7 / 42
第二夜 出先で
昼食時間
しおりを挟む
昼になったので、いつものように社員食堂に向かう駿太。
いつもと変わらず、四人掛けのテーブルに一人きり。手頃で美味しく、ライス付きのラーメンを啜っている。
そこへ弁当を持って、真希がやってきた。
「ここ、座っていい?」
「モグモグ、どうぞ」
箸を持つ手で、手のひらを返す駿太。
そそくさと、弁当の風呂敷を解いて、蓋を開ける真希。
「え?真希さんの、ひょっとして手作り?」
「え、あ、うん、まあね」
母親に作ってもらってるとは、言えなかった。
誤魔化すように、卵焼きを箸で刺すと駿太に近づける。
「よかったら、食べてみる?」
「え?いいの?」
「いいよ。あーんして」
言われるまま、あーんと口を開ける駿太。
[シュンタ、他の女の子にデレデレしたら、ダメだからね]
[おお、いいとも、他の子とデレデレしません]
思い出して、口を閉じる駿太。
「ん?どうしたの?」
「あ、ごめんね。ここに置いといてくれる?あとで、もらうよ」
小皿を差し出す駿太。
「う、うん、わかった」
口を尖らす真希は、小皿に卵焼きを置いた。
(ダメだな、俺は)
〈私、見てるからね〉
ミサオの言葉が気になった。
周りを見渡す駿太は、街頭の大型モニターに目が止まる。ミサオの映画の宣伝が流れていて、画面の中のミサオがこちらを見ている。
あるものは、ノートパソコンでミサオの動画を見る者がいた。そこでも、ミサオがこちらを見ていた。
不意にミサオの声が耳に入った。
振り向くとスマホで動画を見ている人がいた。例の映画だった。
[さあ、私の手を掴んで、そして離さないで。ダニエル。あなた無しじゃダメなの。さあ、早く]
(確か、この後、ミサオは画面を抜け出して)
駿太は、何を思ったのか動画を見る他の部署の男性に歩み寄った。
「ちょっと、それ見せて」
「これ、最高だよね。いいよ、一緒にどうぞ」
[ミサオ、お前がいてくれたら怖いもの無しだ]
手を取り合うダニエルとミサオ。
(えっ、ミサオがいる。確かここからいなかったよな)
[私もだよ。一緒なら死んでもいい]
[どこまでも、一緒だ。ミサオ、決着を付けるぞ]
以前観た映画そのままだった。
じゃあ、俺の部屋にいるミサオは?
スマホを取り出すと画面をタップした。
耳に当てる駿太。
「いるなら、出てくれ」
自分の部屋の電話を呼び出している。
「出ないか」
慌てる駿太。だが、このまま帰ったのでは会社をクビになる。
深呼吸をする駿太。
(落ち着け。ミサオに限ってそんなことあるはずない)
信じたかった。
ハッと、駿太は、あることを思いついた。
(そうだ、帰りにミサオが似合いそうな服を買って帰ろう)
なんとか、気持ちを落ち着かせて午後の仕事に戻った。
いつもと変わらず、四人掛けのテーブルに一人きり。手頃で美味しく、ライス付きのラーメンを啜っている。
そこへ弁当を持って、真希がやってきた。
「ここ、座っていい?」
「モグモグ、どうぞ」
箸を持つ手で、手のひらを返す駿太。
そそくさと、弁当の風呂敷を解いて、蓋を開ける真希。
「え?真希さんの、ひょっとして手作り?」
「え、あ、うん、まあね」
母親に作ってもらってるとは、言えなかった。
誤魔化すように、卵焼きを箸で刺すと駿太に近づける。
「よかったら、食べてみる?」
「え?いいの?」
「いいよ。あーんして」
言われるまま、あーんと口を開ける駿太。
[シュンタ、他の女の子にデレデレしたら、ダメだからね]
[おお、いいとも、他の子とデレデレしません]
思い出して、口を閉じる駿太。
「ん?どうしたの?」
「あ、ごめんね。ここに置いといてくれる?あとで、もらうよ」
小皿を差し出す駿太。
「う、うん、わかった」
口を尖らす真希は、小皿に卵焼きを置いた。
(ダメだな、俺は)
〈私、見てるからね〉
ミサオの言葉が気になった。
周りを見渡す駿太は、街頭の大型モニターに目が止まる。ミサオの映画の宣伝が流れていて、画面の中のミサオがこちらを見ている。
あるものは、ノートパソコンでミサオの動画を見る者がいた。そこでも、ミサオがこちらを見ていた。
不意にミサオの声が耳に入った。
振り向くとスマホで動画を見ている人がいた。例の映画だった。
[さあ、私の手を掴んで、そして離さないで。ダニエル。あなた無しじゃダメなの。さあ、早く]
(確か、この後、ミサオは画面を抜け出して)
駿太は、何を思ったのか動画を見る他の部署の男性に歩み寄った。
「ちょっと、それ見せて」
「これ、最高だよね。いいよ、一緒にどうぞ」
[ミサオ、お前がいてくれたら怖いもの無しだ]
手を取り合うダニエルとミサオ。
(えっ、ミサオがいる。確かここからいなかったよな)
[私もだよ。一緒なら死んでもいい]
[どこまでも、一緒だ。ミサオ、決着を付けるぞ]
以前観た映画そのままだった。
じゃあ、俺の部屋にいるミサオは?
スマホを取り出すと画面をタップした。
耳に当てる駿太。
「いるなら、出てくれ」
自分の部屋の電話を呼び出している。
「出ないか」
慌てる駿太。だが、このまま帰ったのでは会社をクビになる。
深呼吸をする駿太。
(落ち着け。ミサオに限ってそんなことあるはずない)
信じたかった。
ハッと、駿太は、あることを思いついた。
(そうだ、帰りにミサオが似合いそうな服を買って帰ろう)
なんとか、気持ちを落ち着かせて午後の仕事に戻った。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
男性向け(女声)シチュエーションボイス台本
しましまのしっぽ
恋愛
男性向け(女声)シチュエーションボイス台本です。
関西弁彼女の台本を標準語に変えたものもあります。ご了承ください
ご自由にお使いください。
イラストはノーコピーライトガールさんからお借りしました

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる