そこじゃなくて、もっと下」
「ここ?」
今度は、ミサオの股間に手を差し入れる駿太。
「あん、そこは、行き過ぎ」
「冗談だよ」
「なんだ、残念なの」
「じゃ、やっぱここがいい」
再び、ミサオの胸を鷲掴みにする駿太。
「いやん、事故っても知らないからね」
ハンドルを握るミサオは、学校を後にする。一旦は遠くなるバイクのライトが再び学校の方に向けられる。
バイクが学校前に戻ってきた。
「あれ、また学校に来ちゃった。何で?」
ミサオがスマホのナビを見ている。それを覗き込む駿太。
「てか、行き先、学校前になったままだし」
「やだ、どうしよう」
「ナビは、俺に任せて」
「わかった。これから行く道、駿太が導いてね」
「・・・」
遠く燦めく星を見上げている駿太。
「シュンタ?」
「ああ、ごめん、そうだね。これから二人で行く道は二人で決めよう」
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